分数の計算②

分数の歴史

分数の歴史はどこまで遡れるのだろう。 改めて考えてみると、私にはわからないので調べてみた。

参考になったのが上の二冊。 「岩波科学の本9 数は生きている」と「ちくま学芸文庫 初等数学史」である。
そこにアーメスのパピルスの説明があった。

「数は生きている」からの引用が上の写真。

「初等数学史」からの引用が上の写真。分数の具体例が書いてある。

上の写真はウィキペディアからの引用。 実物はこんな感じなのだろう。
33cm✕5mぐらいの巻物状だったらしい。

この「アーメスのパピルス」というのは1858年にテーベで発見されたもので、イギリス人の学者のリンドが手に入れて研究したため、「リンド・パピルス」ともよばれている。紀元前1700年ごろに書かれた数学書だそうだ。
紀元前1700年といえば日本ではまだコメも伝わっていない縄文時代だ。
今から約4000年!!前から分数は使われていたことがわかる。

エジプト人は単位分数の和が連続量を表す最終的な表し方であると考えていたらしい。今の分数の計算方法とは違っている。詳しいことは「数は生きている」を見てほしい。

もちろんエジプト人すべてがこの分数を使っていたということではない。ごく一部の専門家が知っていて、使っていたと思われる。

 

分数の文化圏と小数の文化圏

左の本「水道方式入門 小数・分数編」によると、「中国・古代バビロニアでは、小数が主として使われていました。
・・・中国においては、古代から一貫して小数のほうが流通していたのです。中国の文化圏に属する日本でも、したがって、小数が主に使用されてきました。・・・ところが、一方、古代ギリシアのようなところでは、小数は使われず、もっぱ分数のみが使用されていました。それを引き継いだ、古代ローマやヨーロッパが、分数を主に使っていたのはそのためでした。ヨーロッパが今日のような10進小数の便利さを主張したのは、やっと16世紀のシモン・ステヴィンであったのです。ヨーロッパでは、小数のことを10進分数(decimal fraction)というので、小数という独自の用語すらないことをおもいだしてください。」

へーっ、そうなんか。と目からウロコのような感じ。では分数はどのようにして使われていたのだろう。分数の基本となる互除法について次のような説明がある。

「互除法は、古代ギリシアで、実際に用いられた測定法だったのです。小さな都市国家に分かれ、貴族民主主義の発達していたギリシアの社会では、市場で2つの商品の量を比較する場合、法定単位で測るというようなことはありませんでした。
 Aという商人がa という長さの布を、Bという商人がb という長さの布を持ってきたりすると、片一方がもう一方のいくつ分持っているかを測り、それで余りが出れば、その余りで他方の布の長さを測り、それで余りが出れば、その余りで他方の布の長さを測り、・・・というように、対等に測り合って、代金の比率を求めたのでした。」

分数文化圏として、ギリシア、ローマ、ヨーロッパがあり、小数文化圏として中国・日本があることがわかった。私たち日本人は、文化として小数になじんでいるため、分数の考え方や使い方になかなかなじめないことが、歴史的によく分かる。

 

 1/3 を 三分の一と分母から読むのは日本だけ?

日本に分数が伝わったのは中国の「九章算術」という本によってらしい。
この本は奈良時代に伝わってきたようだ。ここには分数の問題もあったそうだ。
養老令には「三分之一」という言葉があったり、その他の法律にも「三分之二」「四分之三」などの言葉が記されているそうだ。
奈良時代・平安時代から分数の読み方として「分母を先に言う」という言い方が定着していたようだ。

岩波新書の「日本語(下)」に分数のことが書いてあった。

「・・・このように順序を乱して書く例は、実は日本語にもある。例の分数である。三分の二を2/3と書く。小学生のころ、うっかり分子を先に書いて分母をあとで書くと、先生に叱られたもので、これは、日本でこの分数を読むときに、「三分の二」というように、分母を先に分子をあとに言うせいである。英語では two thirds と言うから、分子を先に書いて、分母を後にしても差し支えない。
 これを思うと、日本もこういったものを、「二の三分」とでも言っておけば、そんな無理なことをしなくてもよかったんだと思う。・・・・」

