点字と江戸川乱歩とビブリア古書堂①

ビブリア古書堂の事件手帖と二銭銅貨

点字の研修会で、昨年11月に京都ライトハウスあけぼのホールで行われた講演会のことをきいた。講師の岸博美さん(京都府立盲学校)の話を聞いた人の資料を見せてもらった。

点字について学習中の私だが、「直接講演のテーマではありませんが」とことわって最近のニュースとしていくつか紹介された話のなかで「ビブリア古書堂の事件手帖」の話が私の関心を引いた。

点字の世界ではよく知られたことらしく、江戸川乱歩の作品「二銭銅貨」は「点字」を扱ったものとして有名らしい。

岸さんの話によると、「ビブリア古書堂の事件手帖」第4巻でこの江戸川乱歩の「二銭銅貨」が取り上げられていて、その本のなかで「初版本の点字の間違いを江戸川乱歩が訂正をした」ということが書かれているということだった。
私はこの「ビブリア古書堂の事件手帖」という本があることは知っていたが、読んだことはなかったのでいい機会なので読んでみた。(面白かったので最終巻の7巻まで読んだ)
岸さんの話では、間違ったままで今も出版されている文庫本がある、ということなので、私も図書館などで借りて調べてみた。

「ビブリア古書堂の事件手帖」の事件の展開はここでは紹介せずに、点字をつかった暗号だけについて紹介したい。

初版でどんな間違いを江戸川乱歩がしたのか、その初版本をもとに文庫本にしているのが岩波書店の「江戸川乱歩短編集」(2008年8月19日第1刷発行)。
編集付記として、
「本書は雑誌初出の本文を底本とし、平凡社版『江戸川乱歩全集』第1巻〜第8巻(昭和6〜7年)と校合した。初出は次の通りである」と書いてある。そして「二銭銅貨」については、

「二銭銅貨」 大正12年4月号『新青年』
と記されている。

「ビブリア古書堂の事件手帖」では、
次のような説明がある。
「・・・最初に発表された時、拗音の点字記号を間違えていたのです。戦後、桃源社版の全集でようやく訂正されました。」

まず最初に江戸川乱歩の書いた「二銭銅貨」にある、暗号としての点字記号について説明しておこう。

暗号文「陀、無弥仏、南無弥仏、阿陀仏、・・・・」は、南無阿弥陀仏の6文字を使って書かれている。この6文字が6点点字をつかって暗号文になっている、というのがこの「二銭銅貨」のポイントである。
点字は縦3個、2列の6つの◯で作られる。
6つの◯を、左上から1,2,3と番号を打ち、右に移って上から4,5,6と番号をつける。こうして1〜6の番号でどの点か伝えることができる。
たとえば最初の「陀、無弥仏、南無弥仏」は、6つの丸に左側から縦に南無阿弥陀仏と文字を置いてみると、「陀」は点字の5の点、「無弥仏」は点字の2,4,6の点になる。「南無弥仏」は点字の1,2,4,6の点となり、実際に点字にすると下の図のようになる。

最初の5の点は「濁音符」であり、次にある言葉が濁音であることを示している。この点字を読むと、「ゴ」「ケ」となる

そうしてこの暗号文を点字にして読んでみると、
「ゴケンチョーショージキドーカラオモチャノサツヲウケトレウケトリニンノナハダイコクヤショーテン」となる。その意味は、
「五軒町の正直堂からおもちゃの札を受け取れ、受取人の名は、大黒屋商店」。

実際に点字で書く場合は、分かち書きをするのでこんなに詰めて書かない。また「〜は」は、読むときのように「わ」(3の点だけ)と点字では書く。
正確な点字文ではなく、暗号として点字を使っているので、多少の疑問点は無視するとして、無視できないのは「拗音(ようおん)」の書き方だ。

拗音(ようおん)というのは、「シャ、シュ、ショ」「チャ、チュ、チョ」と発音する音のこと。小さい「ャ、ュ、ョ」を使って表される音だ。
点字では下のように書く。

ローマ字でチャ、チュ、チョ、シャ、シュ、ショを書くと
tya ,tyu  tyo, sya, syu, syo 
となる。
yの部分を拗音を表す記号と考えて、4の点でそれを表す。残っている
ta, tu, to, sa, su, so  
は、「タ、ツ、ト、サ、ス、ソ」であり、それをそのまま点字にする。
そうしてできたのが、上の拗音の点字。点字の拗音表記は、点字二つ分を使って一つの言葉をあらわしている。濁音が「5の点+濁音にする音」と同じように。
点字入力の方法は、日本語をローマ字で表記することをうまく使っている。

