奇才(後期)あべのハルカス

あべのハルカス美術館で開催中の「奇才」が後半の展示物となった。
24日土曜日9時から、開催前の1時間を使って、学芸員さんの説明会があった。
後半の展示はほぼ入れ替えをするという大胆なもので、前半と後半の展示を見ないと「奇才」の展示をすべて見ることができないという豪華なものだ。
後半の説明会には、前半の説明会よりも参加者はぐっとふえていた。男性の参加が多いのには驚いた。
前半のときの説明と重複するところもあったが、それはしかたがない。今回始めて説明を聞くという人も多かったから。

これは会場入口に吊り下げられている大きなポスター。
前回はアイヌの「イコトイ」の部分をブログで紹介したが、その左上になんとも奇妙な絵が載っている。
タコとお坊さんのように見える。これは後半の作品で登場した耳鳥斎(にちょうさい)という大阪の浮世絵師による作品「別世界巻」からのもの。
この「別世界巻」は長さが約10メートルはあるという力作。内容は「地獄」。
上のタコとお坊さんは「和尚の地こく」という題がついているようだ。
「和尚の地こく」以外に「中居の地こく」や「あめやの地こく」などあって、一風変わった地獄が描かれている。
ボスターにある「坊主とタコ」の原作・本物がこの後期では展示されていた。

後半の作品で、白眉なのがこの襖絵。

館内は写真撮影が禁止なので、ミュージアムショップで買ったクリアファイルを写真に撮ったもので紹介する。
和歌山県・無量寺串本応挙芦雪館所蔵のもの。
左が「龍図襖」、右が「虎図襖」と作品名が紹介されている。
上の二つは部分図で、全体は下のようになっている。(これもクリアファイルから)

どちらも襖四枚を使った迫力満点の絵だ。
この襖絵は仏間の左右の襖にかかれたもの。
ハルカス美術館もその空間を再現していた。学芸員さんもその苦労を語っていた。
自分の左右に龍図と虎図があるということを実感できるだけでも、後半の「奇才展」は価値があると私は思った。

龍図の裏側には「唐子遊図」が描かれ、子どもたちの伸び伸びとした姿に思わず微笑んでしまう。
虎図の裏側には「薔薇図」が描かれており、そこには三匹の猫がいる。
襖の裏と表の絵を一度に楽しめるようになっている。写真集の襖絵を見るのではなく、現場を再現した空間の中で体験できるのがいい。

前半でのブログに書いた林十江(はやしじっこう)は、作品が入れ変わっていた。前半の巨大なトンボが「木の葉天狗」になっていたが、この天狗もまた不思議な魅力のある作品だった。しかしその魅力は江戸時代の人たちには分かってもらえなかったようだ。
伊藤若冲の「乗興舟」は全期間通しての展示だった。淀川の川下りを描いているので、大阪や淀川の歴史を知るためにも重要な作品だと思う。

https://fanfunfukuoka.aumo.jp/articles/89180

写真は上記のサイトよりの引用。
これも10メートルにおよぶ作品。しかも「拓版画」という浮世絵の技法と正反対で作られている。版画は左右が逆になるように版木を彫るが、これは凸版にインクを塗っているので、白黒反転だが左右は反転しないように彫られている。
大変珍しい技法だそうだ。今も残る淀川周辺の風景がこの拓版画にはあるそうだ。

この他にも、加藤信清(かとうのぶきよ)の「五百羅漢図」(文字絵という技法で、輪郭線や絵の部分もお経の文言で表すというすごいもの。ガラス越しには私にはその文字が判読できない。拡大したものが展示してあるので、すごーいと納得)や、高井鴻山(たかいこうざん)の「妖怪図」など、さすが奇才展と感じる作品が並んでいる。

