大フィル・新春名曲コンサート

フェスティバルホールで、大阪フィルハーモニー交響楽団の第87回新春名曲コンサートがあった。 たまたまチケットが手に入った。妻の友人が行けなくなったのでそのチケットがまわってきたのだ。折角の機会なので有効活用させていただいた。

淀工のブラスバンドを聞きに行くために、フェスティバルホールには最近毎年行っているが、フルオーケストラ公演に行くことはめったにない。

座席もA席で、1階の前から13列目のほぼ真ん中。なかなか素晴らしい座席でオーケストラが聴ける。

来ている人たちは、思ったより年配の人達が多かった。
土曜日だから若い人たちもいるのではないかと予想していたが、ほぼ私たちと同世代ぐらい。
ブログラムは、

オペラ曲が多い。全部で10曲以上もあるが、どんなふうに進むのだろう。 ソプラノ、アルトの独唱、ギターの独奏もプログラムに書いてある。 盛りだくさんの演奏会だった。

左の写真の人がギター奏者の朴 葵姫さん。英語で書くと Kyuhee Park さん。
会場でもらったアルバムには、「韓国生まれ。日本と韓国で育つ。3歳でギターを始め、荘村清志、福田進一、A・ピエッリ各氏に師事。東京音楽大学を経て、2014年ウィーン国立音楽大学を首席で卒業・・・」とかいてある。素晴らしい経歴の人で、まだまだ若い。

タレガの「アルハンブラ宮殿の思い出」、「禁じられた遊び」のテーマ音楽の「愛のロマンス」を演奏してくれた。
「アルハンブラ宮殿」は、スペインに旅行した時に実際に行ったことがあるだけに、感情移入してきくことができた。
ギター演奏は村治佳織さんがまだ20代前半の頃、演奏会に聞きに行ったことがある。開演前の人のまだあまり入っていない会場で、スタッフの人が「ギターの音は会場の座席のこの位置ぐらいまで伸び上がってきて、おちてくる・・・」などと専門的な話をしていたことを思い出した。フェスティバルホールの音響は素晴らしいそうだから、1本のギターの音が4階の上まで伸び上がっていたに違いない。

左の写真の人がソプラノの幸田浩子さん。
英語で書くと Hiroko Kouda さん。
アルバムの紹介には「東京藝術大学首席卒業。数々の国際コンクールに上位入賞後、欧州の主要歌劇場へ次々とデビュー・・」とこの人も才色兼備な人。
真っ赤なドレスが良く似合い、舞台全体がぱっと明るくなるようなオーラがある。
はずかしながら、私は全くといっていいほどオベラ歌手の皆さんのことは知らない。
映画やテレビで見る外国の貫禄のあるオペラ歌手が私のイメージだったが、そのイメージを根底から覆す印象の人だった。
家で調べてみると、何と大阪・豊中出身の人だった! へえーこんな素晴らしい大阪出身のオペラ歌手がいただなんて、いやいや全くお恥ずかしい限りだ。
歌劇の名場面からのアリアなのだろうが、私は歌劇の題名は知っていてもその内容についてはだめ。情感あふれる歌声に、オペラの場面を想像するが、日本語ではないのでその歌詞の内容がつかめないのが残念。もう少しオペラについて勉強した方がいいな、と思う。歌声と表情と仕草、これがオペラの舞台の歌姫なんだな、と思った。

左の写真の人がテノールの福井 敬さん。英語で書くと Kei Fukui さん。
アルバムの紹介には「・・・他者の追随を許さない輝かしい声。情感あふれる演技で日本を代表するテノールとして活躍・・」とある。
申し訳ない、この人のことも全然知らなかった。
でも歌声は確かに伸びやか、表情たっぷりに歌う姿と声は魅力的だった。これなら私でもオペラを鑑賞に行けるかも、と思わしてくれる歌声だった。
しっかりと両足で舞台に立つ姿は、存在感があった。福井さんがもっと若い時に、その歌声を知っていたらと思う。

途中で20分の休憩。ロビーのカフェで一休みの人も多い。新しいフェスティバルホールをあらためてじっくりと見て回った。

フェスティバルホールの前身である「大阪朝日会館(1925年〜1962年)」の時に付けられたレリーフらしい。右が「シェークスピア」、左が「ベートーヴェン」の像。こんなレリーフがあるなんて、これまで知らなかった。当時の大阪府知事、大阪市長のプレゼントらしい。今の大阪府と大阪市ではまったく考えられないこと。

