ミッション・マンガル

火星が月に接近中

最近火星が何かと話題になる。
1月20日から三日間、火星と月が接近するというニュースを見て、21日に写真を取ろうとしたが、なかなかうまく映らなかったので、国立天文台のホームページより引用したのが上の写真。
日本も火星の月(フォボスとダイモス)めがけてのサンプルリターン計画が進行中だ。

なんばパークル・シネマで火星へ向けての探査機打ち上げを取り上げたインドの映画があった。
「ミッション・マンガル ー 崖っぷちチームの火星打ち上げ計画」がそれだ。
この映画は実話に基づいている。
インドは2013年11月5日に火星探査機「マンガルヤーン」を載せたPSLV−XLを打ち上げ、翌年2014年9月24日、火星周回軌道投入に成功している。
この事実を映画化したものがこの映画「ミッション・マンガル」である。「マンガル」というのはサンスクリット語で「火星」という意味だそうだ。

左はこの映画のパンフレット。
パンフレットの下のロケットの写真はこのパンフレットからの引用。
火星探査機を載せたこのロケットは、全長約42メートル、直径2メートル80センチ、総質量約189トン。火星探査機の重量は1340キログラムで1トンを超えている(この内の852キログラムは燃料ということだから、本体、観測機器の重さは約500キログラムと思われる。)
ちなみに、はやぶさ2の本体は約609キログラムと発表されている。

ロケットの発射風景、大気圏と突破する様子や衛星分離などはCGと私は思うがとても良くできている。
探査機の製作現場や、探査機に金色のサーマルブランケットを取り付ける場面など、普段見ることがないシーンがたくさんあって、ワクワクしながら見た。

映画の内容については、パンフレットに宇宙飛行士の山崎直子さんが文を寄せているので、それを紹介する。

「こんなに元気が出る映画は久しぶりです。情熱、可能性を信じること、思いやり、心に響くことは、国境を超えて共通なのだと改めて思いました。・・・略・・・・・・
何度も困難に逢い、それでも諦めずに、はらはらしつつも乗り越えていく様子は、アメリカの映画「アポロ13」や、日本の初代小惑星探査機「はやぶさ」を題材にして映画と通じます。実話をもとにしているという点も同じです。その中でも、この「ミッション・マンガル」は、ひときわ溢れるユーモア、そして、ときに迷いながらも、信念を持って前向きに生きる女性たちが際立っているのです。
インドの民族衣装を着た女性たちが、ロケット打ち上げや探査機運用の管制センターで働いている様子には、最初は正直驚きました。しかし、それがインドらしく、独特な華やかさと伝統的な厳かさを醸し出しているのです。しかも、そうした女性たちが決してマイナーではなく、プロジェクトの中心を担っているのです。母の包容力に溢れるプロジェクト・リーダーのタラは、二軍の寄せ集めともいえるスタッフたちのやる気に火をつけ、チームを温かく励まし続けます。そして、タラや仲間たちを信じるチーム・リーダーのラケーシュ。この二人のコンビがとても清々しいのです。・・・・略・・・・・・」

映画だから「えっ?」と思う展開もあるが、インド映画らしく途中に大人数のダンスの場面があったり、アジアで最初の火星探査を目指す国を挙げての応援ぶりが垣間見られて、画面も華やかで美しいので見飽きることがなかった。
ロケット打ち上げ、火星までの宇宙旅行中のトラブル、火星の周回軌道にのるまでの苦難が上手に描かれている。
火星探査機『マンガルヤーン」が火星の夜に入って通信が途絶えて、計算上ではもう通信が回復するはずなのに電波が来ない。この場面では日本の金星への観測機「あかつき」を思い出した。「あかつき」も金星の夜に入って電波交信ができないところでエンジンの故障を起こし、軌道からはずれてしまった。しかしJAXAは5年の間復旧を試みて金星周回軌道に乗ることができた。この軌道計算をしたのが廣瀬史子(ちかこ)さんだったことも覚えている。日本のJAXAでも女性は活躍していることを忘れてはいけない。

