古事記を英語で読む18

The Goddess' Grandson 3

これまでのことを振り返ってみると、アメノホヒは地上に降りて3年たっても音信不通、次に送ったアメノワカヒコは8年間も連絡なし。
おまけに使者として送ったキジを、持っていた弓矢で射殺してしまう。怒ったタカミムスヒはその矢を投げ返すと、アメノワカヒコの胸に刺さって死ぬという結果になった。

アメノワカヒコが死んだあと、彼の両親が高天原から葬儀のためのやってくる。そしてアメノワカヒコの妻であるシタデル姫の兄がアメノワカヒコにそっくりなのに驚愕する。そこから話は別な方にすすむのだが、Enjoy Simple English では省かれているので、ここではこれ以上ふれないことにする。

Amaterasu was very angry.
”Isn’t there a better god to send?”
Then a great warrior god was chosen.
He went down and talked with Okuni-nushi and his children.

*warrior : 戦士

「亦(また)何れの神を遣(つかわ)してば吉(よ)けん」
とアマテラスは神々に相談する。
最終的にアメノオハハリの神の息子であるタケミカヅチの神に決まる。
タケミカヅチの神とは、イザナキが火の神を切り殺した時、剣のツバについた火の神の血から生まれた神。勢いのある神がいいということになったのだろう。

He went down and talked with Okuni-nushi and his children.

とあるように、タケミカヅチの神はオオクニヌシと話をした。Enjoy Simple English には簡単に書かれているが、橋本治さんの「古事記」をもとに説明を加えると、オオクニヌシは二人の子の意見を聞いてほしいと言っている。

一人目は、「オオクニヌシの神にかわって、その偉い神の御心を聞く役目を持った神」のコトシロヌシの神。彼はオオクニヌシから話を聞いて承知する。

二人目は「力が強く乱暴な神」のタケミナカタの神。
高天原の戦いの神であるタケミカヅチは、タケミナカタと言い争い、信濃の国まで追いかけて屈服させる。

After some discussions and fights, Okuni-nushi finally agreed on giving the land back.

「わたしの息子たちの言ったことに、わたしもしたがいましょう。この葦原の中つ国は、アマテラス大御神のおおせになったように、すべてさしあげます。」(橋本治さんの『古事記』より)

Amaterasu was very happy to hear this.
She told her oldest son that he could now rule the land below the sky.
But he said,
”I think my son Hikohono-ninigi is right for this job.”

アマテラスはアメノオシホミミに、(地上の国は騒がしいと言って、行くのを嫌がったアマテラスの長男)

「・・・あなたはこれから葦原の中つ国へ天下って、その国をご支配なさい。」
と命ずると、

「・・・わたしは下界へ下るための身支度を整えておりましたのですが、その間に、私には子どもが生まれてしまいました。わたしのお受けする役は、わたしよりもその生まれ出た子にふさわしいと思われます。・・・・」(橋本治さんの『古事記』より)

と言って、自分の子・アマテラスからすれば孫にその役目を負わせようとする。

Amaterasu agreed and gave her grandson three special treasures; a beautiful bead, a mirror and sword.
The bead and mirror had been used to bring Amaterasu out from a cave.
The sword had been found in the eight-headed snake.With these three treasures, Hikohono-ninigi went down to the land below the sky and became the new ruler.

