Sansho-dayu 山椒大夫1

今月のEnjoy Simple Englishは、
森鴎外の「山椒大夫」。
「山椒大夫」というよりも「安寿と厨子王」というほうが、私にとってポピュラーだ。
私自身、小学校の時に日本昔話だったか小学生用の小説で読んだことを覚えている。
沢山ある「安寿と厨子王」の本な中で、森鴎外の作品が選ばれている。
Enjoy Simple English の本の中には作・森鴎外という言葉は見つからなかったが、ナビゲーターの関根麻里さんが森鴎外の名前を出して紹介していたので、森鴎外の作品「山椒大夫」が元になっていると考えていいと思う。

A group of four people walked down the road by the sea in Echigo or present-day Niigata Prefecture.
Anju was 14 and her brother Zushio was 12.
Their mother was about 30 and their female servant was with them.

 越後の春日を経て今津に出る道を、珍しい旅人の一群が歩いている。母は三十歳をこえたばかりの女で、二人の子供を連れて歩いている。姉は十四、弟は十二である。それに四十ぐらいの女中が一人ついて、くたびれた同胞二人を、「もうじきにお宿にお着きなさいます」と言って励まして歩かせようとする。二人の中で、姉娘は足を引きずるようにして歩いているが、それでも気が勝っていて、疲れたのを母や弟に知らせまいとして、折り折り思い出したように弾力のある歩きつきをして見せる。近い道を物詣にでも歩くのなら、ふさわしいくも見えそうな一群であるが、笠やら杖やらかいがいしい出で立ちをしているのが誰の目にも珍しく、また気の毒に感ぜられるのである。
(森鴎外『山椒大夫』)
*一行は紅葉を見ながら季節の移り変わりを感じ、夕日の頃になる。

When a local woman passed by, the servant asked her
“Excuse me.
Is there somewhere we can stay tonight?”
“Unfortunately not.
These days, we can’t have strangers in our homes because there are some bad men who buy and sell people.

向こうから空桶を担いでくる女がある。塩浜から帰る潮汲み女である。
それに女中が声をかけた。「もしもし。この辺に旅の宿をする家はありませんか」
潮汲み女は足を駐めて、主従四人の群れを見渡した。そしてこう言った。「まあ、お気の毒な。あいにくなところで日が暮れますね。この土地には旅の人を止めて上げる所は一軒も有りません」
女中が言った。「それは本当ですか。どうしてそんなに人気(じんき)が悪いのでしょう」・・・・略・・・
「いいえ。信者が多くて人気(じんき)のいい土地ですが、国守の掟だからしかたがありません。もうあそこに」といい指して・・・(橋のたもとに高札があり、そこに理由が書いてある。人買いが出ているので、旅人に宿を貸して足を留めさせたら罰する、それもあたり七軒が巻き添えになるので、だれも旅人を駐めなくなったと説明する)

*かわいそうに思った潮汲み女はこんな提案をする。

Why don’t you stay under the bridge over there tonight?
I will bring you some blankets later.”

「・・・わたしの思案では、あそのこ橋の下にお休みかさるがいいでしよう。k岸の石垣にぴったり寄せて、河原に大きい材木がたくさん立ててあります。・・・奥の方には日もささず、暗くなっているところがあります。そこなら風も通しますまい。私はこうして毎日通う塩浜の持ち主のところにいます。ついそこの、ははそ(ははそ・・・コナラの別名)の森のなかです。夜になったら藁(わら)や薦(こも)を持って往ってあげましょう」

When they reached the bridge, it was getting dark.

*高札には、潮汲み女のいったことがかいてある。原作には「人買いが立ちまわるなら、その人買いの詮議をしたらよさそうのものである。旅人に足を留めさせまいとして、行き暮れたものを路頭に迷わせるような掟を、国守はなぜ定めたものか。・・・子供らの母はただそういう掟のある土地に来合わせた運命を嘆くだけで、掟のよしあしは思わない」とある。この掟が4人の運命を変える。
四人は橋の下で一晩あかすための準備をする。

the mother and servant were really afraid.
They prayed for the kind woman to return.

女中は・・・・「ここでは焚き火をいたすことはできません。もし悪い人に見つけられてはならぬからでございます。あの塩浜の持ち主とやらの家まで往って、お湯をもらってまいりましょう。そして藁(わら)や薦(こも)のことも頼んでまいりましょう。」
女中はまめまめしく出ていった。

*女中のうばたけが戻って来るまでに、一人の男がやってくる。

Someone finally came, but it was not that woman.
It was a strong-looking man.
“I often patrol this area.
I feel sorry for travelers who don’t have a place to stay.
If you want , you can come to my house and have warm food.”

はいって来たのは四十歳ばかりの男である。ほねぐみのたくましい、筋肉が一つびとつ肌の上から数えられるほど、脂肪の少い人で、牙彫りの人形のような顔に笑みを湛えて、手に数珠を持っている。我が家を歩くような、慣れた歩きつきをして、親子のひそんでいるところへ進み寄った。

*男は言葉巧みに話しかける。

「わしは山岡大夫という船乗りじゃ。このごろこの土地を人買いが立ち回るというので、国守は旅人に宿を貸すことを差し止めた。・・・・わしは旅人を救うてやろうと思い立った。・・・わしは人の野宿をしそうな森の中や橋の下を尋ね回って、これまで大勢の人を連れて帰った。・・・わしがところではさしたる饗応はせぬが、芋粥でも進ぜましょう。どうぞ遠慮せずに来てくだされ」男は強いて誘うでもなく、独語のように言ったのである。

*子供のことを考える母親にとっては、なんとも嬉しい誘い。しかし・・・悲劇がはじまる。

ブログなかほど付近にあるマンがは、左の
「文芸まんがシリーズ4 原作・森鴎外 『山椒大夫 高瀬舟』 発行所 ぎょうせい」
からの引用。
このまんがは、原作にほぼ忠実に作られている。セリフのほとんどが原作からそのまま引用されている。

森鴎外の「山椒大夫」以外は、多くは「安寿と厨子王」のようなタイトルで出版されている。
もともとこの題材は説経節といわれた語り物で、歴史も古いし内容も少しづつ違っているものが多い。それを森鴎外がまとめたのだが、詳しいことはこれから紹介していきたい。