上の写真もパンフレットから。ロケットと探査機の大きさが想像できる。いやー本当に大きいなあ。まわりにいる主人公たちのサリー姿がとても魅力的。

映画のパンフレットにある秋山文野さんの「インドの宇宙探査とアジア初の火星探査機『マンガルヤーン』」によると
「・・・・宇宙開発史上のエピソードと同様に、ミッションに関わった人物もモデルとなった科学者たちの人物像を合成し、ぎゅっと凝縮して描かれています。
実際のISRO(インド宇宙研究機構)は17000人と日本のJAXAの10倍以上のも職員を要する巨大組織です。そして女性の職員はそのうち20%ほど。JAXAは19%ですから、NASAのおよそ30%という比率には及ばないとはいえ、ISROは女性が活躍している宇宙機関なのです。現在、ロケットを打ち上げ中継の映像で、ISROの管制センターで女性が活躍している姿は珍しいものではありません。・・・略・・・・」

「マンガルヤーン」の管制センターでの探査機運用の緊迫感も、このあいだの「はやぶさ2」の管制室の様子と重なって、ドキドキしながら見てしまった。
映画では目の前で「マンガルヤーン」を操縦しているかのように表現されていたが、地球と火星の距離は7528万キロメートル。光の速さで4分。信号を送って返事が返ってくるのに約10分かかる。遠隔操作と自律航法なのだが、そこは映画。

日本の「はやぶさ2」の活躍を描いた映画ができないものかなあ。
「初代はやぶさ」の映画は4本つくられたが、私が見たのは竹内結子さんのものだった。きっとこの「ミッション・マンガル」に負けない映画ができると思う。

2月に3機の火星探査機が火星に到着予定

ところで火星には火星の周回軌道から観測している探査機、火星上動いて調査している探査機、火星を目指して飛んでいる探査機とたくさんある。
今活動しているのは、
①インドの「マンガルヤーン」も目標300日をこえて火星を観測している。
②アメリカの「マーズ・オデッセイ」。2001年に周回軌道に入り、現在も活動している。
③ヨーロッパ宇宙機構の「マーズ・エクスプレス」。2003年に周回軌道に入り、現在も活動中。
④アメリカの「マーズ・リコネサンス・オービター」。2006年に周回軌道に入り、30センチ単位の地形の写真を撮っている。
⑤アメリカの「キュリオシティ」。2012年火星に着陸した火星探査車。大きさは軽自動車くらい。3000火星日も活動して写真を撮っている。
⑥アメリカの「メイヴン」。2014年に火星周回軌道に入っている。
⑦ヨーロッパ宇宙機構+ロシアの「トレース・ガス・オービター」。2016年に火星周回軌道に入る。火星自動車(スキャパレリ)の着陸を試みたが失敗。
⑧アメリカの「インサイト」。2018年に着陸。シャベルで地面を掘ることができる。

そして現在火星に向けて飛行中の探査機が3機。JAXAのホームページに次のような紹介記事があった。

今年(2020年)7月末に打ち上げられた3機の火星探査機 (アラブ首長国連邦(UAE)のMars HOPE、中国の「天問1号」(Tianwen 1) 、米国のマーズ2020(Mars 2020))は、順調に火星へ向かっています。いずれの探査機も2021年2月に到着予定で、マーズ2020の火星探査車パーサヴィアランス(Perseverance)は2月18日頃に火星への着陸を予定しています。

アラブ首長国連邦の探査機は、日本のH2-Aを使って打ち上げられている。日本も打ち上げる力はあるのだ(ないのは予算)。
さあ、しばらくは火星から目が離せない。

 

 

 

 

義経千本桜 文楽

ここは千日前にある国立文楽劇場。 緊急事態宣言が出ているが、チケットを購入していたし、文楽が中止になったというお知らせもなかったのでやってきた。

文楽人形の頭かマスクを付けてのお出迎え。 入り口でもマスク着用、体温の計測があった。私はいつもの癖で鼻を出していると、「お客さま、マスクは鼻までお願いします」と注意された。
マスクをした人形の後ろの休憩用の椅子も、仕切りが設けられ、向かい合って座れないようになっている。ここも飛沫感染に気を使っているのがよく分かる。

