思考実験ビギナーズ

図書館で見つけた本。

「思考実験」とは面白そうだ。一流の考え方が身につく、というタイトルもなんとなく手を伸ばしたくなる本だ。
表紙に「子どもの考える力を伸ばすイラストブック」とあるように、挿し絵がいっぱいの本で、確かに子ども向けに書かれた本だ。
しかし内容は大人が読んでも考えさられることがたくさん書かれている。

調べてみると作者の「北村良子」さんは、大人向けの「思考実験の本」をだされていた。

 

目次にあるように、十個のテーマが説明されている。
「アキレスと亀」のようによく知られているものもあった。

曽呂利新左衛門の問

その中で「数の不思議 一粒のお米」は、曽呂利新左衛門の話だ。
一日に一粒のお米、二日目はその倍の二粒、三日目は二粒の倍の4粒、四日目は4粒の倍の8粒と増えていくと、100日後には何粒になっているか、というよく知られた話。膨大な数になることは知っていたが、実際に自分で計算したことはなかったので、エクセルを使って計算してみた。

縦軸に日、横軸に「その日にもらう米粒の数」「これまでの合計の米粒の数」「これまでの米粒の重さの合計」をとっている。
「重さの合計」というのは、「お米5万粒で約1キログラム」という計算をして三桁の有効数字であらわしている。

10日目にもらう米は「512粒」、合計は「1023粒」。
20日目にもらう米は「52万4288粒」、合計は「104万8575粒」、重さは21キログラム。
30日めにもらう米は「5億3687万912粒」、合計は「10奥7374万1823粒」、重さは「2万1500キログラム」。
40日めにもらう米は「5497億5581万3888粒」、合計は「1京995億1162万7775粒」、重さは「2200万キログラム=22000トン」。
50日めにもらう米は、「562京9499億5342万1312粒」、合計は
「1125京8990億684万2620粒」、重さは2250万トン!
現在の日本の米の生産量は年間に800万トンといわれているから、約3年分の生産量に近い量になる。

100日めを見てみよう。
重さにして約254垓(がい)トン。全く想像できない重さ。
地球の重さは約60垓トン、と言われている。
なんと地球4個分の重さになってしまう。
一粒が二粒、二粒が四粒、四粒が八粒・・・となんと100回数えていくと地球の重さより重い米の量になるというわけだ。100回という数字が大きいととらえるか、わずか100回ととらえるか、人によって違うと思う。しかし二倍二倍と百回するだけでとてつもない大きな数になる!なかなか実感できないが、計算してみると確かにそうなる。
私はエクセルというソフトを使ったけれど、江戸時代はそろばんで計算していたにちがいない。大変な労力と集中力だと思う。私はそのことに感嘆を覚える。

この本で私が興味を覚えた問題は下の「5億年ボタン」。

5億年ボタン

「ボタンを押すと、あなたの体は別の次元にワープします。そこは何もない世界で、そこでのあなたは年も取りませんし、眠りませんし、食べません。意識もずっとはっきりしていますし、気がおかしくなることも死ぬこともありません」

「そこで何をするの?」

「何もしません。」

「何もしないで100万円もの大金がもらえるの?」

「ただ生きていればいいのです。ただしその期間は・・・5億年です」

さあ、あなたはこの「5億年ボタンをおして100万円もらいますか?」
というチャレンジ問題にどう答えるか。

こんなふうに、頭を使っていろんなケースを考えようという本だ。

作者は「おわりに」にこんなことを書いている。

「いかがでしたか?
10の思考実験はたのしめたでしょうか。
中には難しかったものもあったでしょう。だからこそ、それぞれの思考実験に挑戦していくことで、あなたは着実に、自分の意見をもつ大切さと、自分の力で考え抜くスキルを学んだはずです。
 考える力は、学校でも、社会でも、ずっと役に立つ素敵な味方になってくれます。あなたの頭の中は…たくさんの可能性があるのです。
 この本を通して、「考える」って楽しいことなんだと、思っていただけたら幸いです。                             北村 良子」

