「4月1日は早生まれ」とは?

 

学校も二学期が始まった。
私の家の近くにも小中学生がいて、グループで登校したり、友達が迎えに来ている場面がまた見られるようになった。
小学校1年性の子どもたちの姿もすっかりたくましくなって、大きい子どもたちに負けないような元気な様子が目に入る。
以前の仕事仲間の女性たちが、子どもが誕生したので久しぶりに集まる機会があった。3月下旬の生まれの子がいて「早生まれ」が話題になった。
毎年4月の入学時には「早生まれの子は・・・」という話をよく聞く。
「早生まれ」とはどういうこなのかと、改めて調べてみようと思っていたら、「仰げば尊し、和菓子のON?」(高崎康史・KKベストブック)という本を図書館で見つけた。その最初の項目に「早生まれ」のことが書かれていた。

前年の4月2日から本年の4月1日の間に
          満6歳の誕生日を迎えた子

これが新1年性の基準だが、「なぜ4月1日なの?、3月31日じゃないの?」と思うのが普通の感覚だと思う。4月1日に生まれた子も新1年生でいいじゃないの?

これには4つの法律が関係していると、この「仰げは尊し、和菓子のON」には書かれている。

学校教育法施行規則

「小学校の学年は、4月1日に始まり、翌年3月31日に終わる。」(第59条)
この条項は中学校(第79条)、高等学校(第104条)についても書かれている。

なぜ4月から翌年の3月か? という疑問についてこの本では説明があるが、ここでは省略させていただく。興味のある方はこの本をお読みいただきたい。

学校教育法

第17条 第1項
「保護者は、子の満6歳に達した日の翌日以後における最初の学年の初めから、満12歳に達した日の属する学年の終わりまで、これを小学校に就学させる義務を負う」(一部省略あり)

ここでいう「学年の初め」というのは、4月1日である。
つまり「4月1日が満6歳に達した日の翌日以後」になればいいと書いてある。
では3月31日までに誕生していればいいというように理解できる。
そうすれば4月1日誕生の子の入学は次の年になるのでは?
「子の満6歳に達した日」とは?

年齢計算ニ関する法律(1902年)

この法律は1902年だから明治35年の古い法律だ。

1.年齢ハ出生ノ日ヨリ之ヲ起算ス
2.民法第143条「暦による計算」ノ規定は年齢ノ計算ニ之ヲ準用ス
(以下略)

第1項は「年齢の計算は生まれた日を1日目とする」ということ。
第2項は「民法第143条の規定を当てはめる」ということ。
ではその民法とは?

民法第143条(暦による期間の計算)

1.週、月又は年によって期間を定めたときは、その期間は、暦に従って計算する。
2.週、月又は年の初めから期間を計算しないときは、その期間は、最後の週、月又は年においてその起算日に応答する日の前日に満了する。ただし、月又は年によって期間を定めた場合において、最後の月に応答する日がないときは、その月の末日に満了する。

なんともややこしい。1回読んでも私にはさっと理解できなかった。

まず第1項は、「月数によって期間を定めたときは、大の月(31日)・小の月(30日や28日、29日)があっても、日数に関係なく月単位でカウントする」ということ。また「年単位で考えた時、うるう年があっても1年と数える」ということだ。

第2項は、週や月、年の初めからスタートしない期間を考えた時、たとえば「起算日を9月20日として3ヶ月後の期間満了日は、3ヶ月後の12月20日の前日の12月19日」になるということ。
なるほどそれはそうだな、と納得できた。

4月1日生まれの子どもの年齢は?

ではもとに戻って「4月1日生まれの子どもの年齢」について考えてみよう。

民法などの条項に合わせて考えると、

4月1日生まれの子どもの年齢は、4月1日を起算日として、次の年の応当する日である翌年4月1日の前日の3月31日が終了し時点で1つふえる」ということになる。

ここからが肝心なところ。

3月31日が終了した時点とは、「3月31日24時00分」のこと。
4月1日の0時00分ではない。

両者は全く同じ時点だが、法律上では3月31日のうちだと規定しているのだ。

このような法律によって、

4月1日生まれの子どもは、3月31日24時00分に満6歳になるので、
次の日の4月1日から始まる学年の1年生として小学校に入学することになる。

早生まれの子とは、誕生日が「1月1日から3月31日まで」ではなくて、「1月1日から4月1日」までの子どものことをいうことがわかった。
通常の感覚と少し違うが、それはここで説明した法律がもとになっているのだ。

以上の説明は、「仰げは尊し和菓子のON」を大いに参考させてもらった。このほかに世界的に見て4月始まりの学校は日本以外にあるのか、などの興味ある話題が28にわたって解説されている。参考文献や参考になるサイトの紹介もあり楽しめる本だった。