蜜を避けるために座席数は半数になっていた。夜の部も終了が8時に間に合わせるように、休憩をなくすなどのタイムテーブルの見直しがあると掲示されていた。

座席は一列目と太夫周辺には座れないようになっていた。
飛沫感染予防のためと思う。

私はお昼の部に行ったので、途中休憩があった。 ロビーにある休憩所は喫茶の販売はなく、自動販売機で購入するだけである。 テーブルにはアクリル板が置かれ、向かい同士に座れないようになっている。 私は缶コーヒーを買ってすわっていたが、この休憩室を利用する人はほとんどいなかった。

舞台正面上には、今年の干支の「丑」の文字と、「にらみ鯛」が飾られている。「にらみ鯛」の本物はロビーに飾られていた。 舞台のにらみ鯛は永らく絶えていたものを復活したものだそうだ。

午後2時30分開演の第二部は、「碁太平記白石噺(ごたいへいきしらいしばなし)」と「義経千本桜(よしつねせんぼんざくら)」。
「碁太平記白石噺」はこれまで見たことがなかった演目。 買ったパンフレットによると、これは実話にもとづいているいう。「月堂見聞集」という見聞記に、亨保8年5月(1923年)に「仙台より写し来り候仇討之事」として記録されているものがあるそうだ。姉妹が父の仇討ちをしたという記録があるという。
文楽では、奥州逆井村の貧しい百姓の娘のおのぶは、代官に殺された父の仇を討とうと決心し、遊女奉公をしている姉を訪ねて一人で江戸に出ていく場面から始まる。私達が見たのは、これもパンフレットによると「父の仇討ちを誓う生き別れの姉妹の再会」の場面。
揚屋の主人惣六が、姉妹の仇討の話を聞いて「曽我物語」を引用して意見するところがクライマックスだった。田舎訛りの妹、傾城宮城野の廓言葉、惣六の語りと、豊竹呂太夫さんと鶴澤清介さんの熱演がすばらしかった。

義経千本桜は四段目からの「道行初音旅(みちゆきはつねのたび」。

私は歌舞伎でこの「義経千本桜」や、このあとの「河連法眼館」を見たことがあるが、文楽では初めてだった。
狐忠信がどのようにして登場するかが楽しみだった。
幕が上がると舞台は一面の桜。
太夫と三味線11名が桜色の衣装で会場がとても華やかな雰囲気になる。なんでも三味線の鶴澤清治さんは文化功労者として顕彰されたそうだ。その記念として孫弟子までの一門での出演となっている。
狐忠信は狐の姿で登場した。後ろ足でお腹を掻いたりと、なんとも可愛らしい姿。
木陰に姿を隠して、旅姿の忠信として登場する。
義経からもらった鎧と鼓を義経にみたてて、八島の戦いなどの源平合戦のありさまを、静御前とともに舞うのが圧巻の演技だと思う。
静御前が矢にみたてて後ろ向きに投げた扇を狐忠信がハッシとつかむのには驚いた。
人間でもなかなかできないこと。人形がここまで活躍するにはそれは長い時間の練習の賜物だと感心する。さすが大阪の文楽はすばらしい。
再び歩みをすすめる狐忠信が、静御前の持つ鼓にすりよるのがまた可愛らしい。

帰りに法善寺の水掛不動尊におまいりする。
お参りしている人の姿はない。お店も休んでいるところが多い。営業するお店も「午後8時閉店」の紙が貼ってある。
道頓堀もグリコの看板には電気がついていない。
橋を渡る人の姿もコロナの影響、緊急事態宣言の指示の通りずっと減っている。
国立文楽劇場は新型コロナウイルス感染予防のため、必死の努力をしている。
芸術は人の生き方に力を与えてくれる。文楽などの伝統芸能の火を絶やしてはいけないという心意気が感じられる。
2021年、まさしく私達の生き方が試されている年のような気がする。

 

 

 

 

ゴッホのひまわり

ロンドン・ナショナル・ギャラリー展

ここは地下鉄「肥後橋駅」が最寄りの駅となる「国立国際美術館」。
ロンドン・ナショナル・ギャラリー展がひらかれている。
大阪市立科学館の隣だ。
来年の1月31日までの公開だが、大阪市が新型コロナウイルス赤信号なので早めに行くことに決めた。
チケットは(当日券もあるそうだが)ローソンで日時指定で買わなければならない。
この日はお昼すぎだが人の出足はなかなかのものだった。