*bead : ビーズ玉(ここでは勾玉)
*sword : 剣,刀

ヒコホノニニギを下界に送ることに同意したアマテラスは、ヒコホノニニギにいわゆる「三種の神器(アマテラスが天岩屋から出るときに使った鏡と勾玉、スサノオが八俣の大蛇から取り出した草薙の剣(くさなぎのつるぎ)」を渡す。
かくして高天原から地上に降りたヒコホノニニギが、地上世界の新しい支配者になる。
この部分は、「国譲り神話(くにゆずりしんわ)」として理解されているところ。
里中満智子さんのマンガにも、
「中国の歴史書『三国志』の『魏書』(ぎしょ)の中の東夷伝(とういでん)・倭人条(わじんじょう)ー俗に言う『魏志倭人伝』には、『二世紀後半に倭国(日本)では大きな内乱があり、女王卑弥呼が治めるようになり乱が収まった』と記されています。・・・それ故に『倭国の大乱』は大和対出雲の戦争である。勝った側の大和朝廷が『力で出雲をねじ伏せたくせに、話し合いで出雲が大和をたてたー』というきれいごとにして古事記に記したのだ。などという説もあります。・・・・・出雲・因幡には大きな勢力があったの事実。政権側と出雲の間には、おそらく色々あったのだろうと察する・・・」と書かれている。

さて、これから地上の世界の新しい支配者となったヒコホノニニギの話がはじまる。

 

 

 

古事記を英語で読む17

The Goddess' Grandson 2

Amaterasu decided to send a different young god, Ameno-wakahiko.
He was given a special bow and arrow and told to go to the land below the sky.

* bow and arrow : 弓矢

「それで、アマテラス大御神はこのアメノワカヒコに、森の中の鹿をよく射止めることのできる天之麻迦古弓(あめのまかこゆみ)と大蛇さえもかんたんに殺すことのできる天の羽々矢(あめのははや)をお与えになりまして、地上の国へとお送りになったのです。(橋本治さんの「古事記」より)

However, as soon as he arrived there, he married one of Okuni-nushi’s daughters and decided to stay there.
Eight years passed without any message from Ameno-wakahiko.

「ところがどうでしょう。地上の葦原の中つ国に降り立つとすぐに、アメノワカヒコは、オオクニヌシの神と宗像(むなかた)の女神とのあいだに生まれた下照姫(したでるひめ)を妻にしてしまったのです。・・・アメノワカヒコは、8年たっても、いっこうに高天原へ連絡をしてこようとはしませんでした。(橋本治さんの「古事記」より)

Amaterasu became tired of waiting, so she sent a spirit bird to the land below the sky.

*spirit bird : 霊鳥(神の使い)

「(アマテラスは)ふたたび高天原の神々を集めておたずねになりました。『・・・たずねる使者を送りたいと思う。その使者にはどの神を送ったら良いだろうか?』」・・・・
オモイカネの神は『鳴女(なきめ)という、キジの精をお遣わしになればよいとおもいます。』(橋本治さんの「古事記」)

When Ameno-wakahiko noticed the bird, he used the bow and arrow to kill it.

The arrow went through the bird’s body and flew high up to the land above the sky.

「・・・サグメは家の中に入ってこうアメノワカヒコに言いました。
『外で鳴いているキジの声には、とても不吉な意味があります。あのキジはすぐに射殺してしまうのがよろしいでしょう』。
アメノワカヒコは、すぐに『そうしよう』と答えました。アメノワカヒコは高天原を出発するときにタカミムスヒの神からいただいた、天のハジ弓と、光を放って飛ぶ天のカク矢とを手に持って出ると、門の桂の木に止まっていたキジを、さっさと射殺してしまったのです。・・・・アメノワカヒコの放った矢は、キジの胸を射抜いて、空高く舞い上がっていきました。」(橋本治さんの「古事記」より)

*ここで出てくるサグメとは天佐具女(あまのさぐめ)と言い、アメノワカヒコにしたがって高天原から一緒に降りてきた占いをする女。天の邪鬼の原型ともいわれている。
おや、高天原から地上の世界に降りてくるときに、サグメのような女が一緒だったとは、橋本治さんの本を読むまでは知らなかった。しかもアマテラスの使者を殺せという、とんでもない人物だった。彼女は一体何を考えていたのだろうと思うが、これはEnjoy Simple English とは関係のない話だ。

Up in the sky, a very important god picked up the arrow and talked to it,
“If Ameno-wakahiko is still helping us, do not kill him.
But if he is not,
then kill him !”
The arrow was sent back to the land below the sky and killed Ameno-wakahiko.

