古事記を英語で読む12

八俣の大蛇3

Suddenly, the sky grew dark, and lightning flashe across the sky.
A strong wind blew, and the ground shook.
In the darkness, 16 red eyes shone brightly, and the Yamatano-orochi appeared. The snake smelled the sake and rushed to the bowls.
All the heads started  to drink.
After a while , the sound of drinking turned into snoring. The snake was asleep.

*snore; いびきをかく,asleep; (形容詞)眠っている

「其の八俣のをろち 信(まことに)言ひしが如(ごと)来(き)つ
 乃ち(すなわち)船毎に(ふねごとに)己が頭を垂れ入れて 其の酒を飲みき
 是に(ここに)飲み酔いて 留まりて 伏し寝ねたり・・・」

原文ではこれだけの表記だが、英文や橋本治さんの古事記には、いろいろな表現を付け加えて描写している。とにかく酔わせて眠ったところを攻撃しようという作戦どおりにことは進んだということだろう。

“The time has come!” Susano-o took out his sword and quietly walked toward the snake.
He cut off the heads one by one.
Some of the heads tried to fight back, but they were too drunk to fight.
The blood from the snake flowed into the river, and the river became bright red.
While he was cutting up the snake, he found a beautiful sword inside one of the tails.

*The time has come;  Spring has come のhas と同じで現在完了形、今この時が来た、という感じだと思う。

原文の描写はここも簡潔だ。

「爾に(ここに)速須佐之男命 其の御佩(みは)かせる十拳剣(とつかのつるぎ)を抜きて 其のをろちを切り 散(はふ)りしかば 肥河(ひのかわ) 血と変(な)りて流れき 故(かれ)其の中の尾を切りし時に 御刀(みはかし)の刄かけき 爾にあやし と思ほひて 御刀の前(さき)以て刺し 割(さ)きて見れば 都牟刈(つむがり)の太刀(たち)在りき・・・」

ここでスサノオが使った十拳剣。Enjoy Simple English では説明が省かれているが、スサノオの剣はアマテラスが神を生み出すときに折って噛み砕いているはず。
神話だから矛盾はあっても不思議ではないのだが、後世の人はその解釈に苦しむ。

里中満智子さんのまんがでは、
「須佐之男が所持していた『十拳剣』は固有名詞ではなく、『10本分の拳(こぶし)の長さのツカがある剣」という意味で、伊邪那岐神(いざなきのかみ)も十拳剣を持っていましたし、その他多くの人が十拳剣を用いていたと古事記には記されています」と説明されている。
こうの史代さんは、クシナダヒメの父親アシナヅチがもっていた十拳剣を拝借したのではないかと説明されている。

Susano-o gave it to his sister, the sun goddess, Amaterasu.

橋本治さんの古事記によると
「・・・その大刀は、とても当たり前の剣とは思われませんでした。そこで『これならば天照大神も喜んでお受け取りになるだろう』と思われたスサノオの命は、その大刀が八俣の大蛇の尾の中から生まれ出たといういきさつをご報告になって、その不思議な大刀を天照大神へとさしあげられたのです。この大刀こそが、いまに大和の朝廷につたわる草薙の剣(くさなぎのつるぎ)なのです」

Susano-o married Kushinada-hime, built a palace and they lived in Izumo.

・・・・・・・・・
こうしてスサノオの八俣の大蛇退治がおわり、クシナダヒメと結婚をし、出雲の国での国造りがはじまる。

5月は「因幡の白兎」「天孫降臨」「ふたりの名前」「海幸彦と山幸彦」。

 

 

 

古事記を英語で読む11

八俣の大蛇2

Susano-o heard this and said, “I will kill it for you! But give me your daughter for my wife.”

Ashinazuch agreed.
He would do anything to save Kushinada-hime’s life.

爾(ここ)に速須佐之男命(はやすさのおのみこと) 其の老夫(おきな)に詔(の)りて 是(こ)の汝(いまし)の女(むすめ)は 吾(あれ)に奉らんや

橋本治さんの「古事記」はこう訳している。
「ところで、わたしがその大蛇をたをしたら、おまえはこの娘をわたしにくれるだろうか?」

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ここのところはEnjoy Simple English では簡単に書いてあるが、もう少し二人のやり取りがある。クシナダヒメの父親のアシナヅチは、そういわれても名前もわかなない人なのに、と言葉を濁す。
スサノオは自分をアマテラスの弟だと伝えると、アシナヅチは「なんともおそれおおいことです。なにも知らずに失礼を申し上げました。そういう立派なお方でしたら、もちろん娘はさしあげたいと思います」(橋本治訳「古事記」)と答える。

クシナダヒメの意見も気持ちも全く関係なくことはすすむ。
おまけに、古事記には「わたしが大蛇をたおしたら」という条件も書かれていないように私は思える。
このあとスサノオがヤマタノオロチと戦う準備をすすめるので、言外にその意味が含まれていると解釈するのかもしれない。

Susano-o got ready to fight the Yamatano-prochi.
He asked Ashinazuchi to prepare lots of very strong sake.
Then Susano-o made a fence with eight entrances.
He placed a bowl with the strong sake at each of the entrances. Susano-o planned to make the snake drunk and then kill it.
When it was time, Susano-o hid the family in a safe place.