これはミュージアムショップで買ったもの。

縦横10センチくらいの袋に入っている。おもてには赤い文字で

奇才
Hotaru meets Hikari
イカの絵と
蠣崎波響「御味方蝦夷之図 イコトイ」(部分)
函館市中央図書館蔵

と書かれたものが載せられている。

裏を見ると、「北海つぶ燻製」(名称:魚介燻製品 原材料名;つぶ貝(北海道産)、砂糖,食塩・・・の文字が並んでいる。
そう、これは北海道で取れたつぶ貝でつくった燻製品。それに蠣崎波響のアイヌのイコトイの絵がコラボした食べ物だった。
これ以外にも奇才展の作品とコラボしたこのような食品が売られていた。「これはどうなんだろう、商魂たくましいなあと」思って製造元を見ると、販売者は東京の会社、製造は名古屋の会社だった。
作品もおもしろいが、ミュージアムショップもおもしろい。いろいろと考えることもできる「奇才展」だった。
「奇才展」は11月8日まで。これを逃すと今後見る機会があるだろうか?という作品が展示されている、と学芸員さんが言っていた。確かに今がチャンスだと思う。

 

 

奇才 あべのハルカス

あべのハルカスで「奇才ー江戸絵画の冒険者たち」という展覧会が開かれている。
10日(土)に開場前に学芸員さんの説明があり、そのあと自由に見学できるという取り組みがあった。
以前にもハルカスではこういう取り組みがあり、自分たちだけでは触れることのできない中身を教えてもらえるので参加したことがある。
今回も面白そうなので応募した。
日本の美術館では当たり前になっている「写真撮影」禁止のため、館内の様子をブログで紹介できないので、ミュージアムショップなどの展示`のものを使った。

館内のトップにあろのが、葛飾北斎の「男浪」と「龍図」。
実際の展示は右に「竜図」、左に「男浪」。長野の小布施町の祭屋台(地車のようなものか)の天井画である。
葛飾北斎が80歳を過ぎて描いたものというからすごい。
一辺が約118センチの桐の板に書かれている。
ここにあるのは本物。
葛飾北斎は富嶽三十六景などの版画で知られているが、版画の作品よりも肉筆画のほうがおおいそうだ。
天保の飢饉、天保の改革などで江戸での生活に困っている葛飾北斎を長野によんだのが、小布施の豪商・高井鴻山だそうだ。
「男浪」は「富嶽三十六景 神奈川沖浪裏」を思わせるような構図。使われている絵の具もヨーロッパから渡ってきた顔料のベロ藍を用い、細かなしぶきは胡粉(ごふん)を用いているそうだ。
「竜図」は遠近法が使われ、絵の具もグラデーションを生かした技法で立体的に表現されている。80をすぎてなお新しい表現を追求している葛飾北斎にはびっくりするばかりた。この2枚の絵を会場の入口に持ってくる意味はよくわかる。

林十江(はやしじっこう)の「蜻蛉図」。
エコバックのような手提げ袋にブリントされているが、実物はびっくりするほど大きい。縦は1メートルくらいはありそう。
こんな大きく蜻蛉を描いていいのか?と思うくらい。
水戸の醤油屋を継いだが、利益を目当てにせず、人の異様をつくことばかりしたため、家業は傾いてしまったという。通常の画家が描かないものを描き、37歳で江戸に行くが理解者が現れず失意のうちに故郷に帰り、没したそうだ。

 

左はポスターにもなっているが、実物はこじんまりとしている。
蠣崎波響(かきざきはきょう)「御味方蝦夷之図 イコトイ」(おみかたえぞのず)
江戸時代後期の松前藩の家老で、画家としても有名な人物だそうだ。
1789年(寛政元年)5月に和人の商人との取引や労働条件に不満をつのらせた一部のアイヌが蜂起した。討伐隊の指揮官の一人が蠣崎波響だった。
討伐隊に協力したアイヌ12人の肖像画を書いたのが「夷酋列像(いしゅうれつぞう)」といわれているもの。そのなかの一枚が「イトコイの肖像画」である。アイヌ民族の歴史を考えさせる絵だと私は思った。

左は伊藤若冲の絵がTシャツにプリントされている。

鶏の絵だが、展示されているのは白黒画。
伊藤若冲というと色鮮やかな鶏の図を思い起こすが、ハルカスで展示されていた鶏の図は墨絵。
解説の学芸員さんの話によると、明治になってから伊藤若冲の絵が評判になって多くの絵が見つかっているが、その98パーセントは贋作だそうだ。
それを聞いていた私達は思わず「えーっ」と声を上げてしまう。
贋作専門の絵師が多くいたそうだ。
「ここに展示されている若冲は、正真正銘の本物です」と学芸員さんは声を大きくした。