おもしろそうな角度の被写体があるので、ホール内の写真を撮る。

後半は大阪フィルハーモニー合唱団が加わっての迫力ある演奏だった。
合奏と合唱といえばベートーヴェンの第9ぐらいしか思い浮かばないわたしだが、シベリウスの交響詩「フィンランディア」は以前にレコードを持っていたことがあるが、やっぱり生の迫力は違うなあと思う。量感というか血の通った音楽というのが感じられるような演奏だった。
歌劇「椿姫」、歌劇「トゥーランドット」、歌劇「つばめ」、歌劇「ノートルダム」などの歌劇の曲目がずらり。目も耳も楽しめる演奏だった。

写真は大阪フィルハーモニー交響楽団の拠点である「大阪フィルハーモニー会館」。南海電車の岸里駅ちかくにある。 
*写真は大阪フィルハーモニー交響楽団のホームページによる。
http://www.osaka-phil.com/hall/

いつも電車の中から見ている建物だが、今回の演奏でぐっと「大阪フィルハーモニー交響楽団」が身近に感じられた。
指揮者の円光寺雅彦さんも、テノールの福井さんも言っていたが、少しでも音楽に感心を持って演奏会に来てほしいという気持ちがよくわかった。

アンコール曲は椿姫の「乾杯の歌」の華やかな演奏と歌声。そしてラデッキー行進曲。あれ?この曲は?「ラデッキーよ」と妻が言う。この行進曲に乗せて退場かな?と思わず笑顔になってしまう。

このブログを書いているのは1月14日。
この日は「愛と希望と勇気の日」。
南極観測隊のタロとジロが生きていたことがわかった日。1959年(昭和34年)のこと。私も子ども心に、新聞やラジオで報道され、日本中に喜びの声が湧き上がったことを覚えている。

芸術も人間に愛と希望と勇気を与えてくれると思う。

 

 

2018年初笑い−繁昌亭

1月7日日曜日。
今年も天満宮そばにある繁昌亭で初笑い。

演目は
真田小僧・・・月亭八織(つきていはおり)
鉄砲勇助・・・桂勢朝(かつらせいちょう)
生まれ変わり・・・桂三歩(かつらさんぽ)
尻餅・・・笑福亭仁嬌(しょうふくていにきょう)
中入り
悋気の独楽・・・桂文喬(かつらぶんきょう)
熱血学園・・・桂勢朝(かつらせいちょう)

私は月亭八織さん、桂勢朝さんの落語は聞いたことがなかった。

◯月亭八織さんは名前からわかるように、月亭八方師匠のお弟子さん。関西落語会では20人ほどの女性の落語家がいるそうで、そのうちの1人。
 噺は、小遣いをねだる子どもと父親との掛け合い。子どもの巧みな話し方で、小遣いを父親からどんどん引き出していくとい話だが、どうして「真田小僧」というのかがわからなかった。調べてみると、今日聞いた噺は前半で、後半にその話が出てくる。母親がうちの子どもは知恵があると父親にいうと、「あんなのは知恵者ではない。真田幸村の子どものころは・・・」と真田三代記の一説をしゃべりだす、という展開があり、噺が広がっていく。ネットで「真田小僧」と検索するとヒットするの調べてみるのもおもしろいと思う。

◯桂勢朝さんの落語は初めて聞いた。師匠は桂米朝さん。伊勢市出身なので勢朝という芸名がついたそうだ。歯切れのいい喋り、大きな声、元気いっぱいだ。
鉄砲勇助という日本一の嘘つき名人の噺。北海道の寒さを極端に表現するのだが、それが滑稽無糖というもので、私も子どもの時に何回かラジオで聞いたことがある演目だった。なぜ鉄砲?というのだろう。これも調べてみると、昔の上方の言葉で「鉄砲を言う」というと、「嘘をつく」と言う意味だったそうだ。それで千三(せんみつ・・千に三つしか本当のことを言わない)の勇助が鉄砲勇助、ということらしい。

◯桂三歩さんの「生まれ変わり」は、桂三枝(現在の桂文枝さん)作の創作落語。三歩さんは桂文枝さんのお弟子さんで、噺のまくらで桂三枝師匠への失敗談をよく聞く。今回の「生まれ変わり」は初めて聞く落語だが、おもしろかった。話の展開が、「ああ、桂三枝さんの作品だ・・・」と何となく思えるようなものだったし、桂三歩さんの語り口がぴったりだったからだ。これからも桂三枝さんの創作落語を演じてほしいと思った。