このことをふまえて、岩波文庫の「江戸川乱歩短編集」の「二銭銅貨」にでている暗号文の点字表記のところを見てみよう。

これが岩波文庫のある「二銭銅貨」の点字の部分を私が写し取ったもの。
星印の部分には「濁音符」という言葉が書かれている。また*印には「拗音符」という文字が書かれている。小さくてかけなかったので星印と*印で代行している。
拗音の「チョ」「ショ」「チャ」の部分にマーカーで記しておいた。

本文の暗号文を写したものが左である。

これを見ると、江戸川乱歩は点字の拗音は、「小さいョ」という意味で「拗音符+ヨ」「拗音符+ヤ」と書くと思ったようだ。
チョ→チ+拗音符(4の点)+ヨ
ショ→シ+拗音符(4の点)+ヨ
チャ→チ+拗音符(4の点)+ヤ
と考えて暗号文の点字を書いたように思われる。

「ビブリア古書堂の事件手帖」には次のような図が書かれている。

この図で江戸川乱歩の「拗音」の間違いがよくわかると思う。
戦後版の点字は正確な点字の拗音が書かれている。

この「二銭銅貨」という作品が書かれたのは大正12年(1923年)。
石川倉次が考案した点字が学校で使われた最初の年が1890年(明治23年)。
点字が官報に公表されたのが1901年(明治34年)
点字新聞が発行された最初の年が1922年(大正11年)。
点字がまだまだ一般化しない(今もそうだが)時代に、点字を取り上げて作品にした江戸川乱歩の先見の明はすばらしいと思う。

しかし、戦後に訂正されたはずのものが、どうして今も訂正されないままの版が出版されるのだろうかという疑問が残る。
この岩波文庫以外にも私が手にした他の出版社の文庫本については、次回に書くことにする。

 

 

 

 

 

アメリカ東海岸 「若草物語」と「あしながおじさん」の旅 20

四日目 ブロードウェイのミュージカル

私たちの乗った観光バス。ビルに写り込んでいるのをパチリ。

ロックフェラー・センターをバックに何かフィギアのようなものが。これは風船でできたバルーン人形。

左上の写真はロックフェラー・センター。走っているバスから撮影。5番街から6番街にかけてあるビル。259m、70階建て。夜の観光スポットでこのビルが再登場する。
右上の写真は、ニューヨークの二日間滞在した
NEW YORK MARIOTT MARQUIS 
(ニューヨーク マリオット マーキス)
マンハッタンのどまんなか。ブロードウェイのすぐそば。
まわりには沢山のシアターがあった。
人通りも大変多い。

このホテルのロビーは8階。1階はエレベータールームになっている。

写真の真ん中にあるボタンで自分の行きたい階を押すと、どのエレベーターに乗ればいいかをA〜Pまでのアルファベットで知らせてくれる。そのエレベーターを乗ればいいということで、初めての経験だった。

その案内図と操作方法が点字で説明されていた。

各フロアも同じ仕組みになっている。
(写真はKのエレベーターとボタン)

マリオットは点字が表記されていることで、私の印象に強く残っている。
中国で泊まったホテルでもマリオットホテルだけに点字表記があった。
このアメリカの旅で、点字を見たのはこのマリオットホテルだけだった。
道路の点字ブロックは、私の見た限りはどの街にもなかった。

夜はオプションでミュージカルに行く。私たちは松本侑子先生と一緒に「アラジン」を観劇。米倉涼子の「シカゴ」に行った人、「オペラ座の怪人」に行った人もいた。

ここはニュー・アムステルダム・シアター。これが本場のミュージカル劇場なんだ。クラシックで華やかで落ち着いている。

左からアラジンのTelly Leung、ジニーのMajor Attaway、そしてジャスミンのCountney Reed.(当日のパンフレットより)。 私たちの見た時はジャスミンはTia Altinayであった。
ジニーの踊りの激しいこと。ジニーがすごい、ということは見る前から聞いていたが、聞きしに勝るとはこのこと。「大丈夫?あんなにキレキレのダンスを長時間おどって、倒れない?」と心配するほど。これが本場のダンス、ミュージカルと納得するしかない。

