桜の襖絵

 難波高島屋で開催されている高野山に納められる「桜」の屏風の原画を見に行った。

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 「高野山祈りの美」と題しての展覧会。パンフレットには次のように書かれていた。 「2015年は、弘法大師空海が高野山に密教の道場を開いてから1200年目にあたり、高野山では春に執り行われる大法会を中心として、さまざまな行事が予定されています。記念行事の一つとして開催される本展覧会では、明治時代以降、歴史の節目を迎えるたびに高野山に奉納されてきた美術品の数々を一同に集めてご覧いただきます。なかでも現代日本がを代表する作家の中島千波氏が、今回の開創1200年にあわせて制作した金剛峯寺奥殿の襖絵12面は、本展で初めて公開されます。・・・・」

パンフレットの桜の一部を拡大すると、(クリックすると拡大する)IMG_20150223_0003

 桜の花びら一枚一枚が丁寧に描かれているのにびっくりする。
資料によるとこの桜の木のモデルは、宇陀の又兵衛桜、上賀茂神社の斎王桜、仏隆寺の千年桜だそうで、朝の又兵衛桜、昼の斎王桜、夜の千年桜と時間の流れも表されているそうだ。
インターネットでそのモデルとなった桜を調べてみた。

宇陀の又兵衛桜(Wikipediaより)
又兵衛桜

斎王桜(http://kyoto-k.sakura.ne.jp/index.html#kyoto
斎王桜

千年桜(http://www.tree-flower.jp/29/butsuryuji/sennenzakura.htm
千年桜

 どれもこれもすばらしい桜の木だ。

スケッチから実際の襖絵までどれくらの桜の花びらを描いたのだろうか。考えるだけでも気が遠くなりそうだ。

 桜の襖絵は以前にもこの高島屋の展示会でみている。
それは東大寺本坊の襖絵。
2011年の2月だった。この展示の後、4月に東大寺本坊に設置された襖絵も公開され、私はどちらも見に行く機会があった。ホールでの襖絵の原画を見た後、どうしても東大寺の襖になったその桜を見たかったからだ。
若い人たちと東大寺に咲くヤマザクラと襖絵の桜を見たことがもう6年も前の事になるのが嘘のようだ。この絵を描いた小泉淳作画伯が翌年の2012年に亡くなっていたことを知ってますます感慨深い。
youtubeにこの桜の襖絵の奉納のようすが紹介されていた。

https://www.youtube.com/watch?v=D9LJtj4I-Bw

東大寺襖絵1 東大寺襖絵3

桜はなぜか私たちの心をざわめかす花だ。
源氏物語も、梅よりも桜に関する記述が多い。
紫の上も、
 春のあけぼのの 霞の間より、
  おもしろき樺桜の 咲き乱れたるを 見る心地す・・
と表現されている。 

東大寺本坊の襖絵も公開される。

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いい機会だから行ってみようかと思う。

 

 

ベイマックス 6

マックス3

上の写真は、ヒロがベイマックスに拳を合わせて歓びを共有することを教えているところ。
ジュニア向けの本には次のような描写がある。

Hiro continued to have Baymax practice Karate moves. Baymax’s work was flawiess.

Hiro similed approvingly and held up his hand. “Yeah! Fist bump!”

Baymax stared at Hiro’s hand and blinked. “Fist bump is not my fighting database.”

Hiro laughed. ” No, this isn’t fighting thing. It’s what people do when they’re excited….

私は最初この場面がよくわからなかった。私もベイマックスのようにフィストバンプとはどうすることなのだろうと思った。でも、あとのヒロの説明で、あ〜これは、こぶしとこぶしをぶっつけての挨拶のことだなと思った。
映画でも、上の写真のような場面があり、やっぱり、と一人で納得したしだい。
(写真はインターネットより)

映画でも小説でもベイマックスはヒロトのやりとりでFist bumpを学んで、使えるようになる。人工知能として経験から学び、理解し、自分のものとしたわけである。

2月22日朝7時半からの「がっちりマンデー!!」は儲かるロボット特集だった。
職人技を完全にコピーした産業ロボットの活躍が紹介されていた。このような産業ロボットが生み出す利益が、ロボット開発にかかるコストと職人技を持つ職人さんの人件費を上回るようになった時、「ロボットが仕事を奪う」時代・社会なることを予感させる番組のように私は思えた。

 人工知能がこのように発達している時、人間はどのような学習をしていけばいいのだろ。新井紀子先生が「ロボットは東大に入れるか」で書いていることを私流にまとめてみると、

