大阪の日本画

大阪中之島美術館で「大阪の日本画」展が開かれている。
会期末も近づいてきたし、評判も良さそうなので見に行くことにした。

パンフレットには、
「大阪は商工業都市として発展を続けるとともに、東京や京都と異なる文化圏を形成し、個性的で優れた芸術文化を育んできました。
江戸時代からの流れをくむ近代大阪の美術は、町人文化に支えられ、瀟洒で(しょうしゃ)でスッキリした作品から、滑稽で可愛らしいユーモアたっぷりの作品まで、伝統にとらわれない自由闊達な表現が多彩かつ大きく花開いたといえます。
とりわけ大正から昭和前期にかけては画壇としての活動が隆盛を極め、北野恒富(きたのつねとみ)、島成園(しませいえん)、菅楯彦(すがたてひこ)、矢野橋村(やのきょうそん)など、多くの画家が個性豊かな作品を生み出しました。・・・・・。」と書かれている。

中之島美術館はチケットを買って、長いエスカレーターにのる。

エスカレーターから見える垂れ幕状のボスターには、北野恒富(きたのつねとみ)の「宝恵駕(ほえかご)」の一部。
北野恒富はパンフレットによると「妖艶で退廃的な作風で人気を博し・・・」と書かれている。
私は宝恵駕というタイトルを見て、NETFLIXで見ている「舞妓さんちのまかないさん」を思い出した。
舞妓さんの日常と晴れの姿がやさしく表現されているドラマだ。

私は「大阪の日本画」(開館一周年記念特別展)にきて発見したことは、なんと女性の画家が大阪に多くいて、活躍していたことだ。
過去形で書いたのは、現在の状況がわからないから。日本画のことがわからない、まして作者のこともわからない私なので、本当に勉強になった絵画展だった。

写真撮影は基本的に禁止されているが、写真をとってもいい作品がいくつかあったので紹介する。

吉岡美絵(昭和14(1939)年作)「ホタル」 と 「店頭の初夏」

高橋成薇(たかはしせいび)(昭和3(1928)年作 「秋立つ」

会場のパンフレットには、
「すっきりと 上品に、  
・・・・本展では、明治から昭和に至る近代大阪の日本画に光をあて、50名を超える画家による約150点の作品を展示します。 また、作品が生まれた背景にも目を向けることことで、個々の作品の魅力や画壇のあり方をより深く知るとともに、今につながる大阪の街の文化を浮き彫りにします。」
と書かれている。

また4月15日から6月11日には、これらの作品が東京で「大阪の日本画」として、東京ステーションギャラリーで展示されるそうだ。そのポスターには「浪速の近代日本画、初の大規模展がやってくる!」とかかれていた。その案内パンフには「・・・大阪における女性画家の先駆者で上村松園とも並び称された島成園をはじめ、明治から昭和前期にかけて近代大阪で活躍した画家たちが集結します。東京や京都の画壇の陰に隠れて、その独自性が見えづらかった大阪の日本画に関する史上初めての大規模展覧会といえるでしょう」とある。
その島成園の絵も展示されており、写真撮影が可だった。

島成園「祭りのよそおい」大正2年(1913)作

この作品は大阪では有名な絵。絵の横にある解説によると、
「祭りのため、上等な着物と履物、髪飾りをつけた左に座る二人。並んで座る絞り染めを着た少女は簡素な帯をつけ、羨ましそうな眼を二人に向ける。
離れたところから三人をじっと見つめる少女は素足に草履姿で、髪飾りはたった一輪の野辺の花。
親の経済状況が残酷に反映されて子供社会にも明らかな貧富の格差があることを、21歳の島成園は少女の表情や装いを描き分けて見事に表現した。」とある。

 私は着物のことがよくわからないので、着付けができる人にこの写真を見てもらった。確かに着物や履物、髪飾に差があるそうだ。左の三人の子どもの中にある家庭の差、そして一番右端の子どもの着物や履物にある差、それは子どもといえども人間関係に複雑な陰を落としてそうだ。ただ時代や環境が変わるとその違いがわからなくなってくるだろう、現在の私のように。絵のかかれた時代背景を読み取る眼や知識が必要となってくる。そのためにはこのような絵の展示や解説が大切になると思った。

 この絵は島成園が21歳のときの作品で、文部省美術展覧会(文展)に入選している。島成園は堺市の出身で、堺市女子高等学校卒業後大阪市南区に転居している。
京都の上村松園(うえむらしょうえん)、東京の池田蕉園(いけだしょうえん)、とともに「三都三園」と並び称されたそうだ。島成園はこのあと同時代の女性日本画家の木谷千種(きたにちぐさ)、岡本更園(おかもとこうえん)、松本華羊(まつもとかよう)と「女四人の会」を結成して第1回展をひらく。しかし識者からの非難やゴシップを書き立てられ第2回は開催されなかったという。
 こうした島成園の活動については私は全く知らなかった。堺で生まれた人だけにこれから調べてみたいと思った。

生田花朝(いくたかちょう)「天神祭(昭和10年頃)の作

 

生田花朝は「浪速天神祭」の題材で絵を書いた女性の画家ということで知られているそうだ。作品の一つは繁昌亭の緞帳のモデルになっているそうだ。

こうして展覧会を見て回ると、多くの女性画家が活躍していたことが本当によく分かる。
会場においてあったパンフレットが左。
「女性画家たちの大阪
南都に咲いた浪華の女性画家 その活躍を一同に紹介」とある。
2023年12月23日から2024年2月25日。
中之島美術館で開催予定だそうだ。
これは是非とも行かなくてはと思って会場をあとにした。