怪盗紳士ルパン

ここは梅田芸術劇場。 多くの人が並んでいる。

お目当てはこの写真を撮るため。
ポスターと公演時間の案内掲示の写真を撮るために、きれいに整列していることに関心した。


ミュージカル「LUPIN 〜カリオストロ伯爵夫人の秘密〜」とはどんなミュージカルなのだろうか。
劇場で買ったアルバムを見てみよう。
このミュージカルは外国の脚本ではなく、日本の小池修一郎さんの脚本・歌詞・演出というもの。
アルバムの最初に小池修一郎さんの文章が載せられている。それを参考にしてこのミュージカルを紹介したい。

 

「コロナ禍の始まる数年前、古川雄大(左の写真)主演の帝劇ミュージカルをドーヴ・アチアの音楽で上演する企画が発動した。・・・中略・・・古今東西さまざまなルパン像が描かれてきたが、繊細さと豪胆さを併せ持つ今の古川雄大ならではの、彼にしかできない荒唐無稽で破天荒なルパン像を創り出したいと思った。 物語は「カリオストロ伯爵夫人」と「奇巌城」をミックルさせることにした。謎めいたカリオストロ伯爵夫人に、令嬢クラリス、悪漢ボーマニャン、ガニマール警部、少年探偵イジドールそして名探偵ホームズ。様々なキャラクターが入り乱れる。当然ストーリーも大混戦。エイっとばかりに、原作から逸脱して纏(まと)めることにした・・・」
 なるほど身長180センチを越える古川雄大さんは、舞台上での姿は見ごたえがある。観客の多くは熱烈な古川ファンのようだ。

舞台は令嬢クラリスの歌声から始まる。クラリスを演じているのは真彩希帆(まあやきほ)さん。アルバムによると「2017年に宝塚雪組トップ娘役に就任。確かな歌唱力と繊細な演技力で歴史ある名作からコメディ作品まで幅広く役をこなす。21年4月に歌劇団を退団。・・ミュージカル女優として着実な活躍を見せている・・」とある。
このミュージカルでは女性解放運動の視線が感じられる役柄を見事に演じているように見えた(時代背景として女性の参政権がなかった時代)。

「男装の麗人」カリオストロ伯爵夫人はダブルキャスト。柚希礼音さんと真風涼帆さん。私が見た公演は真風涼帆さん(左の写真)。
小池修一郎さんの文章には「カリオストロ伯爵夫人にはは、柚希礼音と真風涼帆が演ずる。宝塚男役スターの先輩後輩であるが、女優経験を重ねた柚希には熟女の魅力で、退団後初仕事の真風には両性具有の魔力で、それぞれ攻め入ってほしいと思う・・・」とある。
真風さんの身長も175センチ、ルパン役の古川さんと並んで演技しても全く遜色ない。男姿から女姿に一瞬にして変わるところは、目を見張った。

少年探偵イジドール・ボートレル役は加藤清史郎さん。
10年余前のレ・ミゼラブルのガブローシュ役は今も印象深く覚えている。
中学卒業後にイギリスの高校に進学していたそうだ。演劇学校にも通学し、2020年にイギリス留学から帰国し、青山学院大学に進学したそうだ。
アルバムの小池修一郎さんの文章には「・・山椒のごとくピリリと辛いイジドール加藤清史郎の達者さ・・」とある。確かに舞台で悪党と暴れ回る姿には若さとエネルギーが溢れていた。

ミュージカルにはルパンとホームズの決闘シーンがあるが、ルパンの小説・ホームズの小説にそんな場面があるのだろうか。
調べてみるとルパンの原作者モーリス・ル・ブランは1864年〜1941年の人。ホームズの作者のコナン・ドイルは1859年〜1930年の人。時代的には重なる。実際の小説ではルパンの小説にホームズらしき探偵が登場するらしい。これに対してコナン・ドイルが抗議したとか無視したとかいろんな意見がネット上にあった。
ル・ブランもルパンの小説にはシャーロック・ホームズではなく、ハーロック・ショームズとして姿かたちも変えて登場させているらしい。そういった配慮もしているようだがイギリスのホームズ、フランスのルパンということでそれぞれの国で人気があったからだろう。実際に本を読んでいないので、確かめてみようと思う。
ルパンとホームズの時代は重なるが少しズレているのも事実。ホームズは馬車を利用していた。ルパンは舞台でもあったが車が使われていた時代。そういったことを後で調べてみるのも面白かった。

年末の梅田は大変な賑わい。 お天気も良く、沢山の人が街へ繰り出していた。 コロナが収束?といわれ、閉塞感が薄まったとき。でも世界で戦争が続いている。 こんな時、荒唐無稽で大胆な演技がみられるミュージカルの存在意義があるのだと思う。 私が一番おもしろかった場面。 それは両性具有の魅力のある「カリオストロ伯爵夫人」の笑い声。 舞台袖に入っても会場いっぱいに広がる笑い声は、何か壁を突き破るような力を感じた。2024年が良い年になりますように!