耳を澄ます

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コンピュータが思考の芽を摘む

自ら体験することを通じて帰納を獲得する段階にある年齢の子どもたちにちっては、動画による受動的な学び、表計算ソフトに頼った計算やデータ処理は帰納の獲得を阻害するのではないかと思います。
検索によってすぐに答えを出す癖がつくことも、常時ネット上のコミニュケーションにつながった状態にあることも、集中を保って自ら考えることを阻害することでしょう。
どちらかというと携帯電話も含めて、年中ネットワークにつながっていることによって思考が中断することの弊害のほうを心配するべきです。

論理的に考える、言語化させる

子どもが質問をぶつけてきた時、すぐに解答を与えるのではなくて「なぜだと思う?」聞き返してみることが重要です。そこで子どもたちは自分なりに考えて答えをだそうと動き出します。
高学年になったら論理的に話すことだけでなく、論理的に書く活動を取り入れることが重要です。
東京工業大学の1年生の授業に「コンピュータサイエンス入門」という授業があります。そこでの最初の課題は「自分の家の筑前煮の作り方を誰もが再現できるように仕様書として作成しなさい」ということだったそうです。誰もが「自分の家の筑前煮」をつくれるようになるには、「乱切り」や「中火」などのように、暗黙知として身についているところから説明しなくてはなりません。「おおざっぱに」、「だいたい」、「世間では」、「統計では」、という仕様書では自分の家の筑前煮と同じものを作ることはできません。

耳を澄まし、おこっている意味を考える

子育ては人工知能ではできません。人間の子を育てるのは人間しかできないのです。それを若い世代が悩みながらでもやりとげていて、今の時代があるのです。
データ分析では処方箋は作れないのです。
 結局のところ、教師と子どもは互いに耳を澄ますことで(形式ではなくて)意味を分かり合ったほうが遠回りのように見えて、結局は早道ということです。

その耳を澄ますと言う能力こそがコンピュータにたいして私たち人間が勝てる分野なのです。
医者も教育者も研究者も、商品開発者も記者も編集者も、公務員もセールスマンも、耳を澄ます。耳を澄まして、じっと見る。そして起こっていることの意味を考える。
それ以外にコンピュータに勝つ方法はないのです。

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IMG_20141223_0001 なるほど、ワードプロセッサーやコンピュータで文章を書くことで漢字が書けなくなったという感想をよく聞く。携帯電話のおかげで電話番号を覚える努力もなくなった。カーナビが車に付いて、前の晩に道路地図を広げて、行く道や帰り道を考えることもなくなった。わからない漢字や英語の単語も辞書のベージを繰るのではなく、パソコンやスマホで検索してしまう。調べたこともノートに書き写すより、パソコンやiPhoneのメモにコピーアンドペーストすることが多くなってきた。

役に立つ、便利になったのは確か。しかし役に立つ・便利になるためだけでおわるのではなく、それ以外の知恵や社会・教育での仕組みが必要になってきているのではないか。
それは何なんだろう。まだまだ考えなくては。

 

 

ベイマックス 5

ベイマックスただし

上の写真は、ヒロのプレゼンテーションを見ている兄のタダシたち。(インターネットの画像より)

最近テレビで、映画「ベイマックス」が「妖怪ウオッチ」の映画を上回ったと報道があった。その原因の一つは、映画の中にある愛だそうだ。幼いうちに両親がなくなった兄弟。その二人を育てる陽気な叔母さん。ヒロを応援するタダシの仲間たちの友情。ディズニーのスタッフによると、最初重要視されていなかったヒロとタダシの兄弟愛を強調してうまくいったと説明していた。
ヒロのプレゼンテーションのあとにタダシがヒロを引っ張りだしての場面について、テレビでは紹介していた。ジュニア向けの本にはこう書いてある。

“No,” Tadashi replied.
“I was just tell you your fly was down through the whole showcase.”
Hiro looked panicked as Tadashi laughed.

