水準点めぐり15

堺東駅周辺にある公共基準点

IMG_20150617_0002 国土地理院のホームページを見ると、「基準点・測地観測データ」というところがある。その一番上に「基準点成果閲覧」がある。ここに全国の三角点、水準点のデータが保存されていて、閲覧することができる。
堺市役所付近の基準点を見ていると、国土地理院の基準点ではなく、市などが設置した「公共基準点」というのが多数あることがわかった。
堺市役所に出かける用事があったので、この「公共基準点」の実物を見ることにした。

①市役所側から踏切を渡ったところ。踏切の手前(市役所側)には堺東駅前交番所がある。踏切を渡ったところにある喫茶店の前からとった写真。道路が交差する真ん中付近にマンホールよりも小さい丸い蓋がある。

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「公共基準点」と書いた金属の蓋だ。この中に、「基準点」があるのだろう。どんなものが入っているのだろうか。開けてみたいが車がひんぱんに通るところなのであきらめて、③をさがすことにした。

③市役所の南西の角ということが地図からわかる。しかし道路のどの付近にあるのかは地図からはわからない。この地図はかなり正確で、誤差は1mもない。道路の角を探してみた。

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ありました。歩道と道路を区切る縁石の真ん中に埋め込まれている。 堺市、国土交通省、街角多角点の文字が読み取れる。
では道路のどの付近にあるのかというと、

街区多角点

う~ん、これはわかりにくい。知っている人でないと完全に無視されるだろうなあ。
①の丸い円盤のフタの中にはこれが入っているのだろうか。それとも又違った種類の標識が入っているのだろうか。興味がつのるが確かめようがない。

②最後に市役所の入口側にあると思われる「公共基準点」をさがす。
①と③の経験を活かして探すが、簡単には見つからなかった。
歩道の上にも、③のような縁石にも埋め込まれていない。

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どうもこれらしい。地図の位置とも違っていない。車や風雨iのためか、かなり薄くなっているが、 ①と同じように「都市再生街区」の文字と「国土交通省」の文字が読める。これが「公共基準点」にまちがいない。どこにあったかというと、道路にある雨水桝の横にあった。

公共基準点2

公共基準点3

この公共基準点の管理責任は堺市にあるようだ。水準点のように国が設置したものではない。

国土地理院の地図によると、この基準点は「公共基準点」のなかでも「街区多角点」と呼ばれるもののうち3級街区多角点というらしい。 水準点との共用もなく、堺市の公共事業のために設置されたものだろう。
しかし道路の上には様々な標識が埋め込まれているものだと感心する。歩道の上、車道の上、歩道の縁石の上、置かれている場所も多様である。この調査?の時に、よくわからないものを堺市役所の施設の中に見つけた。

 

IMG_6670堺市役所基準点

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周辺には何の表示もない。
見たところは、水準点のような形をしている。
予想されるのは、堺市役所を建て替えるときに、以前にあった水準点をここに移転したのかもしれない。
ホームページで堺市役所のことをしらべてみたが、私が調べた限りは堺市役所と水準点について記録されているものはなかった。
市民の目につくところにあるのだから、何か歴史的なものなら、表示などがあればいいのだが、と思った。
私たちの知らないところに、過去の記念碑があるのだろうと思う。

 

 

 

三角点を探る旅 その25

名古屋市 星が丘の三角点

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地図を見ていると、平和公園の西側に三角点があることがわかった。
104.9と書いてあるから、名古屋市内では高いところにある三角点のようだ。
上の地図の70.2mのところにある三角点は発見できなかったので、今度はこの星ヶ丘周辺にある三角点を探しに行こう。

地下鉄に乗って「星ヶ丘」へ。名古屋のエスカレーターは左側に立つ。大阪とは違うが日本のどの辺から右と左に別れるのだろう。名古屋に来るたびに思う。
愛知淑徳大学に沿って歩くと、急な斜面に出てくる。通りぬけできませんと書いてあるが、たぶん前方のマンションの後ろに丘などがあるのだろうと思い歩き出す。

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マンションに突き当たっては三角点には行き着かない。地域の人らしい人に聞いてみると、脇道があってその先にベンチがある広場がある、と教えてくれた。たぶんマンションが出来る前にはその脇道がメインだったのかもしれない。 IMG_6762 IMG_6763

急な上り階段がある。やっぱりこの上にちがいない。少し前にこの丘の上にマンションが建ったのだろう。二万五千分の一の地図にはこのマンションはない。
階段を登りつめると、ありました。ベンチの置かれた小さな広場。高さ的にはこの前方に三角点はあるようだ。左側の坂道を登る。

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発見!。なかなか立派な三角点だ。国土地理院の標柱や三角点を保護する石もきちっと保存されている。標柱には、「三角点」「国土地理院」「大切にしましょう三角点
」「基本測量」の文字が書かれている。
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こんなふうにきっちりと保存されている三角点を見ると、この地域の人達の優しさが伝わってくるような気になる。 三角点から下って行くと、こんな表示板があった。 IMG_6783

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ここは市民の緑地となっているようだ。 私が歩いたコースも一万歩コースなどの表示があって、歩いたり、ランニングしている人とも出会った。炭焼き、ユーカリなどの表示もあり、市内にこんなに大きな緑地帯があるといいなあ。名古屋城のそばだから、大阪で言えば大阪城公園みたいなものかもしれない。

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三角点が見つかったので、地下鉄の駅に戻る。 100メートルといえどもかなりの高さなのだ。斜面も急な角度で、下るのも足元に力が入る。そういえば電子基準点のあった名古屋気象台もこんな斜面の上にあった。
帰って調べてみると、ここの三角点は名古屋市内で二番目に高い場所にある三角点だとわかった。

 

 

 

 

ダーツの平均値は?