ここはヤマタノオロチをむかえるための準備て、有名でよく知らているところ。
橋本治さんの「古事記」には次のようにか枯れている。
「おまえたちは、酒を作れ、強い酒でなければならない。一度や二度絞っただけではなりない。一口飲めばすぐに酔いが回ってしまうように、同じ酒を八度しぼって強い酒にするのだ。・・・このあたりに垣根を張り巡らすのだ。がんじょうな垣根を作れよ。その垣根には8つの門を開けるのだ。大蛇の首の数だけの門をあけたら、その内側に台を作れ。その台の上に、酒を入れる大きな器をのせるのだ。その中に八度絞った強い酒を入れて、それがすんだらおまえたちはかくれておくれ。」
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英文と橋本治さんの「古事記」と違うところがある。
強い酒を作るように頼むところは同じ、しかしそのあとの「垣根を張り巡らしたり、門を8つ作ったり、酒を入れる器や台を作ったりして準備した」のは、だれ?
Enjoy Simple English ではスサノオが率先してやっているように思える。
橋本治さんの「古事記」では、スサノオはアシナヅチ夫婦に作るように命令している。

里中満智子さんのマンガ古典文学「古事記」では、左の絵のようにヤマタノオロチをやっつける作戦を説明しているような記述になっている。
絵で垣根を作っている場面も描かれているが、村人のような感じで、スサノオを姿ではない。

古事記の原文は、
「其の足名椎(アシナヅチ)、手名椎(テナヅチ)の神に告(の)りしく
汝等は八塩折(やしおり)の酒を醸(か)み 亦(また)垣を作り迴(もとほ)し 其の垣に八つの門を作り 角毎(かどごと)に八つのさずき(注 供え物を置く棚)を結い 其のさずき毎に酒船を置きて 船毎(ふねごと)に其の八塩折の酒を盛りて待て・・」
とあり、どうも命令だけをしているように思える。

さて神話、ということでファンタジックな場面もある。
それが里中満智子さんのマンガにある、「クシナダヒメを櫛に姿を変えて、自分の頭に刺して守ろう」とするところ。

「乃ち(すなわち)其の童女(おとめ)を湯津爪櫛(ゆつつまぐし)に取り成(な)して 御みづらに刺して・・・」

巨大な大蛇−ヤマタノオロチに立ち向かうために知恵を使う、というスサノオは、大自然に立ち向かう人間のようでもある。
ヤマタノオロチとの戦いは次回に。

 

 

 

 

 

 

 

 

古事記を英語で読む10

八俣の大蛇1

Amaterasu, the goddess of the sun, came out from the cave, and now all was well. However, there was one problem, her violent brother Susano-o.
The gods were angry with him, so they told him to leave the land above the sky.

橋本治さんの「古事記」の、この部分を読んでみると、

「天照大神がおもどりになるとすぐ、八百万の神々は、スサノオノミコトをどのように罰したらよいかという相談をはじめました。
スサノオノミコトへの罰は『千位(ちい)の置戸(おきと)』と決まりました。これは後の世の罰金のようなもので、罪を反省する証拠として、様々の貢物を差し出すことです。スサノオノミコトは、千の台の上に様々の貢物を乗せて、高天原の神々の前に差し出しました。しかしそれだけでスサノオノミコトの罪が許されたわけではありませんでした。スサノオノミコトは、それからヒゲと手足の爪を切らされました。・・・そうしておいて、スサノオノミコトは、高天原から追放の刑を受けました。」

おやおや、スサノオは父親のイザナキに出て行けと言われ、母のいる黄泉の国に行く前に、ちょっと姉のアマテラスに挨拶に来ただけだったのに・・・。さらに高天原の神々から追放されてしまい、地上の世界に行くことになったわけだ。

One day, in the land below th sky, Susano-o was in a place called Izumo.

スサノオが出雲に来る前に、食べ物の神である大気都比売神(おおげつひめのかみ)との話があるのだが、Enjoy Simple English では省かれているので、その部分は省略する。

There he saw chopsticks floating down the river.
He thought, “There must be people living up the river.”
He kept walking along the river and found a small house.
He heard sounds of crying coming from it.
Inside he found Ashinazuchi, the son of the mountain god, his wife and daughter named Kushinada-hime.

Susano-o asked them why they were crying,
Ashinazuch said,
“I had eight daughters.
But a snake called Ymatano-orochi eats one of my daughters each year. Kushinada-hime is all I have now.
But the snake will come again this year and eat her. We cannot help crying.”
*cannot help 〜ing   〜せずにはいられない。

The Yamatano-orochi was a very big snake with eight heads and eight tails. Its stomach was always dripping with blood, and its bright red eyes were always looking for something to kill.

橋本治さんの「古事記」には、八俣の大蛇の説明がこのようになされている。

「その目は、赤くうれたほうずきのように、らんらんと輝いております。しかもその目が右と左との一対ばかりではないのです。なんと頭が8つもある、恐ろしい大蛇なのです。胴は一つですが、頭と尾はそれぞれに8つに別れ、そのそれぞれの頭にある両の目が、火のようにらんらんと輝くのです。その胴体は山のようで、杉や檜の大木さえもはえております。胴体は暗くひんやりとして、不気味な蔓草を茂らせて、しかもその胴体の長さは、8つの谷、8つの山を超えるほどもあるのです。・・・その恐ろしい大蛇の腹は、いつも血にただれて、新しい生贄を探し続けているのです。」

*英文の dirp wiht … は、〜でしたたっている、というときに使われる。
     drip with sweat /汗だくになる、汗がしたたる というように使われる。

ここのところは原文では「其の腹を見れば、悉(ことごと)に常に血爛(ちただ)れつ」とある。橋本治さんの訳はこの語からきているのだろう。

さて、八俣の大蛇との対決がはじまる。