◯笑福亭仁嬌さんの師匠は笑福亭仁鶴さん。桂三歩さんと同じ年。今年で還暦を迎える。芸は歳を重ねるほど味が出るもんだと思わせる語りだった。餅をつく音を丸めた手をもう一方の手でたたいて出すのだが、何回も続けて、同じ音をだすのも練習がいっただろうなあと思いながら見た。最後のおちが「あとの二臼はしろむしで・・・」となるのだが、はて「しろむし・・・白蒸」というのがわかるだろうか? 最近餅つきの風景は見なくなったし、体験しても餅をつくまでの段取りを経験するわけだはないから、「しろむし」という言葉も聞かなくなったと思う。米を蒸したが、まだ餅つきをしていない状態のものだが、正確にわからなくても、噺の流れで何となくわかった人も多かったと思う。

中入りの休憩時間を使って抽選会。桂三歩さんが大活躍。
入り口でもらったパフレットに書かれた抽選番号が169、なんか当たりそうと思ったがまったくのハズレ。二階席の人も当たっていたが、舞台前の人達が多く当たっていて、ちょつと不満。

さて中入り後の演目は、
◯悋気の独楽(りんきのこま)。桂文喬さんの噺はよく聞くので、安心していられる。「悋気の独楽」も何回か聞いたことがある有名な噺。おめかけさんの家から1人帰ってきた丁稚さんの、独楽を回すところが見せ所。「心棒と辛抱」をかけた噺だが、落語は日本語の勉強になるなあ、と思わせる噺。

◯桂勢朝さんの「熱血学園」も創作落語。小佐田定雄さんの作で、何年か前に作ってもらったそうだが、本当に熱血の落語だった。歌あり、雄叫びあり、大きな動きありで、桂勢朝さんも汗びっしょりの演技だった。若い?からできるパフォーマンスだなあ。おちは予想通りだったが、創作落語の面白さは十分に伝わってきた。
幕が閉まる時に、何人もの人がおひねりをもって駆けつけてきたのにびっくり。
熱いファンがいてるんだ。

落語を終わって繁昌亭の前は、落語家さん達が私たちを見送ってくれる。
これが繁昌亭のよいところ。

すぐそばの商店街の居酒屋さんで夕食。
お正月というのに多くの店が開いていた。次の日が祝日だからだろうか。
入った居酒屋さんもほぼ満員。
途中で電気が消えてお店の中は真っ暗、停電だ、どうした?
「ブレイカーを☓☓☓・・」という声が聞こえる。
お店の中のお客さんは慌てることなく、電気がつくのを待っている。
「電気の使いすぎだな」
「電子レンジとトースターを同時に使ったかも」
そうこうしているうちに電気がつく。
停電がうそのように食事が再開される。
2018年はこんな年なのかもしれない。
何か事件があっても、動ずることなく、日常生活が続いていく。

良い年でありますように。

 

 

 

映画「ドリーム HIDDEN FIGURES 」

左は映画のパンフレット。

日本での題名は「ドリーム」だが、原題は「HIDDEN FIGURES」

数字を意味するFIGURESと、
人を表すFIGURES。同じスペルが違う意味を表すというところに映画のタイトルの隠された意味がある。
そして「隠された数字」と「隠されていた人物」というのがこの映画の大きなテーマになっているのだ。

この映画はアカデミー賞3部門ノミネート(作品賞、主演女優賞、脚色賞)、全米興行チャート11週連続トップテン入り、「ラ・ラ・ランド」を超える大人気の映画だそうだ。

ただ日本でよく知られている俳優はケビン・コスナーぐらいなので、アメリカに比べると日本での扱いは大変地味だ。
しかし映画の内容は本当におもしろい。

主人公は数学の天才だった黒人の女性、キャサリン・G・ジョンソンは、10歳で高校へ入学、18歳で数学とフランス語の学位をとり、22歳のときに、人種差別を撤廃したウエスト・ヴァージニア大学の大学院に進んだ初めてのアフリカ系アメリカ人である。あとの二人、ドロシー・ヴォーン、メアリー・ジャクソンも数学や物理学にすばらしい才能を持つ黒人女性である。

パンフレットにある映画の内容を紹介してみる。

「1960年代初頭、アメリカが超大国の威信をかけて推進していた有人宇宙飛行計画を背景にした本作は、その”マーキュリー計画”において、黒人の女性数学者たちが多大な貢献を成し遂げた史実を描き出す。彼女たちは、当時まだ色濃く残っていた人種差別に直面し、職場でさまざまな苦難に見舞われるが、卓越した知性、たゆまない努力、不屈のガッツで次々とハードルを突破。そんな彼女たちの驚くべき道のりを、軽妙なユーモアにくるんで親しみやすく伝え、なおかつ心揺さぶるカタルシスもたらすサクセスストーリー(略)」

