Sansho-dayu 山椒大夫4

The four travelers were on two separate boats going in different directions.
One boat headed north for the island of Sado.
Along the way, the servant threw herself into the sea.
The mother of the two children also wanted to kill herself, but the boat owner stopped her.
He was going to sell her on Sado.

*安寿と厨子王の乗った小舟と母親と女中のうばたけの乗った小舟は別々の進路をとっていることに気づく。
本文はこのあたりを次のように描写している。

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うばたけは佐渡の二郎に「もし船頭さん、もしもし」と声をかけていたが、佐渡は構わぬので、とうとう赤松の幹のような脚にすがった。「船頭さん。これはどうしたことでございます。あのお嬢さま、若さまに別れて、生きてどこへ往かれましょう。奥さまも同じことでございます。これから何をたよりにお暮らしなさいましょう。どうぞあの舟の往く方へ漕いで行ってくださいまし。後生でございます。
「うるさい」と佐渡は後ろざまに蹴った。うばたけは舟とこに倒れた。髪は乱れて舷にかかった。うばたけは身を起こした。「ええ。これまでじゃ。奥さま、御免下さいまし』こう言ってまっさかさまに海に飛び込んだ。

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*うばたけが海に身を投げたのをみた母親もそのあとを追おうとする。
しかし船頭は母親の髪をつかんで引き倒し、「うぬまで死なせてなるものか。大事なしろものじゃ」と言いながら、つなでぐるぐる巻きにして転がしてしまう。
母親を載せた小舟は北へ北へと漕いで、佐渡ヶ島をめざす。
一方、安寿と厨子王の乗った小舟は南へと進んでいった。

The children’s boat arrived at Tango, in presentday Kyoto Prefecture.
In this area, a rich man called Sansho-dayu had power.
He bought people to work for him.
Anju and Zushio were sold to the terrible man.

*安寿と厨子王ののせた小舟は、越中、能登、越前、若狭の津津浦浦とまわるが、買い手がつかない。最後に丹後の由良の山椒太夫に売ることにした。
山椒大夫は田畑に米麦を植え、山では猟、蚕を飼い、なにからなにまで職人を使ってつくらせていた。人ではいくらでもほしいという人物だった。

When Anju and Zushio first met Sansho-dayu, they were too shocked to say anything.
The face of the 60-years-old man was bright red.
He had gray hair and a beard, which made him look like a scary monster.
The evil man said,
“The girl will work by the sea.
And the boy will work in the mountains.”

・・:・・二人の子供は奴頭のことばが耳に入らぬらしく、ただ目をみはって大夫を見ている。今年六十歳になる大夫の、朱を塗ったような顔は、額が広く、あごが張って、髪もひげも銀色に光っている。子供らは、恐ろしいよりは不思議がって、じっとその顔を見ているのである。
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大夫はあざ笑った。「愚か者と見える。名はわしがつけてやる。姉はいたつきをしのぶぐさ、弟は我が名をわすれぐさじゃ。しのぶぐさは浜へ往って、日に三荷がの潮を汲め。わすれぐさは山へ往って日に三荷の柴を刈れ。弱々しい体に免じて、荷は軽うしてとらせる。」

*こうして安寿は塩をつくるための海水を汲む仕事、厨子王は山で芝刈りの仕事をするようになった。

*さて一緒に旅をしていた女中のうばたけは、私の見た本ではすべて海に身を投げている。かわいそうな運命である。
*山椒大夫の「さんしょう」は、各地にある算所(さんじょ)、産所、山荘などの地名と深い関係がかるのではないかといわれている。そこには山伏や陰陽師が住んでいたと伝えられている土地が多く、大夫という称号は、芸能者の長(おさ)や、広く芸人、あるいは祈祷師の呼称として用いられるところから、こうした土地に関わりのある遊芸のひとたち、ある算所の大夫がこの物語を語り歩いていたのが、いつしか作品の中の人物の名前になったのではないかといわれている(「安寿姫と厨子王丸」解説 常光徹より)
・山椒大夫の息子について見ると、森鴎外の作品では太郎、二郎、三郎の三人で、太郎は16歳のとき、父が焼印をするのを見て家を出ている。それは19年前のことと書かれている。「新・講談社の絵本 安寿姫と厨子王丸」では三郎のみ、「偕成社の日本伝説 あんじゅとずし王」には、じろうとさぶろうが登場している。「朝日ソノラマの日本名作ものがたり2 あんじゅとずし王」では息子は登場していない。
小学館の「アンジュと頭獅王」では太郎、二郎、三郎の三人が登場する。

この兄弟たちがどのように物語「山椒大夫」に登場するのかは、このあと紹介していきたい。

*suffering; 「苦難、苦しみ」
 scary; 恐ろしい
 forehead; 額