シャーロック・ホームズ 13

A case of Identity  part one 1

Enjoy Simpple English 5月後半のシャーロック・ホームズは、
A case of Identity 。ここでは「花婿失踪事件」と訳されている。

*case:事件
identity; 正体、本人であること

原題だけをみるとどんな作品なのかわからない。「初歩からのシャーロック・ホームズ」(中公新書ラクレ 北原尚彦著)の紹介を引用すると、

「今回はタイピストをしているミス・メアリ・サザーランドからの依頼。彼女はそれなりの財産を持っていたが、母親及びその再婚相手と一緒に住み、つつましい生活を送っていた。あるとき、ホズマー・エンジェルというちょっと変わった男性と知り合い、婚約に至った。そして遂に結婚式という当日、教会について見ると花婿が乗っているはずの馬車は空っぽになっていたのである・・・。
 この事件でホームズは、依頼人の話を聞いただけで真相を見抜いてしまっている。そのため、依頼人に対して非常に前向きな助言をしている。
 原題は「A Case of Identity」。直訳すれば「正体の事件」となって、日本語としてはすわりが悪い。「Identity」には、別な意味もあるが、その訳語を採用するとネタを明かすことになりかねない。そのため邦題が工夫されるところだが、「花婿の正体」は穏当なところだろう。「花婿失踪事件」とする場合もあるが、「The Adventure of the Noble Bachelor 『独身の貴族』が、「花嫁失踪事件」とされる場合があるため、非常に紛らわしい。・・・・」

  While I was talking to Sherlock Holmes one day, a woman named Mary Sutherland visited.
 “I heard you are smarter than the police.
I have an extra income of 100 pounds each year.
If you find Mr.Hosmer Angel, I will give it to you.”
  “That is a lot of money.”
  “I can live on 60 pounds. .
I have a job that pays it.”
  Homes said, “Your job must be typing, but go on and tell me your story.”
  Mary was surprised, but she answered, “I was angry that my father, Mr.Windibank, hasn’t helped me find Mr.Angel. so I came here.”

*one day; ある日
smarter; より賢い
extra income; 副収入、臨時所得
pound; ポンド(イギリスの貨幣単位)
typing; タイプ

ホームズはメアリ・サザーランドの様子を見るだけで職業がタイピストであることを当ててしまう。ここがホームズ物の面白いところ。
原文には次のような解説がある。

My first glance is always at a woman’s sleeve.
僕が真っ先に見やるのは、常に女の袖だ
 
In a man it is perhaps better first to take the knee of the trouser.
男ならまずは穿いているものの膝とするのがいいだろう。
As you observe, this woman had plush upon her sleeves, which is a most useful material for showing traces.
君も見た通り、この女の袖口にはフラシ織があった。これは跡がつきやすい、極めてありがたい生地だ。
上の英文と訳は「英語のシャーロック・ホームズ日本語対訳付き」からの引用。
http://sherlockholmes-boken.sblo.jp/category/4507006-3.html

前回の「赤毛連盟」でズボンの裾を見て、トンネルを掘っていると考えた場面とつながっているなあと私は感心した。
ここで出てくるplush というのは「プラッシュとは、ビロードの一種で長く柔らかい毛羽(けば)のある織物。オーバー・帽子などに用いられる。フラシ天とよばれている。」goo辞書よりの引用

青い鳥文庫の「名探偵ホームズ消えた花むこ」の訳によると、
「手首のすぐ上の、タイピストがテーブルに強く押しつける部分に、二本の線がはっきりとついていた。」とある。
袖口についた線からタイピストだろうと推理したわけだ。私はタイプを打ったことがないので、袖口に線がつくほどテーブルに押しつけると説明されても実感がわかないが……。

 “Your father’s name is not Sutherland, so Mr.Windibank is your stepfather, right?”
  “Yes, but I call him Father, although he is young.”
  Holmes asked another question, “Is your mother alive?”
  “Yes. My fathere died, and my mother took over his company.
When Mother married Mr.Windibnak, he made her sell it.
They didn’t get much, so they now live on 100 pounds.”

*took over~ ; 〜を引き継いで
live on ~ ; 〜で生計を立てる

 “Tell me about Mr.Angel.”
  Mary’s cheeks became pink.
  “Mr.Angel speaks in a very quiet voice and wears colored  glasses  because his eyes are weak like mine.
  I met him at a dance party.
My father doesn’t let me go anywheres,  but he was away in France at that time.”

*eyes are weak; 目が悪い

メアリ・サザーランドの実の父は亡くなり、母は15も年下の男と再婚。さらに夫が残した店を新しい夫によって安く売りさばいてしまうことになる。生活は娘メアリ・サザーランドの収入を当てにしている。うーん、これは問題のある家庭だなあ。
新しい父がフランスに行っている間に、ダンスパーティーで出会ったエンジェルという男性。この男性も胡散臭い……