NASAの宇宙計画に従事していた黒人女性の数学者たち、何人いたのだろう。 映画の主人公達は3人、それぐらいの人数だったのだろうか?
上の写真は、カタログにある黒人女性がオフィスを移動している場面。30人近くがこのオフィスで働いている。原作本によると、70人以上の黒人女性が計算スタッフとして働いていたという。
コンピューターcomputerは、もともとの意味は計算する人、という意味だった。コペルニクスやガリレオの時代から、計算を専門にする人たちはいた。
この映画では、電子計算機というcomputerが登場する前の時代、人間がcomputerだった時の話だ。

この映画の主人公の3人。
ドロシー・ヴォーンは、黒人女性で組織されている西計算グループのリーダー。
キャサリン・ジョンソンは西計算グループから宇宙船の軌道計算のスタッフに移動。初めての黒人女性としてこのオフィスで働く。
メアリー・ジャクソンは黒人女性で初めてのエンジニアをめざしている。
この3人が黒人女性の社会的地位を高めていく努力と情熱が描かれている。

アメリカ初の人間をのせた宇宙ロケットに起きたトラブル。電子計算機computerの値が信頼できない事態に、呼び出されたのがキャサリン。
実話に基づくエピソードは、鳥肌が立つほど感動的だ。

映画のあらすじは、ネットで調べればわかることなのでここには書かない。
ただ3人が歴史を変え、時代の先端になって、黒人女性の未来を切り開いていった事実を描いた映画で、多くの人に見てもらいたいと思った。
アメリカで、観客動員数がラ・ラ・ランドを超えたというのは、家族連れで映画を見た人が多かったこと、学校からの映画鑑賞も多かったこと、貧しい労働者達がこの映画をこぞって見たことに理由があるらしい。
社会的弱者と云われる人たちに元気と勇気を与える映画なのだろう。

私はキャサリン・G・ジョンソンのことは、この映画を見る前から知っていた。
それはケーブルテレビで「タイムレス」という番組を見て知っていたからだ。第八話で、アポロ宇宙船が月着陸の時にコンピューターの故障がおき、それを修理する時に手助けをするのがキャサリン・G・ジョンソンだった。(実際、キャサリン・ジョンソンはアポロ宇宙船の月着陸のときにもNASAにいて仕事をしている。)
私はこのテレビ番組を見て、NASAで働くコンピューターを操作していた黒人の女性がいたこと、私は知らなかったけれどアメリカの黒人の人たちにとっては有名な女性がいることを初めて知った。(タイムレスはDVDになっていてレンタルできる)。

日本にも同じような女性がいる。

2015年12月7日、日本の金星探査衛星「あかつき」の金星周回軌道投入に成功した。
「あかつき」は2010年に金星周回軌道投入に失敗し、それから5年後に再投入されたわけだが、一度失敗した衛星が再挑戦で成功した例はこれまでにない、といわれていたほどハードルの高かったもの。
この軌道計算をしたのがJAXAの廣瀬史子主任研究員。2年半の間、何万ケースもの軌道計算をくり返し、今回の最適解を見出したという。この12月7日以前だと「あかつき」は金星に落下し、この日をのがすと金星にこれ以上接近できなくなるという、ベストタイミングだったという。写真はJAXAのホームページからで、記者会見で説明している廣瀬さん。

上の写真は原作となった本。
内容はずっしりとしたものだが、大変読みやすい文章だった。原文がそうだったのかもしれないし、訳も違和感なく読むことができた。この本の「おわりに」で、作者のマーゴット・リー・シェタリーはこのように書いている。

「NASAに数学者として勤務した黒人女性の話をすると、多くの人が次のような疑問を抱くようだ。どうして自分はこれまでこの物語を聞いたことがなかったのだろう? 本書のための調査を開始してから5年余りの間に、私は数え切れないほどこの質問を受けてきた。これだけ多くの女性たちが関わり、20世紀の決定的な瞬間に直結する歴史が、これほど長い間脚光を浴びずにきたことに、ほとんどの人が驚きを表した。この物語には、あらゆる人種、民族、性別、年齢、背景の人々の心に響く何かがあるように思う。これは希望の物語だ。我が国の歴史に残るきわめて残酷な現実ー合法化された人種隔離と人種差別ーの中にあっても、実力主義の勝利を証明し、才能と努力次第で誰もが高みをめざすことを許されるべきだと訴えている。」

ニューヨーク・タイムズ・ベストセラーリスト第1位の本。
私は映画を見てこの本を読んだが、その順でよかったと思う。私が知らなかったアメリカの人種隔離と人種差別の歴史、そこでしたたかに闘い抜いてきた黒人女性達。
おすすめの映画と本。映画を見れなかった人は、レンタルでも見る価値があると思う。久々、映画を見て高揚感を持って映画館を出た映画だといえる。