古事記を英語で読む14

因幡の白兎 2

The rabbit followed their advice. The combination of ocean water, wind and sun was terrible. 
It hurt the rabbit even more.
The rabbit could not stop crying.

橋本治さんの「古事記」によると、

「海の水は皮をむかれてむき出しになってしまった体にピリピリとしみましてた。・・・がまんして体じゅうに塩水をかけました。そして風当たりの良い崖の上にのぼったのです。・・・心地よく吹いていたはずの風が、みょうに強く感じられました。肌がピリピリします。風が吹くたびに肌はひきつるように乾いて、そこに太陽の光はつきさすように照りつけます。・・・うさぎの体は全身にひび割れができて、流れていた血がおそろしいような模様を作って固まっていました。うさぎは、こわくて、ワーワー泣きました。」

Just then, Okuni-nushi arrived at the beach.
He heard the rabbit crying and asked.
”What happened to you?”
The Rabbit answered.
”I live on one of the islands near by and I wanted to cross the sea.
I told some sharks that I was going to count how many there were.
So I asked them to get in a single line.
But it was a lie.
I was just using their backs to get here.
The only mistake I made was telling them about the lie before reaching the beach.
The sharks got really angry with me and pulled off all my fur.
It was terrible!
Then your brothers came and gave me some bad advice, and it hurts even more now !”
*fur; (ウサギなどの柔らかい毛の)毛皮

故(かれ)海の「鰐(わに)」を欺きて 言いけらく
吾と汝と族(うから)の多き少きを競べ(くらべ)計(かぞ)へてむ

故(かれ) 汝(いまし)は其の族(うから)の在(あ)りの随(まにま)に 悉(ことごとく)率と来て 此の島より気多(けた)の前(さき)まで 皆列み伏し 度(わた)れ

爾(ここ)に吾其の上を踏みて 走りつつ読み随(わた)りてむ 

是(ここ)に吾が族(うから)といずれか多きを知らむ

如此(かく)言ひしかば 欺(あざむ)かへて 列(な)み伏せる時、吾其の上を踏みて読み渡り来て 今地(つち)に下(お)りむとする時に
吾云(い)ひけらく 汝は我に欺(あざむ)かつつ 言ひ竟(お)はる即(すなわ)ち 最端(いやはし)に伏せる鰐(わに) 我を捕(とら)へて 悉(ことごと)に我が衣服(きもの)はを剥(は)ぎき
此(こ)れに因(よ)りて泣き憂ひしかば 先に行(い)でし 八十神の命(やそがみのみこと)以(も)ちて 海塩(うしお)を浴(あ)みて 風に当(あた)り 伏してよ とをしへ告(の)りき
故(かれ)教への如(ごと)為しかば 我が身悉(ことごと)に傷(こそな)へつ

*この部分はよくしっている話なので、マンガと古事記の原文を見比べてみていくとわかる部分だと思う。

Okuni-nushi felt sorry for the Rabbit.
He said, “Wash your body with fresh water.
Then sleep on a bed of these fluffy plants.”

*fluffy; ふわふわした

橋本治さんの「古事記」では、
「いいか、この浜の先には河が流れ込んでいる水門(みなと)がある。・・・そこへ行って、海に流れ込む前の真水につかり、体を洗いなさい。それからその水門のあたりの岸辺には蒲(がま)がはえているから、その草の先に茶色の穂をつけているものをたくさん集めて、その上にねころがっておいで。・・・・」と書かれている。

ここで登場する「鰐(わに)」は、爬虫類のワニではなくて、サメのことだと解釈されている。出雲の方言で「サメ・フカ」のことを「わに」と言うと、こうの史代さんは注をつけている。
またウサギが転がった蒲(がま)は、「がま科の多年草。水辺にはえ、高さは2メートルほど。葉は細長く1メ−トルにもある。黄色い花粉を止血に用いたとされる」と橋本治さんは注を付けられている。
里中満智子さんのマンガにあるのが蒲の穂。その中には黄色い綿状のものがはいっている。漢方につかわれたり、火打ち石のほくちとして使われたこともあるそうだ。

さてオオクニヌシに治療法をを教わった白うさぎは・・・・次回へ

 

 

古事記を英語で読む13

因幡の白兎 1

Susano-o, the brother of the sun goddess Amaterasu, had children in Izumo.
Generations of his family lived there.
After many years, a god called Okuni-nusi was born.
He had 80 brothers.