松本先生の話によると、「日本でも見ましたが、歌もダンスも衣装も全く同じでした。今日の舞台を見ると、アメリカでは、役者は白人ではなくて、ほとんどがアラブ系に見える人たちで、原作に沿っていて、素晴らしいですね」

ミュージカルが終わって外に出ようとすると、出口(入口)にアラジンの魔法のランプが置かれていた。開始のときには見なかったから、終了の時に置いたのだろう。これこそが観劇記念の撮影ポイント。
沢山の人がカメラ、スマホをもって写真撮影の順番を待っている。だれもが魔法のランプと一緒に写真をとりたいのだなあ。

ニュー・アムステルダム劇場を出てホテルまで歩いて帰る。クリスマスや大晦日の心斎橋や道頓堀を歩いているような光と人の波。

ニューヨーク・マンハッタン、ブロードウェイの夜は更けていく。

 

 

ドイツグリム紀行7(3日目)

マールブルクにあった「点字」

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朝食はヘルシーに。ヨーグルトと果物をメインにする。
朝食の後、まだ時間があるので、昨日の夕方に行ったスーパーマーケットへ朝の散歩に出る。

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これは?
そう、日本で言う点字ブロック。日本ではほとんど黄色だが、ここマールブルクではグレー。

現地ガイドさんによると、マールブルク大学はドイツの中でも、視覚障害者、目の不自由な人で、大学での勉強を望んでいる人たちを受け入れていることで有名な大学なのだ。

昨日、マールブルク大学の周辺を歩いたときも、白杖を持った人を何人か見た。マールブルクの人たちはどんな対応をしているのか興味があった。見た限りでは白杖を持った人には必ずだれか一人がつきそっていた。ボランティアの人たちなのか、たまたま通りすがりの人が手助けをしているのか、それはわからなかったが、誰かがついて歩いている。これは日本と大きく違うことだった。

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交差点には通学だろうか、自転車とヘルメットの子どもたち。真ん中にある信号機には視覚障害者に青信号になったことを振動で伝える装置がついていた。日本で言う「盲人用の信号機」だった。

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自転車専用道路の印。大学の街だからだろうか、結構自転車が利用されている。

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スーパーマーケットには学生さんらしい人がパンを買いに来ている。朝食かな?ランチのパンかな?

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日本のカップヌードルがある。日本からの直輸入?カップヌードル1個が1.1ユーロだから学生さんには人気なのかも。(1ユーロ115円だとすると130円ぐらい。日本より安いかな)

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土地の高低差の大きい町なので、高いところに行くためのエレベーターがある。
丁度このホテルの正面に上の写真のようなエレベーターがあった。
電気の付いている部分がエレベーターの入り口。

垂直移動をするのは、左のポルトガルで撮った写真、リスボンのカルモのリフトと同じだ。
このエレベーターに乗って、上の町に行くと、そこはマールブルク大学の周辺になっている。
スーパーマーケットまで散歩をすませたあと、このエレベーターに乗って上の町を見学することにした。

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ホテルからエレベーターまでの横断歩道についていた信号機は、日本で言うなら「盲人用の信号機」。振動で青信号になったことを知らせる。
三枚目の写真の交差点で見た信号機もこれと同じもの。

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エレベーターの中のボタン。目の不自由な人が触ってわかるように、立体的なボタンになっている。点字もついている。

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エレベーターで上った町の通りに本屋さんがあった。あれ?これは? どうも点字に関係するものが並んでいるようだ。

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これは点字タイプライターだ。 こんな種類のタイプライターを見たことがなかった。

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点字本の現物も置いてある。
日本流でいうと点字の50音図がある。日本に帰って調べてみると、ABC…のアルファベットは日本で使っている英字点字と同じ配置だった。数字も万国共通のようだ。
ドイツ語のウムラウトの説明もある。なるほど、点字はその国の文字に合わせて作られていることがわかる。
店の中に入ってもっと詳しく見たかったが、開店前の時間だった。
時間を待ちたいのだが、9時に集合出発なのでできなかった、残念。

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ホテルに向かって、今度はエレベーターを使わずに坂道を降りていくと、大学の建物の一部らしい公園のような広場に出る。 そこには馬のレリーフと、なんと点字の本が金属モニュメントとして幾つか並べてあった。 img_3299 img_3300

