消えた基準点

水準点めぐり 22

写真は電子基準点。
銅座幼稚園の前の公園。
地下鉄谷町4丁目が最寄りの駅。
この周辺には、大阪城公園や大阪府警、大阪府庁があるという、いわば大阪の中心地といっていいのかも。
この写真は2013年6月にとったもの。
私が初めて電子基準点を見たときのものだ。
2020年現在、全国に約1300の電子基準点が設置されているそうだ。
高さは約5メートルの金属の柱。
上空を飛ぶGPSの人工衛星からの信号をキャッチし、24時間の観測を行っているそうだ。

上の写真は2020年9月のもの。ない、電子基準点がない!

公園の中に入って、角度を変えて写真を撮る。
電子基準点があったところには木が植えられているように見える。
周りを見ても、電子基準点があった痕跡はまったくない。
どこかに移動したなどの表示もなかった。
三角点だけではなく、電子基準点も消えてしまうことがあるのだろうか。

国土地理院のホームページから、この付近の電子基準点はどうなったのかを調べてみた。
銅座幼稚園のそばにあった電子基準点は記載されていなかった。
かわりに真田山公園の中に新しい電子基準点が設置されていることがわかった。
さっそく写真を撮りに行くことにする。

ありました。ピカピカの電子基準点が公園の南側の入口付近に設置されていた。
近くには味原幼稚園があった。

「ここに建っているステンレス製の柱は、電子基準点といいます。 柱の先端部にはGPS等のGNSS(全世界的衛星測位システム)衛星からの電波信号を受信するアンテナが取り付けられており、柱の中には受信機本体と受信データを転送するための装置が入っていて、常時連続観測を行っています。
・・・略・・・・全国に設置し、各地で得られたデータを茨城県つくば市にある中央局に転送し、コンピュータで処理して電子基準点の位置を正確に求め、各種測量の基準として利用するとともに、地震予知に重要な地殻変動の監視もおこなっています。
国土交通省国土地理院・・・・」

ステンレス製の柱の足元には丸い金属板が埋め込まれている。
「電子基準点付属標   
 基本  
 国土地理院
 この測量標を移転毀損すると測量法により罰せられます」 の文字がみえる。
この付属標は水準測量にもつかわれることがあるそうで、二等水準点の役割を果たしているものもあるそうだ。

国土地理院のホームページのデータによると、この電子基準点は「2019年7月17日登録」、となっていたから、ごく最近の登録だ。

ここからは私の推測だが、銅座幼稚園そばにあった電子基準点がここに移動したのだろうと思う。銅座幼稚園も、真田山公園も上町台地にあって古い地盤の上にある。今後の地震予知には重要なデータを発信できる位置にあるのではないだろうか。
「電子基準点も消えるのか?」と思ったが、今回はどうも「電子基準点は移動した」というのが正解だろうと思う。
とにかく「電子基準点」があってよかった。

 

 

 

消えた三角点

三角点を探る旅50


ここは以前にこのブログで紹介した堺市立の小学校の校庭にある四等三角点。

この写真は2018年の5月に撮影したもの。
国土地理院の標識もたっていて、さすが学校の中にある三角点だと取材した。

2018年6月18日に大阪北部地震が起き、高槻の小学生が学校の塀が倒れて犠牲になる事件が起きた。
そのあと大阪の小学校では学校の塀の見直しがおき、塀の状態を調べることが進められた。
堺市でも小学校のブロック塀の取り壊しと建て替え工事が始まった。この小学校でも、ブロック塀の撤去工事が始まったのは2019年の2月頃だった。

 

この写真は2019年3月1日のもの。
ブロック塀は完全に撤去されていて、工事が進んでいる。
三角点は以前の位置にあり、三角点を示す標識も残っていた。

三角点の周りは整地されるようだが、三角点そのものはフェンス建て替えの工事とは関係がないから、このまま残っていくのだろうと思っていた。
国土地理院のホームページに三角点の説明には以下のようなものがあった。

