At the top of the mountain, Anju said,”Listen carefully, Zushio. I have been planning this for a long time. That’s why I was so quiet.”
Then she pointed to the south. “Do you see that road down there?
I heard it goes to a big city.
It’s time for you to go.
Meet someone to help you, and find our father and mother.”
“But what about you?”
“I will stay.
Take this stature with you.
It will protect you.”
Anju handed the stature to her brother.
Zushio didn’t want to leave her, but he understood that this was Anju’s wish.
・・・・略・・・・姉は今年十五になり、弟は十三になっているが、女は早くおとなびて、その上物に憑かれたように、聡く賢しくなっているので、厨子王は姉の詞にそむくことが出来ぬのである。
木立ちの所まで降りて、二人は籠と鎌とを落ち葉の上に置いた。姉は守本尊を取り出して、それを弟の手に渡した。「これは大事なお守だが、こんど逢うまでお前に預けます。この地蔵様をわたしだと思って、護り刀と一しょにして、大事に持っていておくれ」
She took a leaf from a tree and filled it with spring water.
“This is to celebrate your future.”
They both drank from it.
Zushio promised to meet her again, and started to run as fast as he could.
泉の湧く所へ来た。姉は・・・木の椀を出して、清水を汲んだ。「これがお前の門出を祝うお酒だよ」こう言って一口飲んで弟にさした。
弟は椀を飲み干した。「そんなら姉えさん、ご機嫌よう。きっと人に見つからずに、中山まで参ります」
厨子王は十歩ばかり残っていた坂道を、一走りに駆け降りて、沼に沿うて街道に出た。そして大雲川の岸を上手へ向かって急ぐのである。
Anju watched her brother until she could not see him anymore.
A few hours later, Anju was nowhere to be seen.
Sansyo-dayu was really angry.
He ordered his men to search everywhere.
Finally, by a quet pond , they found a pair of sandals.
Those were Anju’s.
のちに同胞を捜しに出た、山椒大夫一家の討手が、この坂の下の沼の端で、小さい藁履を一足拾った。それは安寿の履であった。
森鴎外の「山椒大夫」では、安寿は沼に身を投げている。
「日本名作ものがたり あんじゅとずし王 朝日ソノラマ」では、足を滑らせて谷底に落ちている。
「日本伝説 あんじゅとずし王 偕成社」は、追手は沼のほとりに安寿のぞうりを見つけている。
「新・講談社の絵本 安寿姫と厨子王丸 講談社」では、厨子王と別れたあとの安寿のことは書かれていない。
「アンジュと頭獅王 吉田修一作 小学館」では、安寿は湯責め、水責め、キリで膝をつく、最後には火責めで命を落としてしまう。
説話では、安寿はひどい拷問によって命を奪われてしまうらしい。
森鴎外は「山椒大夫」を書くときに、そのような残酷な部分は削除したと伝えられている。
可哀想な安寿。厨子王は山椒大夫の追っ手から逃げ切れるのか。また佐渡に流されたという母はどうなったのだろう。物語は次の段階に移っていく。