 

あぁ、ドイツ語が読めない、ドイツ語の点字が読めない。

日本に帰ってから調べてみると、 上の本は、「Emil und die Detektiv 」 
ケストナーの「エミールと探偵たち」 。
そして下の本は、「Die Sterntaler」  グリム童話の「星の銀貨」だった。

ああ、そこに日本語による掲示板があったら、とどんなに思ったことか。

ガイドさんや松本侑子さんがおられたら、いろんな説明が聞けたのに・・・・

ホテルに帰り、午前9時。バスは「赤ずきん」ゆかりの地に向けて出発する。

 

 

 

 

 

青島・蘇州の旅 15

雨の蘇州見学 その4 松鶴楼(ソンホーロー)

松鶴楼めざすは松鶴楼というレストラン。 名前からして何か歴史がありそう。
蘇州の旧市街地のほぼ真ん中にある。

松鶴楼1左の写真が松鶴楼。
私のカメラには写っていなかったので、「上海ネットナビ」というホームページからとったもの。
松鶴楼(ソンホーロー)の歴史は古く、清の時代にさかのぼるという。1757年が創業で、乾隆帝が蘇州に訪れた時にこの松鶴楼でここの名物料理を食べたことが有名になっているそうだ。その名物料理とはどんなものだったのだろう。

http://www.shanghainavi.com/food/164/
夕食までにはまだ時間があったのでしばらくこの辺りを散歩した。

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近くにあったデパート。お客さんの姿があまり見えない。せっかくバーゲンをしているのに、店員さんが手持ち無沙汰な様子だった。

IMG_1352松鶴楼の前のお店では、映画のような中国服を着た二人の店員さんが、なにか出し物の用意をしているようだ。大道芸かな?と期待したが、準備が長くて私が見ているいる間にははじまらなかった。

IMG_1351喫茶店を探す。見つけたのが韓国系の喫茶店、COSTA COFFEE だった。

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IMG_1355中は日本でよくある喫茶店と同じ。
ひさびさ喫茶店でコーヒーを飲む。
地図を出して、このお店はどの辺りにあるのかを若い店員さんに聞く。英語で聞くと、意味はわかったようで指で示してくれた。お客さんにニコッとしてくれたらいいのになあ。

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最後の写真の料理がこの松鶴楼の名物料理。松鼠桂魚 (ソンシューグイユゥ)」 。

ネットで調べてみると、スズキに似た淡水魚の “ 甘酢あんかけ ” のような料理。尾びれを残し、背骨を取り、皮をクルリと外側にまく。白身にサイノメの切込みを入れて形をつくってこんがり揚げたものに甘酢あんをかけるという手間をかけた料理。
 松鼠というのは、中国語でリスということで、形がリスに似ているからということらしいが私にはよくわからない。 

IMG_1364この日には蘇州大学で日本語講師をしている人、していた人、また違う大学で日本語を教えている人が集まった。もちろんすべて日本人で、大阪の小中学校、高校で先生をしていた人たち。退職して、中国で日本語のネイティブとして日本語を教えている人たち。みんな元気そうだった。

左の写真は日本の高校の先生だった人。蘇州で写真のような服をあつらえて蘇州大学の教室に持って行くと、学生たちが着せてくれたそうだ。翌日大学に行くと会う人会う人が「ステキな服ですね」と声をかけてきてびっくりしたと話してくれた。学生たちが携帯でとった写真が1日で大学中に広まっていたということらしい。蘇州大学生の気質や情報化社会の様子が伝わってきておもしろい話だった。

 
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蘇州でのホテル、マリオットホテルの夜と朝の全景。
このマリオットホテルで「点字」を発見した。

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エレベーターの中のボタン。数字1,2,3,、、の下に点字の記号で1,2,3、と書かれている。数字は万国共通のようだ。

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こちらはアルファベットでENとCLと書いてあるが、その下の点字もアルファベットのENとCLを表している。アルファベットの表示も万国共通だ。

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左の写真は、上と下の表示ボタンの下向きの部分を拡大したもの。

この点字は、点字アルファベットのDOWNでもないし、もちろん日本語点字の「下」でもない。
なんて書いてあるのか読めない。中国語の点字で「下へ行くためのボタン」の意味を表しているのだろう。