5月の最初はスサノオの子どもたちの話。今回は誰もが知っている「大国主といなばの白ウサギの話」。
橋本治さんの「古事記」から、この時期の様子を抜書きすると。
「クシナダヒメと結婚されたスサノオノミコトは、クシナダヒメとのあいだに子をおつくりになりました。生まれた子の神の名をやシマジヌミの神と申します。これは、出雲の海に浮かぶたくさんの島々を支配される神です。
また、スサノオノミコトは、アシナヅチの父神であるオオヤマツミの神の娘も妻になさいました。そのもうひとりの妻は市場の発展を祈る神で、カムオオチ姫といいます。スサノオノミコトは、カムオオチ姫とも結婚をなされて、そちらとのあいだには、オオトシの神とウカノミタマの神という二柱の神をおつくりになりました。オオトシの神は、一年の豊かな実を約束する神、ウカノミタマの神は、稲に宿る高貴な神のことです。
ヤシマジヌミの神は、オオヤマツミの神のもうひとりの娘であるコノハナチル姫と結婚をして子を生むのですが、このヤシマジヌミの神から数えて六代目の子孫になるのが、「偉大なる国の主」という意味の出雲の支配者、オオクニヌシの神です。」

こういう事情だから、オオクニヌシには兄弟が80人もいたのだろう。80人というのは数が多かったという誇張表現といわれている。異母兄弟が多くいて、オオクニヌシは一番年が若かったという設定だろう。

One day, Okuni-nushi’s brothers were fighting.
They all wanted to marry the same beautiful young woman named Yakami-hime.
One of the brothers said.

”Let’s go and see Yakami-hime and ask her if she wants to marry one of us.”
So the brothers left their home for Inaba.Okuni-nushi the youngest of the brothers, walked behind them carrying their bags.

ダイコクさんの背負っている大きな袋は、兄たちの荷物だったんだ。
私はてっきり金銀財宝がはいっているものと思っていたが。
オオクニヌシノミコト、オオクニヌシ、はいろんな呼び名がある。
古事記ではこうの史代さんのマンガにあるように、「大穴牟遅神(おほなむちのかみ)」として登場する。
橋本治さんの「古事記」には、
「『偉大なる国の主の神」、つまりオオクニヌシの神と呼ばれるこの神には、その他に4つの名前があります。
 ひとつは、「穴の中の偉大な人」という意味のオオアナムヂの神。もうひとつは、「地上の国から来た醜男(ぶおとこ)の神」という意味の、アシハラノシコオの神。もうひとつは、「多数の武器を持つ神」という意味の、ヤチホコの神。もうひとつは「この現実世界を象徴できる国の神」という名の、ウツシクニタマの神です。」

因幡(稲葉)のヤカミヒメと結婚しようと、故郷から因幡に向かう80人の兄弟神。
途中で、血だらけのウサギと出会う。

When they reached a beach in Inaba, they found a rabbit with blood all over its body.
The brothers decided to play a trick on the rabbit. “Rabbit, if you want to get well , you should take a bath in the salty ocean. Then dry your
self with the wind and sun.”
Laughing, the brothers went away.

