6月からのEnjoy Simple English は「とりかえばや物語」。
私は「とりかえばや物語」という物語があることは知っていたが、どんな話なのか全く知らなかった。いい機会だから、英語で読みながら、現代語訳の本や原作を見てみることにした。
Enjoy Simple English の「英語て味わう日本文学」のページ、114ページの欄外に
「登場人物の命名については、田辺聖子著『とりかえばや物語(21世紀版 少年少女古典文学館8)』(講談社)を参考にしました」とある。実はこの「とりかへばや物語」の主人公たちの名前が作品中で紹介されないのだ。男君、女君、姫君、中納言、尚侍などの職名で話が進んでいく。当時の人達には何の不思議さもなかったのかもしれない。
田辺聖子さんが、大胆な創作も加えて私達が読みやすくした「とりかへばや物語」では、女君を春風、男君を秋月と名付けて物語をすすめている。今回の Enjoy Simple English ではそれを参考にして、女君をHaru、男君をAki と名づけているわけだ。そのほうが英語で日本の古典を紹介しやすいのは確かだと思う。
どんな内容の物語なのだろうか。
「とりかへばや物語(一)全訳注 桑原博史 講談社学術文庫」の裏表紙の紹介を見てみよう。
「平安末期成立の『とりかえばや』とは、女性的な気質の兄君と男めいた気性の姫君とが、それぞれ女装男装して、華やかな宮廷生活に悲劇喜劇の渦をまきおこす物語である。・・・・」とある。
田辺聖子さんの「とりかえばや物語」(光春文庫)では、
「権大納言家の凛々しい若君・春風と、美しくたおやかな姫君・秋月。実はこの異母兄弟、春風は姫君で、秋月は若君なのだ。『ああ、このふたりをとりかえられたら・・・』という父の願いもむなしく、ついに正体を隠して宮中デビューするはめに。偽りの生活はどこまで続くのか?! 奇想天外、痛快平安ラブコメディ!」とある。
源氏物語のあとに作られたこの「とりかえばや物語」、作者は不詳。しかし数多く作られた物語で、現在も読みつがれているこの物語は、それだけの魅力があるということだろう。
さあ、Enjoy Simple English を読んでみよう。
“Haa! Argh!”
“Oh, my. That’s my daughter again.”
The minister heard his daughter, Haru, playing a ball game with boys in the garden.
Only boys played with balls.
Everyone thought the minister had a healthy, active son.
At the other end of his house was his son, a pretty boy called Aki.
He liked to stay inside and play with dolls all day.
The two children acted differently, but their faces looked similar.
The minister loved both of his children, but the son was like a daughter, and the daughter was like a son.
He always thought,
“I wish they could change places.”
*minister; 大臣
*place; 立場、境遇
ここは最初に書いたこの本のあらすじから内容はわかるところ。
容姿がよく似ているところの原文は以下の通り。
こうして成長していく二人の異母兄弟。姿かたちがそっくりなHaruとAkiの波乱万丈の物語の始まり。