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ここは環状線・地下鉄「玉造」が最寄りの駅になるビリヤードとダーツのお店「セクションエイト」。
私は初めてといっていいぐらい、ダーツもビリヤードもしたことがない。やったことはあるが遥か遠い昔の記憶。
このセクションエイトのオーナーの夫人が、仕事仲間だったということで、その仲間たちと訪れた。道路に面している二面がガラス張りという、大変開放感のあるお店。
土曜日の午後に訪れたが、中高年の人たちがビリヤードを楽しみ、若者のグループがダーツに興じていた。
さて、せっかくダーツをするのだからちょっと勉強になることを、と思っていたら前回紹介した本、「直感を裏切る数学」にダーツの事が書いてあった。本を元に勉強したことを紹介してみよう。

ダーツといえば上の写真や下の絵のようにダーツボードに刺さった矢の位置で得点が決まる。

IMG_20150616_0001 - バージョン 2 IMG_20150616_0001 - バージョン 3

ダーツボードに当たった点だけを考えることにする。線の上でも当たったと考える。
そこでダーツが中心からどの方向に外れたかを見ることにする。

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左の図のように、中心とダーツが当たった場所を通る直線を引いて、図のような垂直線に交わる横軸までの距離(高さ)をxとして記録していく。
このとき、xの値がマイナス無限大からプラス無限大までにする、というのがポイントになる。
100回のシュミレーションの結果をヒストグラムにしたものが次の図。

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ヒストグラムというのは、この場合では、横軸にxの範囲を20ずつまとめた区切りを入れ、縦軸にその範囲におさまった回数をとったグラフのこと。

このグラフを見てみると、xが0の近くに来ることが多いように見える。
ただ160付近に極端に離れた場所にグラフの山があることに注意しておこう。

 

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実は本当の分布については、理論的にわかっていて、左のようなグラフになる。左右対称で、0の近くに大きな山ができている。
統計でよくみる正規分布によく似ているが違う。
この分布は、発見者の名前をとって「コーシー分布」と呼ばれているもの。
「すそ野」が高さの違いに着目しておこう。

 

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正規分布なら平均は0、となるが、実はコーシー分布には「平均が存在しない」のである。
ダーツを投げる実験をさらに続けることにする。

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1000回投げる場合をシュミレーションしてみると、
0に近づくような動きも見られるが、ときどきドーンと下がるような動きがあって、0から大きくはずれる場合が観測される。
私もダーツを投げると、ときどき思いもかけずに投げ損じて、ダーツボードから外れてしまったことが何回かあった。これである、この動きが平均0を大きく引き下げていると考えられる。

サイコロを何千回なげると、それは平均してみると同じ数字がでる確率が六分の一、という場合と全く違った事象なのである。
極端に0から外れた値が出るのが、それほど稀ではない」というのがコーシー分布の特徴と言われている。
「標本平均は、標本の大きさが大きくなればなるほど真の平均に近づいてくる」という大数の法則があるが、ダーツの場合は成り立たないのである。
大数の法則が成り立つには、大きな前提がある。それは「真の平均が存在する」という前提があってのことである。ところがダーツの分布にはこの前提がないのである。

コーシー分布の典型的な例としてあげられるのが「ガラスの破片」である。

「岩石に衝撃を与えて粉砕するとその破片の大きさの分布はべき級数になることが知られています(注 コーシー分布もべき級数である)。ガラスのコップを固い床に落として割った時にできる破片も同じです。大きな破片はほんの数個で、中くらいの破片はかなりの数になり、小さな破片は無数にあります。眼に見えないような小さな破片の数はさらに多くて、顕微鏡で拡大してみても同じような分布が観察されます。顕微鏡でも見えないくらいのホコリのような破片の数が最も多いので、1つずつの破片の大きさの平均値を求めると、事実上ゼロになってしまうのです。破片の大きさの標準偏差を計算すると、今度は少数の大きな破片の寄与が無視できなくなり、非常に大きな値になります。何桁も大きさの違う破片が混在しているから、ゆらぎの幅を表す標準偏差が大きな値になるのは当然といえるでしょう(「経済物理学の発見」より)。」

ときどき出現する極端な例が、標本平均を大きく変えてしまうのがコーシー分布の特徴なのだ。
地震の発生も平均で計算することはできない、経済の株価の動きも平均によって予測することができない。この世の中の実際の世界は、標準偏差で平均値が求められるような世界ではなくて、コーシー分布で表されるダーツの世界がこの世の中を表しているのかもしれない。

明るくて健康的なビリヤードとダーツのお店「セクションエイト」のオーナーと、若くて美人のオーナー夫人の親切な指導で、ビリヤードとダーツの腕が上がりそうな予感。でもこの予感もコーシー分布かもしれないなあ。