古事記を英語で読む4

黄泉の国

 In a deep,dark place underground, there was the Land of Yomi, the land of the dead.
Izanaki walked to the door  of the big palace of Yomi.
He called out to his dead wife, “My dearest wife, come back home with me.”
Izanami answered.
“My dearest husband, I wish you had come earlier.
I have already eaten food cooked in this land.
Once you eat that food, you cannot leave.
But let me go and ask the gods of Yomi if I can leave with you.
Just promise me not to look inside.”
“I promise.”

「美しい私の妻、伊耶那美命よ。あなたとわたしとで作らねばならない国は、まだ作り終えてはいないのですよ。ここにいてはいけない。いっしょに帰りましょう」
「くやしいと思います。どうしてあなたは、もっと早くおいでになってくださらなかったのですか。
私は黄泉の国のかまどで料理されたものを食べてしまいました。
わたしはもう黄泉の国の者なのです。 わざわざ黄泉の国までおいでになってあなたのお心を、ありがたく思わなければいけません。
そのお心を思えば、私だとて帰りたいと思うのです。ですから私は、そのことを黄泉の国の神々とご相談いたしましょう。
お願いが一つあります。どうか私がその黄泉の国の神々と話し合っている間、中を覗かないでください。私の姿を見ないでください。」(橋本治さんの「古事記」より)

Izanaki waited, but Izanami did not return.
Izanaki became worried and broke his promise.
He looked inside the door.

見てはいけないという約束を破ってしまった伊邪那岐命が見たものは、

It was very dark and smelled very badly.
Izanaki went inside and saw his wife’s dead body with baby flies coming out of it.
Eight gods of the Land of Yomi were also sitting on top of it.
Although they were called gods,they were actually evil monsters. Izanaki started to run away.
He heard his wife’s voice from the dark,
“You broke your promise!”

橋本治さんの「古事記」から、その部分を抜書きすると、

「暗い奥で、青白い炎のようなものが光っています。ゴロゴロときみのわるい地鳴りのような音がします。くさったようないやな匂いがしました。
・・・動いていると思われたのは、ウジ虫でした。暗い中に横たわっている伊耶那美命の体の周りを、びっしりとウジ虫がとりまいているのです。
横たわった伊耶那美命の頭の上には、たいそう醜悪なそして大きな魔物が座っていました。・・・頭、胸、腹、股、両手、両足の先に座っているのは、神とは名ばかりの醜悪な魔物たち、ー「雷(イカヅチ)」と呼ばれる黄泉の国の神々でした。」

橋本治さんの「古事記」には、「雷」の説明が注として記されている。

「原文には『大雷、火雷、鳴雷、伏雷、土雷』などと記されている。古代中国では雷は春から夏に地上に降りて雷獣というものになると考えられていた。雷獣は秋から冬にかけては土の中に伏していて、豚や羊に似て、食べることもできるとされていた。それから考えると、ここの「伏している雷・土の雷」というのも、雷を雷獣のようなものと考えていたことから思いついたものだろうー略ー」

(上に引用した、こうの史代さんのマンガには、橋本治さんの紹介している5人の雷の他に、黒雷、折雷、若雷の3人が描かれていて、合計8人の神の姿がわかる)

「約束をやぶったわね!!」と怒る伊耶那美命。
古事記の原文では「吾に辱見せつ(あれにはじみせつ)」とある。
橋本治さんの「古事記」には、「わたしに恥をかかせましたね!」と訳されている。

里中満智子さんのマンガでは、ギリシャ神話にもよく似た話があると紹介している。
古事記とギリシア神話によく似た話があるというのは、人間というものの性質なんだろうか?
里中満智子さんは「男ってどうしてこうなんでしょう? 愛する妻が生き返るチャンスなのにがまんできないなんて・・・」と書かれている。確かにそうかもしれない。

さて、このあと伊邪那岐命はどうするのか?