*play a trick  いたずらをする

橋本治さんの「古事記」では、つぎのように書かれている。
「・・・やさしさからではなく、悪いいたずら心で、兄弟神たちは、ぐったりして起き上がることもできないそのうさぎに、にせの治療方法を教えてやったのです。
『お前の体を治す方法を教えてやろう。この塩からい海の水を浴びてから、風に当たるんだ。砂浜よりも、高い崖の上のほうがいいぞ。風は強いしな。日もよくあたってすぐに乾く。海に入って崖の上で横にやっていれば、すぐに治るぞ」
そう言うと、意地の悪い兄弟神たちは、げらげら笑いながら行ってしまいました。」

さて兄弟神の教えを受けた白ウサギは、、、次回に続く。

 

 

 

 

 

古事記を英語で読む12

八俣の大蛇3

Suddenly, the sky grew dark, and lightning flashe across the sky.
A strong wind blew, and the ground shook.
In the darkness, 16 red eyes shone brightly, and the Yamatano-orochi appeared. The snake smelled the sake and rushed to the bowls.
All the heads started  to drink.
After a while , the sound of drinking turned into snoring. The snake was asleep.

*snore; いびきをかく,asleep; (形容詞)眠っている

「其の八俣のをろち 信(まことに)言ひしが如(ごと)来(き)つ
 乃ち(すなわち)船毎に(ふねごとに)己が頭を垂れ入れて 其の酒を飲みき
 是に(ここに)飲み酔いて 留まりて 伏し寝ねたり・・・」

原文ではこれだけの表記だが、英文や橋本治さんの古事記には、いろいろな表現を付け加えて描写している。とにかく酔わせて眠ったところを攻撃しようという作戦どおりにことは進んだということだろう。

“The time has come!” Susano-o took out his sword and quietly walked toward the snake.
He cut off the heads one by one.
Some of the heads tried to fight back, but they were too drunk to fight.
The blood from the snake flowed into the river, and the river became bright red.
While he was cutting up the snake, he found a beautiful sword inside one of the tails.

*The time has come;  Spring has come のhas と同じで現在完了形、今この時が来た、という感じだと思う。

原文の描写はここも簡潔だ。

「爾に(ここに)速須佐之男命 其の御佩(みは)かせる十拳剣(とつかのつるぎ)を抜きて 其のをろちを切り 散(はふ)りしかば 肥河(ひのかわ) 血と変(な)りて流れき 故(かれ)其の中の尾を切りし時に 御刀(みはかし)の刄かけき 爾にあやし と思ほひて 御刀の前(さき)以て刺し 割(さ)きて見れば 都牟刈(つむがり)の太刀(たち)在りき・・・」

ここでスサノオが使った十拳剣。Enjoy Simple English では説明が省かれているが、スサノオの剣はアマテラスが神を生み出すときに折って噛み砕いているはず。
神話だから矛盾はあっても不思議ではないのだが、後世の人はその解釈に苦しむ。

里中満智子さんのまんがでは、
「須佐之男が所持していた『十拳剣』は固有名詞ではなく、『10本分の拳(こぶし)の長さのツカがある剣」という意味で、伊邪那岐神(いざなきのかみ)も十拳剣を持っていましたし、その他多くの人が十拳剣を用いていたと古事記には記されています」と説明されている。
こうの史代さんは、クシナダヒメの父親アシナヅチがもっていた十拳剣を拝借したのではないかと説明されている。

Susano-o gave it to his sister, the sun goddess, Amaterasu.

橋本治さんの古事記によると
「・・・その大刀は、とても当たり前の剣とは思われませんでした。そこで『これならば天照大神も喜んでお受け取りになるだろう』と思われたスサノオの命は、その大刀が八俣の大蛇の尾の中から生まれ出たといういきさつをご報告になって、その不思議な大刀を天照大神へとさしあげられたのです。この大刀こそが、いまに大和の朝廷につたわる草薙の剣(くさなぎのつるぎ)なのです」

Susano-o married Kushinada-hime, built a palace and they lived in Izumo.

・・・・・・・・・
こうしてスサノオの八俣の大蛇退治がおわり、クシナダヒメと結婚をし、出雲の国での国造りがはじまる。

5月は「因幡の白兎」「天孫降臨」「ふたりの名前」「海幸彦と山幸彦」。