点字は各国で使われていて、点字で表している文字はその国によって定められている。
日本語の点字が読めるからといって、世界中の点字が読めるわけではない。英語の文字を表す点字とフランス語の文字を表す点字は、同じ点の配置でも読みは違う。ここは中国なので、数字やアルファベットは万国共通の点字で表すことができるが、中国語の言葉を表す点字をここでは使っているのだろうと想像される。

点字ブロック1中国での障がいを持った人への教育はどうなっているのだろう。それがこの訪中でわかればと思っていた。
夕食の時に、大学で教えている先生に、中国の障がいを持った子どもたちへの教育を聞いてみた。大学ではほとんど取り組まれていないそうだ。障がいを持った子どもの大学入学に努力をしたり、障がいをもった大人が教員として指導することも、その先生はほとんど聞かないと言っていた。

点字ブロック2

中国では歩道の点字ブロックを見ることもあり、ある程度のバリアフリーの政策は進んでいる様子は伺えた。
また中国では点字の本は多く出版されているという情報も聞いていたが、私がこの日までに「点字」を見たのはこのマリオットホテルが初めて。
これまで見学した施設やトイレ表示には、私が見た限りは「点字」はなかった。
アメリカ資本のマリオットホテルだからこそ、視覚障害の人たちへの配慮ができているのかもしれない。

さて、明日は蘇州大学の訪問。日本語を学ぶ学生たちって、どんな子どもたちなのだろう。興味が湧いてくる。

 

 

 

見えない、見えにくいってどういうこと?

IMG_20160406_0002図書館で、左のような案内を見つけた。

大人のための
「触って」「聞いて」
楽しむ、「わかる!」体験

とある。
内容としては、
◯見えない・見えにくいってどういうこと?
◯点で描く絵って? 点に「触る」体験
◯伝える・伝わる「読み」の体験
◯「点訳」・「音訳」ボランティアについて

とあった。以前から点字に興味があったので、この体験講座に行ってみることにした。

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場所は「堺市立健康福祉プラザ」にある「視覚・聴覚障害者センタ−」。このセンターは福祉プラザの二階にある。

建物はJRの「百舌鳥」と「上野芝」の中間ぐらい。
大仙公園の西はし、近くに履中陵古墳がある。
駐車場が完備しているので車で行くことができた。
上野芝はかつてよく行った場所だが、すっかり変わっていた。

私たちの参加する体験講座は三階にある大研修室で行われた。

私自身はこのような視覚障害に関わっての研修会に参加するのはほぼ初めてといっていい。私を含めて七人の参加で、私以外はみな女性だった。講師の人たちもすべて女性だった。

私が体験したことを簡単に紹介する。詳しい内容はぜひとも自分で体験を。

体験その1 体内時間

目をつむって10秒を数えてだれが一番正解に近いか、というゲームをした経験がある人は多いだろう。ここは48秒からはじまった。
私は正解から20秒近く長かった。
続いて1分18秒。一番最初に手を上げた人と最後の人の間には30秒近くの差が出てきた。
最後に15秒。これはほぼみんな接近していた、と講師の人は言う。
ここでは、「一人ひとりの体内時計が違う」こと、そして「時間が長いほどその誤差が大きくなる」ということ。
つまり目の不自由な人にとって「ちよっとここでまっていて」という曖昧な表現は、時間が長ければ長いほど不安を与えるということを体験する内容だった。

体験その2 逆さま言葉

続いての体験は、講師の人が「逆さまに言った言葉」を読み取るもの。
たとえば、「ずんれとくたんこ」。
「うん?、えっ?」と思っているうちに正解を出す人が。
「コンタクトレンズ」
人間の獲得する情報は80%は視覚によると言う説明が。
「さんいちよんろく」
これも「えっ?、なに?」と思っていたら、
「ろくよんいちさん」「6413」という数字のこと。
数字も反対に読まれると、とっさにはわからない。
耳からだけの情報は、言う方も聞く方も訓練がいることを実感。

