The Torikaebaya Tale とりかえばや物語3

After a while, Haru’s life changed.
She had to marry a girl called Fuyu.
Her father wanted to refuse this marriage because Haru couldn’t marry a girl!
But he had already refused Aki’s marriage. People would think something was wrong with the family if he said no again.
Haru, unlike Aki, was a quick thinker and not afraid of challenges.
So the father finally decided to give his daughter as a husband to Fuyu.

えーっ、こんなことが? と思うような展開に。
物語では、Haruの父親は左大臣となり、兄弟である右大臣に娘が4人いた。長女を帝に 、二女を東宮に仕えさせていた。四女をHaruの嫁にとおもい、左大臣に申し込んだわけだ。Haruの父親は断りたいけれど、Aki の事があったので世間体が悪くて続けて断れない。Enjoy Simple English ではこの四女ー四の君をHuyu と名づけている。

原作では、父親の左大臣は奥方に相談すると

「あちらは子どもっぽい娘御ですもの、変だななどときになさることもありますまい。ただ親密に話し合って、世間体を普通の夫婦のようにして、出入りなさればいいでしょう」と軽く笑って、「うちの子だってりっぱな後見役よ」とおっしゃる。(桑原博史さんの「とりかへばや物語」より)

そんなにうまくいくのだろうか?
父親は奥方の返事を聞いて、Haru が出世していく姿を夢見て結婚に賛成する。(ほんとに大丈夫?と読みながらもはらはらする)

さてHaru 自身はどうなのだろう。
Enjoy Simple English では、Haru was a quick thinker and not afraid of challenges.とある。原文のこの箇所では、直接このような表現はないが、物語のあちこちで「男として快活にふるまっていた」というようなプラス面の表現がある。それがこのような英文になったのかもしれない。

角川ソフィア文庫の「とりかへばや物語」では、編者の鈴木裕子さんが書いている。
「現代の読者は、親がわが子の結婚を決めたり、わが子が書いた恋文を読んだりというようなところに違和感をもつだろう。けれども、平安時代の貴族の結婚は、このように親が主導権を握り、親同士の取り決めで行われるのが普通だった。」

このようにしてHaruとFuyuの結婚は盛大にとりおこなわれた。

The marriage ceremony was a big event because Fuyu was alos the daughter of a high-level minister.
The two didn’t know each other well at first, but Fuyu soon became attracted to Haru.
“He” was intelligent and fun to talk with.
But Fuyu had many questions about her husband.
At night in bed, they only talked.
And every month he went back to his father’s home saying he wasn’t felling well.
Fuyu thought, “Something is wrong.”

夜の衣も、人目には、うち交わしながら、かたみに単衣の隔てはみなありて、うち解くる方なきも、深くはいかでか知る人あらん。
夜の衣も交わして、人目には一緒にお休みしているように見せながら、互いに肌を合わせないように単衣を隔てて、夫婦の契りを結ぶことはなかったが、そんな事情を深く知るものがいるはずもない。
(とりかへばや物語 角川ソフィア文庫 鈴木裕子編より)
 
ただ月ごとに四、五日ぞ、あやしく所狭き病の、人に見えてつくろふべきにはあらぬを、「物の怪に起くる折々の侍れば」とて、御乳母の里にはひ隠れ給ふをぞ、「いかなることぞ」と、心置かるる節にはありける。
 
ただ毎月四、五日は、どうにもならぬ身についた病が、人に見せて手当するわけにもいかないので、「物の怪で熱の起こる時々がありますので」とことわって、乳母の実家に身を潜めなさるのが、「いったいどうしたわけか」と、別け隔てを感じさせる事柄なのであった。
(とりかへばや物語 全訳注 講談社 桑原博史より)

さて、この結婚生活は本当に大丈夫なのか。

確かに「Something is wrong 」ー 何かおかしい、間違っているようだ・・・・

 

 

 

The Torikaebaya Tale とりかえばや物語2

However, Haru continued to grow and act like a handsome young man, while Aki continued to be like a pretty young woman.
The minister just wanted his children to be happy.

貴公子のように育っていくHaru(実は女性)、姫君として育っていくAki(実は男性)、それを見ている父親の minister (原文では権大納言)の心情について、「とりかへばや物語(全訳注)」の桑原博史さんはこんな解説を書かれている。
「・・・若君も、肉体上女性であることを完全に克服して、教養も衣裳も男としてふるまっている。それなのに、『これも本来の女のままで』と願う父君の心理心情が納得されるのは、男性美の極致が、当時はきわめて女性的なものに通じていたからである。若君は、ことさら雄々しくふるまわずとも、女性的な美貌のままで充分男性として通用した。あの光源氏がその美貌を讃えられて『女にて見まほしう』と評されたように。・・・これも(将来は)法師にして、と思うものの、なお幸運のめぐりくる余地はないかと期待も捨てきれぬ。それはこの若君が、朝廷の補佐役にもなり得る資質を持っていたからであった。・・・」