私は本を呼んでいる時に、このflyがわからなかった。ヒロがマイクロボット(microbots)を使って舞台や会場を移動しているのでそのことかな?とも思ったが、ヒロがpanicと続くのでなんとなくしっくりこない。
映画の字幕で、「おまえのズボンのファスナーが下がっていた」という説明があって全て了解。flyには「ズボンのファスナー」という意味があったのだ。
アメリカの子どもたちはこの本や映画を見て「your fly was down 」で笑っていたのだなあと思う。それが映画ベイマックスの人気につながっていたとは想像もしなかった。

ベイマックスは看護ロボット、ロボットが人間社会にはいってきたらどうなるのだろう。そういう考えはずっと昔からある。

校正 Galley Slave

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この本は以前紹介したロボット工学三原則を生みだしたアイザック・アシモフさんの本。(発行 ソニー・マガジンズ)
アシモフさんのロボットもの31篇の短編を集めてあり、全ての短編がおさめられていると言われている。
長編のロボットをテーマにしたものもあるが、短篇集の中に、ロボットと人間の多様な関わりが描かれているのでアシモフさんの考えもわかってくる。 しかも短編なのて読みやすいことは確かだ。

ここであらためてアシモフさんの考えたロボット工学三原則を書いておこう。

第一条  ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。
第二条  ロボットは人間にあたえられた命令に服従しなければならない。ただし、あたえられた命令が、第一条に反する場合は、この限りでない。
第三条  ロボットは、前掲第一条および第二条に反するおそれのないかぎり、自己をまもらなければならない。    
このロボット工学三原則は50年ほど前に考えだされたもの。 今から見れば不完全に思えるところもあるが、あくまでも小説の世界の原則。その原則のある社会でのロボットと人間の関係がうまく書かれている、と私は思っている。

この本は七つの章に分かれている。
1.非ヒト型ロボットたち
2.動かないロボットたち
3.金属のロボットたち
4.ヒト型ロボットたち
5.パウエルとドノヴァン
6.スーザン・キャルヴィン
7.二つの頂点

この中の「ロビィ(Robbie)」は、話す能力のない金属ロボットと少女の友情がえががかれている。この作品は手塚治虫原作「火の鳥」復活編にあるロビタに影響を与えた言われている名作。

私が一番印象深かったのは「校正」と言う作品。原題の galley slave というのは、「ガレー船をこぐ運命の奴隷」から「つまらない仕事に従事する労働者」と言う意味を持つようになった言葉。
作品のテーマは「校正ロボット」。本の校正を専門とするロボットが巻き起こす事件が書かれている。
論文を書いた学者が、「校正の段階で、校正ロボットによって自分の論文が書き換えられた」と訴える。そんなことがありえるのか? ロボット心理学者のスーザン・キャルヴィンの活躍する話なのだが、結末が考えさせる。

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「書物というものは著者の手で造形されるべきものだ。一章、一章が育っていき、成長していく過程を自分の目で見守るべきだ。くり返し手を入れながら、最初の概念を越えたものに変化していくさまを見守るべきだ。校正刷りを手にとり、活字となった文章がどのように見えるかを眺めながら練りなおしていくべきだ。人間とその仕事の間には、そのゲームのあらゆる段階でおびただしい接触が行なわれるーその接触自体が愉しみであり、創造したものに対する何よりの報いなのだ。あんたのロボットはそうしたものをみんな奪ってしまうんだ」
「タイプライターだって同じじゃありませんか。印刷機だってそう。あなたは大昔の写本の彩飾でも復活させたいんですか?」
「タイプライターや印刷機の奪うものはたかがしれている。だがあんたのロボットはわれわれからいっさいがっさい奪ってしまうんだ。あんたのロボットは校正刷りまで奪ってしまう。いまにほかのロボットどもが、レポートを書いたり、出典を探したり、文章を推敲したり、結論を演繹したり、そんなことまでやってのけるようになるだろう。学者にとってあとに何が残るだろう?・・・」

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今から40年ほど前に書かれた作品。
新井紀子先生のいう「ホワイトカラーの仕事が奪われていく社会」、と呼応するような作品だ。 
ロボットを考えることは、人間について考えていくことだとあらためて感じる。

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左の本は図書館で見つけた本。

ブログで紹介したアイザック・アシモフ作「ロビィ」と手塚治虫作「火の鳥復活編AD3009」が掲載されているSFアンソロジー「SFセレクション2 ロボットvs.人類 」(赤木かん子編 ポプラ社)。

収録されている作品は、
1.ロボットという言葉はどのように生まれたか(カレル・チャペック)
2.ロビィ(アイザック・アシモフ)
3.火の鳥復活編AD3009(手塚治虫)
4.フレンドシップ2(矢野徹)
5.アンドロイド・アキコ(古田足日)
6.宿命(星新一)
7.未来世界の構築(ジェリー・パーネル)

自分で考えるロボットがこのアンソロジーの背景にある。