体験その3 視野狭窄メガネ

このメガネを掛けると、視野狭窄を体験できるというもの。
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上の写真は私が家に帰ったから作ったもの。
写真のように片方しか見えず、しかも見える方の視野は極端に狭まって見える。ごく一部しか見えない。ここで二人ペアでのゲームをする。
一人がある単語を違う言葉で説明する。
たとえば「キャベツ」なら、「野菜」「春」「緑」「せんぎり」など。
上の視野狭窄のメガネを掛けた人がその言葉から連想するものを言う。「キャベツ」という正解が出からOKの合図。合図が出たらメガネを掛けたまま部屋を出て、廊下の机の上の並べてある解答用紙のなかから、自分のものを探しだす。というもの。
視野の狭い状態で書かれた文字を読み取ることは思った以上に難しい。しかも紙には大きな字で書いてあったり、小さな字て端に書かれてあったり、字もぐねぐねと曲がっていたり、おまけに「きゃべつ」「キャベッツ」などと間違いやすいものが紛れていたりと、悪戦苦闘する人もいる。
「声をかけられて声のする方を向いて、自分の視野に入った時は認識できても、その人が突然座ったりすると、もうどこにいるかわからなくなる」
「受付用紙に自分の名前を書くことができるのを見て、あら目が見えないと言っていたのに見えるのね、と不審がられる人もいる」
という説明を聞いて、自分が見える通りに人も見えているという思い込みに気付かされた。

体験その4 アイマスク体験

アイマスク体験というのはよく体験講座でおこなわれているもので知っている人も多いと思う。
私が学んだのは、視覚障害の人でなにか困った様子をしているのを見て、声をかける時は、離れたところから近づきながら「何かお困りですか」などと声をかける方がいいということ。
突然自分の目の前で、知らない声が話しかけてきたという違和感や恐怖感を取り除くため。なるほどと思う。

体験その5 ブラックボックスの中は

両手が入るブラックボックスがある。その中に一つの物体が入っている。触ってみて入っているものをできるだけ詳しくことばで説明する。そしてその説明をメモに書いておく。
ブラックボックスに他の物をいれて複数にして、違う人がメモを聞きながら複数入っている物から、最初に入っていたものをあてる、と言うゲーム。

テレビで見るようなどっきりものかな?と思っていたら、私が触ったものは何か小さな人形か複雑な形のものなのでびっくり。触っていても見たことがないようなものなのでうまく説明できない。全体の大きさ、でっぱりぐあい、凹んでいるところなどを説明しても、実際のものが何かわかっていないので説明も自信がなくなってくる。

私が触ったものは、鯉のぼりの上に金太郎が立っているような小さな人形だった。見たらすぐにわかるが、手の感触でそれを説明するのは本当にむずかしい。

体験その6 点字に触ってみる

アイマスクをして、実際に使われている点字に触れてみるというもの。

触ってみると、「こんなにちいさいものか?!」とおどろく。
目が見えず、指先だけに神経を集中していると、頭がくらくらしてくる。

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上の二枚の資料は点字一覧表の一部。
初めて知ったことは、「点字は裏返した状態で書く」ということ。
「右から左へ」「裏返して」ということはまったくしらなかった。
裏から紙を押して凹みをつくり、ひっくり返すと表に凸の文字が浮かび上がるのだ。そうすると左から右へと、私たちが活字を読むように点字が読めるようになる、なるほどなあ、点字を目にする機会は多くなったが、点字を打つところは想像したことがなかった。

体験その7 ロガトム表を読んでみよう

電話交換士さんが発声練習に使う「ロガトム表」をつかって、よく聞く、よく話すことを体験するというもの。

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ロガトム表には全く意味のない二つの言葉がならんでいる。

たとえばAには、
べーぽー
とーびゅー
ちゅーぺー
つーじゃー
しょーぱー
ぎーすー

の6文字が並んでいる。

これを参加者が順に読んで、それを聞き取って紙に書いていく。
正しく聞き取れてものはいくつあるか調べてみるというもの。

このことで、

「正しく聞き取る」だけでなく、「正しく聞き取りやすいように発音すること」の大切さに気づというものだった。

人にわかってもらうように話す、発音することのむずかしいこと。
人の前で話す機会の多い人には、このロガトム表の存在を知ってほしいと思った。

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午前10時から、お昼休みをはさんで、午後3時までの体験講座だった。
この体験講座の最後には、「点訳」「音訳」の紹介があった。

視覚障害者の人にとって大切な点字、そして「音訳」された本や資料。その多くがボランティアによって支えられている。
何か自分でできるものはあるかなあ、と考えさせられた体験講座だった。