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災害復旧
基準点の位置は、地震などにより大きく変動する場合があります。変動した基準点の位置を改定する場合、再測量による方法がもっとも精度の高い方法ですが、大規模地震ともなれば膨大な時間と費用が必要となります。
地震後に三角点の測量を行い、地震前の値と比較することにより、その三角点の変動量が分かります。こうして得られた変動量を元にその周辺の変動量を見積もることができます。東北地方太平洋沖地震の際には、地震の影響を受けた三角点のうち、約1,200点について再測量を行いました。
得られた結果から座標補正パラメータを作成し、約4万点の三角点の位置を再計算したほか、このパラメータを一般に公開しました。このパラメータを使用して補正計算を行えば、基準点だけでなく、三角点と関連づけて位置が求められている点のほとんどを改定することができます。

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写真は2019年9月1日のもの。
ブロック塀は金網状のフェンスに変わっていた。
三角点は影も形もなかった。
そばに寄って上から見てみると、掘り返したような跡が残っていた(と私には見えた。)
工事のために三角点を移動する、ということもあるらしいので、運動場をざっと見渡したがそれらしいものや表示は見えなかった。
三角点というのはかなり大きなもので、一等三角点は長さ80センチぐらいで重さも数十キログラムあるそうだ。四等三角点だからそこまで大きくはないとしても、これを掘り出すだけでも大変だったと思うし、わざわざ掘り出さなくてもいいのに、と思う。
以前に池の改修工事で三角点が見つけられなかったこともあった。ディズニーシーの傍にあったはずの三角点も公園の改修工事で消えてしまった。
改良工事や改修というなかで消えていく三角点は多いのだろう。
最近は三角点による地図作成よりも、GPSによる測量のほうが精度が高いという記事を見ることもある。
いろいろな理由があるのだろうが、残念なことだなあと私は思う。

 

 

藍の生葉(なまは)染め

今年も藍がよく育ったので、藍染をすることにした。
今回は一番単純で、しかも確実な「生葉染め(なまはぞめ)」をすることにした。

以前からいくつか方法を試しているが、薬品を使うのは危険なので直接生葉から染めることをやってみた。
まず大きく育った藍をほぼ根本から切る。

今年は小さな子どもたちに手伝ってもらった。
まず切りとった藍から、葉っぱだけをとる。
ハサミを使ったり、手でちぎり取り、方法はいろいろ。

今年はハンカチサイズの絹を購入したので、絹と木綿のハンカチとで染の違いを確かめてみようと思った。
以前は絹が手元になかったので、レーヨンを使って生葉染めをしたので、レーヨンと絹との違いも確かめられると考えた。

前回の資料を見ると、布10グラムに対して藍の葉が50グラム、そして水が700グラムの分量で計算すればいいことがわかる。

藍の葉を水洗いし、ゴミを取ったあとフードプロセッサーで粉々にする。

粉々にした藍の葉とプロセッサーに入っていた水ごと取り出す。資料の本には木綿の濾すための布を用意していたが、私は古いタオルで代用した。
この作業を何回か繰り返して、すべての藍の葉から染色するための液を絞り出す。

絞り出した染色液に絹、木綿をいれて15分ほど混ぜながら染色していく。
染色液は色が黄緑色から緑色に変化していく。
15分混ぜ続け、できるだけ空気に触れないように混ぜ続けると資料には書いてある。
このとき、手には手袋が必要。
そうしないと指先や、爪が藍色にそまってしまう。タンパク質に反応するためだ。
この段階でも、絹はよく染まり、木綿はそれに比べてあまり染まらないことがわかる。
生葉染めなので、その違いがよくわかる。

上の写真左が絹。右が木綿のハンカチ。染め上がりの違いがよく分かる。

上の写真の左が絹、真ん中が染めていない絹、右が木綿。
木綿もうっすらと染まっているが、絹と比べると全く違うことがわかる。

右の写真は以前にレーヨンの布を生葉染めしたもの。
染める前と染めたあとを比べた写真だが、これを見ると、レーヨンと絹とでも染まりぐあいが違うことがわかる。絹の生葉染めは鮮やかな青に染まる。二回染めるとまたその青が深くなる。
このあと、子どもたちと藍の葉のたたき染めも経験した。たたき染めのことは以前のブログに紹介している。
NHKで正倉院に収められている草木染を再現した放送があった。
永久保存用として50色以上の草木染を再現し、ロンドンの博物館に収められているそうだ。
源氏物語の姫君たちの衣装はこんなにも華やかで軽やかな色だったのだろうか、と驚くほどの鮮やかさだった。
いちど自分の目で確かめてみたいが、それはいつのことだろう。