「『もしもアメノワカヒコが命令に背かず忠実で、この矢を悪い神に向けて射ったものであるのなら、この矢よ、アメノワカヒコにあたるた! もしアメノワカヒコに反逆の心があるのなら、アメノワカヒコよ、この矢にあたって、死ね!』そう大声で叫ばれて、タカミムスヒの神は、ナキメを射殺して高天原にまで飛んできたその矢を、力いっぱい地上へと投げ返されたのです。その矢はみごとに、アメノワカヒコの胸に当たりました。」(橋本治さんの「古事記」より)

*おやおや、大変なことになってしまった。このあとの展開は次回へ。

 

 

 

 

 

 

 

古事記を英語で読む16

The Goddess' Grandson 1

Okuni-nushi became the ruler of the land below the sky.
Together with his children, they made it into a wonderful place.
 One of the gods above the sky wasn’t happy.
*make into ; 作り変える

橋本治さんの「古事記」からこのあたりを引用すると、
「出雲を中心として、葦原の中つ国は豊かに栄えていきました。オオクニヌシの神とその子孫の神々の他に、出雲の地には、オオヤマツミの神の娘であるカムオオチ姫とスサノオの命のあいだに生まれた、オオトシの神の一族もたくさんいて、オオクニヌシの神と共に出雲を栄えさせていたからです。
 しかし、これをご不満に思う方もおいでになりました。高天原においでになる、アマテラス大御神でした。」
とある。

It was the sun goddess Amaterasu.
She thought her oldest son Ameno-oshihomimi should rule the land.

橋本治さんの「古事記」の続きを見てみると、
「アマテラス大御神は地上のにぎわいを見ておおせになりました。『・・・・この大切な国は、わたしの子どもでおいでの、アメノオシホミミの命がご支配される国なのだ』
そうしてアマテラス大御神は、ご長男であるアメノオシホミミの命を、地上の国へとお降ろしになることをお決めになったのです。

*さてこのアメノオシホミミという神は、アマテラスとスサノオが天上で互いの持ち物から神を生み出したときの神で、アマテラスの玉飾りをスサノオが噛み砕いたときに生まれた神。しかも第一番目の男神である。
アマテラスに命じられたアメノオシホミミは、天浮橋から地上の世界を見る。

“It is too noisy for me.”

「豊葦原の千秋の長五百秋(ながいおあき)の水穂の国からは、なんだかひどく騒々しい音がきこえる」
・・・そうおっしゃってすぐにおもどりになってしまったのでした。高天原におもどりになったアメノオシホミミの命は下界の騒がしさを母大御神におうったえになって、『なんとかしていただかないと・・・』とお願いになったのです。(橋本治さんの『古事記』より)

*高天原の神々は相談して、アメノオシホミミの命の弟であるアメノホヒ(この神も、アマテラスの玉飾りをスサノオが噛み砕いて生まれた神)に下界におくることになる。

So he sent his brother to Okuni-nushi to tell him to give up his land.
Three years went by, but the brother didn’t return.

Enjoy Simple English では“He sent…” と書かれているが、古事記の原文を読んでみると、彼・アメノオシホミミが弟のアメノホヒを下界におくったのではない。他の神々が相談して決めたことがわかる。

「天安河の河原に八百万の神を 神集(かむつど)へに集(つど)へて・・・・、
是れ何れの神をか使わして言趣(ことむ)けまし 爾(ここ)に思金神(おもひかねのかみ)及(また)八百万の神議(はか)りて 天穂日命(あめのほひのかみ)是(こ)れ遣(つかわ)しむ・・・」

アメノホヒは出雲に行って3年たっても音信不通で高天原に帰ってこない。
それだけ出雲の国が住みやすかったのだろうと想像できる。
でもアマテラスにとっては信じられないこと。自分の子どもを下界の支配者にしようと思っているのに、一人目は「やかましいからイヤ」と言い、その弟は出雲が気に入ったらしくて連絡してこない。
では次はだれを下界に送ろうか。また八百万の神々と相談することになる。