ここの「男性美の極致が、当時はきわめて女性的なものに通じていたからである。若君は、ことさら雄々しくふるまわずとも、女性的な美貌のままで充分男性として通用した。」という指摘はとても大事なところだと思った。
ここをおさえておけば、このあと登場するNatu の行動や心理が理解できる。

One day, the prince hear about Aki and wanted to marry her.
It was great news for a father.
But Aki was a boy!
If someone found out, there would be a lot of trouble.
So he said to the prince’s messenger,
“Thank you for a wonderful offer.
But my daughter is too young and very shy.
I don’t think she can be a good wife.”

ここは状況が省かれている。まずHaru の才能や容貌が優れていることが評判になり、宮中の帝や東宮から「宮仕えさせないのか」とお呼びがかかる。

かかる御才・容貌すぐれ給へること、やうやう世に聞こえ、内裏・東宮にも「さばかり何事にも優れたなるを、今まで殿上などもさせせず、まじろはせぬこと」と、尽きせずゆかしがらせ給ひて、大将殿にもたびたび御気色あれど、いとど胸つぶれ、あさましく傍痛ければ、いまだはけなきさまを奏して取り入で給はぬを・・・
(Haruの)こういう学問の深さや容貌のすぐれておられることは、やがて世間に広まって、帝や東宮も「それほど何事にも優れているというのに、今まで殿上などもさせず、出仕もさせないとは」と、ひどく本人をご覧になりたくて、父大将にも何回もおすすめがあったが、大将にしてみればまことに困ったことで、情けなくみっともない気がするので、まだ幼いことを奏上してお出しにならない・・・・

HaruAkiの父君は、二人を元服させて社会人としてお披露目を行う。

Haru は、貴公子として宮中デビューをする。男も女もHaruの美しさに魅了されてしまう。そしてHaruの弟?妹?兄?姉?世間的には姫君のAkiに関心が向けられる。
Aki もきっと美しいに違いないと。そうして帝や東宮からAkiを結婚相手にという声がかかる。

この妹の君の御容貌、名高くすぐれて聞え給へば、いづれも御心をかけて仰せ言あれど、せむ方なき御物恥ぢに事寄せて、おぼしもかけず、・・・
Haru の姉妹にあたるかたの御容貌が、評判高くすぐれているとお耳にはいったので、帝・東宮のどちらもお気にとめてお言葉があったが、どうしようもない恥ずかしがりやだと理由をつけて、・・・

Soon, everyone heard about this beautiful girl who didn’t say yes to the prince.

One man called Natsu was especially interested in Aki.
Natsu was handsome, from a good family, and liked women.
He wrote a love letter to Aki and asked his best friend to give it to her.
The friend was Haru.
She was now working for the emperor as a man.
Of course she knew that Aki was actually a man, so she said,
“I’m sorry, but Aki wouldn’t be interested.
I can’t give this letter to her.”

この侍従(Haruのこと)のあまりいみじくものまめやかに、見だるる所なく修めたるこそあまりさうざうすきやうなれど、見る目・容貌の似るものなく愛敬こぼれて、うつくしきさまの、「かかる女のまらましかば」と、見るたびにいみじく思わしきを、「妹もかくこそはものし給ふらめ。女は今一際まさるらむよ」と思ひやるに、見奉らでゆむべき心地もせず。
この侍従の君(Haruのこと)がたいそう聖人ぶって、羽目外すことなく身をつつしんでいるのが、あまりにもものたりない気がするが、見た感じや容貌が類のないほど愛敬にみち、かわいらしい様子なので、「こういう女がいたら」と、見るたびにひどく好ましい気がしてきて、「この人の姉妹もこんなふうでおられるのだろう。女ならいちだんとまさっているだろうよ」と想像しはじめると、わが物としないではいられなくなってしまう。

Haruの美しさからAKiの美しさを想像して、Haruにその気持を打ち明けるが、Haruとしては自分の気持ちも整理できないので、どうすることもできない。
Enjoy Simple English では手紙をわたしてくれるように頼んでいるが、私には原文に直接そういった表現を見つけることができなかった。しかし仲介してくれるように頼んだことは充分に想像できる。
Natsuの「こんな女がいたらなあ」とHaruを見て思うところが、次への伏線となっている。
さて、そんなHaru に縁談話がもちあがってくる・・・・。

*2つ目のカラーの挿絵は、「ヒーロー&ヒロインに会おう! 古典を楽しむきっかけ大図鑑」監修・斎藤孝 日本図書センター 」より。
*原文とその現代語訳は「とりかへばや物語 全訳注 桑原博史 講談社」による。