イラストがたっぷりで、大変読みやすい本だった。もちろん考える力をつける第一歩になるだろうなあ、とも思える本だった。北村さんの大人向けの本も見てみようかな、という気になっている。

 

 

ケプラーの第3法則

ケプラー1

「はやぶさ2」の打ち上げが迫ってきた。太陽系探査にとって必要なのはニュートンの発見した万有引力の法則。
そしてその前段階を作ったのがヨハネス・ケプラー(Johannes Kepler、1571年12月27日 – 1630年11月15日)。
ドイツの天文学者。(写真はウィキペディアより)
ケプラーは義務教育で習うケプラーの法則でよく知られている。
ケプラーの法則というのは、

1.惑星は太陽を一つの焦点とする楕円軌道を描く。

2.太陽から一つの惑星へ引いた動径は、等しい時間に等しい面積を描く。すなわち「面積速度」が一定である。

3.公転周期の2乗は、軌道の長半径の3乗に比例する。

法則の1と2はなんとなく受け入れやすい。でも三つ目の法則は2乗のものが3乗のものに比例するというのはなんとなくすっきりしなかったのが私の学生時代の印象。

 ケブラーはティコ・ブラーエの詳細な観測結果を受け継ぎ、そのデーターを元に法則を発見したと言われている。

どんなデーターを元にしたのだろう。
イメージをつかむために理科年表を見た。

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桁数の大きな数字が並んでいる。少しわかりにくいので見やすく作りなおしてみた。

IMG_20141118_0001

 この数字を見て、
軌道長半径の3乗と軌道半径の2乗が比例しているなんて、私には思いもつかないし、本当に比例しているのかな、とおもってしまう。 

ケプラーがどのような経過と思考過程を経てこの三つの法則にたどりついたのかは、今の私には知識がない。
現在の天文学では、ニュートンの万有引力の法則にもとづいて計算式が導かれて、証明できることなのだろう。
私はもう少し、わかりやすい説明の仕方がないものかと思った。
本を見ている中で「対数グラフ」を使って説明しているのがあった。これはいい方法だと思う。

対数グラフには一つの軸を対数表示した「片対数グラフ」と両方の軸が対数になっている「両対数グラフ」がある。
下の図の左が「両対数グラフ』で右が「片対数グラフ」。

両対数グラフ 片対数グラフ

 

まず片対数グラフを使う例の説明でよく出てくるのが曽呂利新左衛門。
あるとき、曽呂利新左衛門が太閤秀吉から褒美をもらえることになった。

「なんでも好きなものを言っていいぞ」
「たいそうなものは入りません。米粒一粒で結構です」
「何? たった一粒でよいのか」
「いえ、二日目は二倍の二粒。さらに翌日はその倍の4粒、その次の日はその二倍の8粒、と1ヶ月続けていただければいいです」
「よし、あい分かった。簡単な願いじゃのう」

ところがこの願いは最後までいきつかず、途中で秀吉が音を上げたというお話。
はて、30日目が何粒になったのか計算したのが次の表。

IMG_20141118_0006

この表を片対数グラフにかくと見事な直線になる。 IMG_20141118_0005

このように、指数関数は片対数グラフでは直線になる。 逆に言えば、片対数グラフ上で直線になるグラフは指数関数であるとも言える。

次に両対数グラフに前に上げた「軌道長半径」と「公転周期」の値を記入してみよう。
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 これも見事に直線上にそれぞれの値がのってくる。 べき関数になることが予想される。 実際に公転周期の2乗、軌道長半径の3乗を計算してグラフに描いてみると、

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原点を通る直線となり、公転周期の2乗が長半径の3乗に比例していることがわかる。

対数グラフに描くことにより、ケプラーの第3法則がイメージとしてやっと腑に落ちた。

グラフに描くことにより、理解しやすくなる、イメージしやすくなるという例の一つである。