お目当てはもちろんゴッホのひまわり。
夏に大塚国際美術館でひまわりの絵を見てきたが、本物が大阪にやってきたので、これは見に行かなくてはならない。
左は館内のショップで買ったクリアホルダーの写真。
日本では美術館内の写真が撮れないところが多いのが残念だ。
日時指定のため館内は比較的すいている。
正倉院展のように1時間程度の見学時間。ずらっとならんで見ることもないのでゆっくりと絵を一枚一枚見ていくことができた。
「ひまわり」の絵は、展示の最後の部屋にあった。
大きさは92.1×73cm。
想像しているよりも大きい。上のパンフレットの写真のようにフェルメールとひまわりの絵が2つ並んでいると、実際の大きさがわからない。フェルメールは実際に見ると、思っているよりも小さく感じる。(フェルメールの「ヴァージナルの前に座る若い女性」の大きさは、51.5×45.5cm)
ひまわりの絵の前が大混雑、ということもなく、ゆっくりと取り囲んで自分の納得するまでみることができた。 

左はミュージアムショップで購入したミニのアルバム。大きなアルバムもあったが、小さい方を買った。
このアルバムの「ひまわり」の解説を引用する。

「ゴッホは南仏のアルルに移り住むと、ゴーガンとの共同生活を始めるにあたって、ひまわりの絵を7枚描きました。本作はゴーガンの寝室を飾るために描かれ、自らサインを記した、たった2枚の絵のうちの1枚です。ひまわりは伝統的に「忠誠」を表し、夢であった共同生活への忠誠を象徴していたとも考えられます。新たな環境で制作に没頭しようとしたゴッホの超人的なエネルギーや生命力が、厚く塗られて画面をうねる黄色の絵の具からほとばしるようです。」

1888年の作品だそうだ。120年あまり前の作品とは思えない、迫力のある絵だった。大塚国際美術館では7枚の「ひまわり」を見ることができ、それは素晴らしい展示だったが、やっぱり本物はいい。こんな機会がなければ本物の「ひまわり」を鑑賞することはできない。

パンフレットの写真にあるように、ルノアールの「劇場にて『初めてのお出かけ』」、
モネの「睡蓮の池」、
レンブラントの「自画像」
などのように中学校や高校の美術の教科書で見たような、有名な絵も展示されていて楽しい展覧会だった。
 ゴッホが共同生活を楽しみにしていたゴーガンの作品は
「花瓶の花」の一作だけだった。
ひまわりの黄色とちがって、ゴーガンの花束は紫のような青、赤、白の花が目に飛び込んできた。「ゴーガンはこんな絵を描くのだなあ」と思わずつぶやいた。ゴーガンの晩年、タヒチで描いた絵だそうだ。ゴッホとゴーガンの花の描き方の違いを知ることもできる展示だった。

帰りの電車の中でポプラ社のPR雑誌「asta アスタ」を読んでいた。ブレデイみかこさんが連載しているので書店で手にした本だ。
その中の山本幸久作「花屋さんが言うことには」を読んでいたときだ。
「ひまわりの花言葉」というところでびっくりしてしまった。
こんな話だ。

中学2年性の男子が花を買いに来た。
転校する幼馴染の女の子に花を贈りたいということだ。
迷った末にひまわりの花になった。
・・・・・・・・・・・・・・・
「何本にします?」
「3本っ」作業台のむこうから李多が言った。「向日葵だったら3本がちょうどいいわ。3本になさいな」
                      ・・・・・・・・・・・・・・・
なぜ3本か。
この小説によると向日葵の花言葉は本数で違うのだ。
 999本は(何度生まれ変わってもきみを愛する)
 108本は(結婚しよう)
 99本は(永遠の愛)
 11本は(最愛)
 7本は(ひそかな愛)
 1本だけは(一目惚れ)
そして3本は(愛の告白)ということだ。

この小説は寺山修司の短歌がテーマになっている。

 列車にて遠く見ている向日葵は少年のふる帽子のごとし

ゴッホの「ひまわり」が「花言葉」につながり、寺山修司の短歌にひろがっていくという楽しい探検をしているかのような一日となった。