1時間たっぷりの勉強の後、一つ上の階にある喫茶店でコーヒーとケーキをいただいて、少し休憩。奇才のラテアートがまた楽しい。
10日、11日で作品が大きく入れ替わるそうだ。
11月8日までの後期の作品も見たくなってきた。
今回と同じ学芸員さんによる作品解説が24日土曜日にあるそうだ。
私達はさっそく申し込んだ。
10月は芸術の秋、日本の生んだ奇才の作品にふれるのもいいものだ。

 

アイリッシュハープ

引用

山下直子さんの講義の最終には、アイリッシュハープの演奏があった。

奈加さんのホームページを見るとアイルランドへの思いがよく伝わってくる。
プロフィール紹介よりの引用。
・・・・・・・・・・・・・・・・

アイルランド音楽との出会いは、10歳のとき。♪ ロンドンデリー・エアーや ♪ 庭の千種を初めて聴きました。その美しいメロディーの中にある物悲しさや逞しさに心惹かれ、大人になった今でも私の大切なものとなっています。

アイルランド音楽。それは、聴く人を優しく包み込む癒しの音楽であり、昔から歌い継がれてきた歴史のある音楽だと思います。
エメラルドの島の音楽は、深くて神秘的な世界へと私を連れて行ってくれます。

https://yasukonaka.com/profile/

・・・・・・・・・・・・・・・・

奈加さんのもっている写真のアイリッシュハープは重さが約3.5キログラムだそうだ。
3.5キログラムというと赤ちゃんぐらいだ。講座の画面で、奈加さんがハープを持ち上げて全体の形を見せてくれるところがあり、なるほど持って歩けるものだと思った。
桜の木でできているそうだ(アイルランドでは柳の木が使われることが多いと、山下直子さんの説明にあった)。大型のハープは足のペダルで半音などの操作をするが、アイリッシュハープは手元のレバーで行うそうだ。

上の写真はトリニティ・カレッジの図書館に展示されていたアイリッシュハープ。
現存する世界最古のアイリッシュハープだそうだ。14世紀から15世紀初頭のものと推測されている。
高さ約86センチメートル、
重さ5.2キログラム。
弦は29本だそうだ。
これぐらい大きいと持って歩くの困難かと思う。

上の写真は大阪市中央区にある島之内教会での「ケルト音楽の演奏会」があったときに写した写真。
ハープの演奏者はこのアイリッシュハープを担いで会場に入場されていた。

ハープの上部を拡大してみる。半音の操作はなかなかむずかしそうだ。

上の写真は昨年末にマレーシアに行ったとき、ホテルのロビーでハープの演奏があったので、その様子を写真にとったもの。これはグランドハープとよばれているもの。
こうしてみると、ハープにもいろいろな種類があることがわかる。

吟遊詩人

吟遊詩人といえばホメロスが「オデュッセイア」を語っている場面を想像する。歌や詩を創り、各地を回ってそれを歌って人々に聞かせる。そんな人達は世界のあちこちにいたようだ。
日本の琵琶法師などもそのような人たちの範疇に入るのだろう。

アイルランドの伝説的な吟遊詩人はターロック・オキャロン(1670年〜1738年)だそうだ。山下直子さんの話によると、天然痘で失明した彼はハープの修行を3年間し、馬と案内人とともにハープ演奏の旅に出たという。訪れる土地の町の人や貴族などに様々な曲を創り、その数は200曲をこえるそうだ。

奈加靖子さんのもっているハープなら肩に担ぐこともできるだろうし、馬がいれば移動もしやすいだろうと思う。

奈加さんのお話によると、アイルランドの特徴として「私はハープを持っている」という言い方をせずに「このハープが私のところにある」という表現になる。「今私はとてもしあわせです」は「今幸せという気持ちが私のところにある」という言い方をするそうだ。「持っている」という所有の感覚が英語とは違うのだという。
民族の言葉には、その民族独自の感覚や表現があるということなのだろう。
奈加さんはアイルランド語で歌を歌っているそうだ。「歌を歌うことは、物語を語っていくこと」と話されていた。それは吟遊詩人の心だと思った。

6回の講座がこんなに早く進むものかとおどろく時間だった。
訪れた国なので深く知ることができた。
山下直子さん、ユーラシア旅行社の皆さん、ありがとうございました。