The Torikaebaya Tale とりかえばや物語2

However, Haru continued to grow and act like a handsome young man, while Aki continued to be like a pretty young woman.
The minister just wanted his children to be happy.

貴公子のように育っていくHaru(実は女性)、姫君として育っていくAki(実は男性)、それを見ている父親の minister (原文では権大納言)の心情について、「とりかへばや物語(全訳注)」の桑原博史さんはこんな解説を書かれている。
「・・・若君も、肉体上女性であることを完全に克服して、教養も衣裳も男としてふるまっている。それなのに、『これも本来の女のままで』と願う父君の心理心情が納得されるのは、男性美の極致が、当時はきわめて女性的なものに通じていたからである。若君は、ことさら雄々しくふるまわずとも、女性的な美貌のままで充分男性として通用した。あの光源氏がその美貌を讃えられて『女にて見まほしう』と評されたように。・・・これも(将来は)法師にして、と思うものの、なお幸運のめぐりくる余地はないかと期待も捨てきれぬ。それはこの若君が、朝廷の補佐役にもなり得る資質を持っていたからであった。・・・」

ここの「男性美の極致が、当時はきわめて女性的なものに通じていたからである。若君は、ことさら雄々しくふるまわずとも、女性的な美貌のままで充分男性として通用した。」という指摘はとても大事なところだと思った。
ここをおさえておけば、このあと登場するNatu の行動や心理が理解できる。

One day, the prince hear about Aki and wanted to marry her.
It was great news for a father.
But Aki was a boy!
If someone found out, there would be a lot of trouble.
So he said to the prince’s messenger,
“Thank you for a wonderful offer.
But my daughter is too young and very shy.
I don’t think she can be a good wife.”

ここは状況が省かれている。まずHaru の才能や容貌が優れていることが評判になり、宮中の帝や東宮から「宮仕えさせないのか」とお呼びがかかる。

かかる御才・容貌すぐれ給へること、やうやう世に聞こえ、内裏・東宮にも「さばかり何事にも優れたなるを、今まで殿上などもさせせず、まじろはせぬこと」と、尽きせずゆかしがらせ給ひて、大将殿にもたびたび御気色あれど、いとど胸つぶれ、あさましく傍痛ければ、いまだはけなきさまを奏して取り入で給はぬを・・・
(Haruの)こういう学問の深さや容貌のすぐれておられることは、やがて世間に広まって、帝や東宮も「それほど何事にも優れているというのに、今まで殿上などもさせず、出仕もさせないとは」と、ひどく本人をご覧になりたくて、父大将にも何回もおすすめがあったが、大将にしてみればまことに困ったことで、情けなくみっともない気がするので、まだ幼いことを奏上してお出しにならない・・・・

HaruAkiの父君は、二人を元服させて社会人としてお披露目を行う。

Haru は、貴公子として宮中デビューをする。男も女もHaruの美しさに魅了されてしまう。そしてHaruの弟?妹?兄?姉?世間的には姫君のAkiに関心が向けられる。
Aki もきっと美しいに違いないと。そうして帝や東宮からAkiを結婚相手にという声がかかる。

この妹の君の御容貌、名高くすぐれて聞え給へば、いづれも御心をかけて仰せ言あれど、せむ方なき御物恥ぢに事寄せて、おぼしもかけず、・・・
Haru の姉妹にあたるかたの御容貌が、評判高くすぐれているとお耳にはいったので、帝・東宮のどちらもお気にとめてお言葉があったが、どうしようもない恥ずかしがりやだと理由をつけて、・・・

Soon, everyone heard about this beautiful girl who didn’t say yes to the prince.

One man called Natsu was especially interested in Aki.
Natsu was handsome, from a good family, and liked women.
He wrote a love letter to Aki and asked his best friend to give it to her.
The friend was Haru.
She was now working for the emperor as a man.
Of course she knew that Aki was actually a man, so she said,
“I’m sorry, but Aki wouldn’t be interested.
I can’t give this letter to her.”

この侍従(Haruのこと)のあまりいみじくものまめやかに、見だるる所なく修めたるこそあまりさうざうすきやうなれど、見る目・容貌の似るものなく愛敬こぼれて、うつくしきさまの、「かかる女のまらましかば」と、見るたびにいみじく思わしきを、「妹もかくこそはものし給ふらめ。女は今一際まさるらむよ」と思ひやるに、見奉らでゆむべき心地もせず。
この侍従の君(Haruのこと)がたいそう聖人ぶって、羽目外すことなく身をつつしんでいるのが、あまりにもものたりない気がするが、見た感じや容貌が類のないほど愛敬にみち、かわいらしい様子なので、「こういう女がいたら」と、見るたびにひどく好ましい気がしてきて、「この人の姉妹もこんなふうでおられるのだろう。女ならいちだんとまさっているだろうよ」と想像しはじめると、わが物としないではいられなくなってしまう。

Haruの美しさからAKiの美しさを想像して、Haruにその気持を打ち明けるが、Haruとしては自分の気持ちも整理できないので、どうすることもできない。
Enjoy Simple English では手紙をわたしてくれるように頼んでいるが、私には原文に直接そういった表現を見つけることができなかった。しかし仲介してくれるように頼んだことは充分に想像できる。
Natsuの「こんな女がいたらなあ」とHaruを見て思うところが、次への伏線となっている。
さて、そんなHaru に縁談話がもちあがってくる・・・・。

*2つ目のカラーの挿絵は、「ヒーロー&ヒロインに会おう! 古典を楽しむきっかけ大図鑑」監修・斎藤孝 日本図書センター 」より。
*原文とその現代語訳は「とりかへばや物語 全訳注 桑原博史 講談社」による。