明治維新になって、今の分数の書き方が日本の学校に入ってきた。そのときには、分数をどう読むか議論があったかもしれない。
たぶん長年の伝統から、分母を先に言って、下に書き、分子を上に書く、という方式になったのだろう。

インターネットでざっと調べてみると、英語、フランス語、イタリア語、ドイツ語、ロシア語は、two thirds のように分子を先に言い、後から分母を言う読み方をしている。分数の文化圏なのだろう。
ミャンマー語は日本と同じように、分母、分子の順に読んでいるようだ。
日本語のように分母を先に読んでいる言語は多数派でないような気がするが、これ以上のことはわからない。

日本が小数文化圏であるため、分数に馴染んでいないこと、そして中国式読み方と西洋式表記法のぶつかりあいが、ますます分数の学習を難しくさせているのかもしれない。

 

 

分数の計算①

分数ものさし

ネットで「分数ものさし」という記事を見つけた。

なんでも小学生の子が夏休みの宿題として考えたものが製品化されたいうので、興味がわいた。

さっそく書店を幾つか回って発見した。練習のドリルとものさしがついたものがあったので買うことにした。
それが左の写真。
ドリルの上においてあるのが、その「分数ものさし」。15cmのプラスティクのものさしに、分数表示のめもりが書かれている。

この本の裏表紙に分数ものさしの使い方がわかるような説明図がある。それが上の写真。

実際に自分でこの分数ものさしを使ってみた。
ドリルの数字を少し変えて、その計算方法を説明してみよう。

1.足し算

まずは足し算。1/6+2/3 の計算の仕方の説明。

1/6の線を引いて、ものさしを動かし、そこから上の写真のようにものさしをうが指し、ものさしの2/3 の部分を探して線を引く。

ものさしを当ててみると、5/6 になっているので、1/6+2/3=5/6  という説明。

 

2.引き算

次は引き算。1/2- 1/3 を計算してみよう。

図のように1/2 の長さから 1/3 の長さ分だけを取ると、残りの長さは 1/2 – 1/3 となっているはずなので、そこの長さを分数ものさしではかると 1/6 になる。だから、
 1/2 – 1/3 = 1/6 になるという説明だ。

かけ算

次はかけ算。

1/4 ✕ 2/3 の計算。

たて1(12cm)、
よこ1(12cm)の正方形を分数ものさしを使って書く。

①分数ものさしを使って、たてに 1/4  よこに 2/3 の線を引く。

②図のように 1/4 ✕ 2/3 の部分の面積を塗りつぶす。

③ぬりつぶしたところは、全体の面積の 2/12 になっている。

④2で約分すると 1/6 

これで 1/4 ✕ 2/3 = 1/6 ということがわかるというのがこの本の説明。

 

わり算

 

分数ものさしを紙に書いてみて、説明してみよう。
この本の問題文は「二分の一の宝物を四分の一人で山分けしよう」というものだが、ここでは六分の一人にして計算してみた。
上の写真のように、1/2 と 1/6 がわかるように色分けしてみる。

① 1/12 がいくつ分か考える。 → 1/2 は 1/12 が6こ
② 1/6 は 1/12 が2こ
③これは6こを2人でわけるのと同じことだから
 6 ÷ 2 となるので

 1/2 ÷ 1/6 = 3  というのがこの本の説明。

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この「分数ものさし」の本(ドリル)には、たくさんの練習問題がついている。
分数ものさしをつかって、ドリルをして分数の計算に習熟するというのがねらいなのだろう。

自分でやってみて、この本のねらいとしている「分数の感覚」を身につけることはできるのだろうか、とちょっと疑問がわいてきた。
この機会に分数のことについてあらためて勉強してみようと思った。

 

 

 

偏光板で遊ぼう④

ミツバチの目は偏光フィルター?


「偏光板であそぼう」の本には興味深いことがたくさんのっている。

太陽光線はさまざまな方向や角度、直進だけではない光線であることはこの「偏光板であそぼう」で説明されている。

そうすれば、「水で反射した光はどんな光だろう?」。
偏光フィルターを通した光のように振動の向きがそろったもの(いいかえれば偏光しているのか)かそうでないのか。
また、ビルのガラスや屋根の瓦で反射した光は「偏光している」のだろうか。
そんな問がこの本にのっている。

答えは書かないでおこう。偏光フィルターはネットでも販売しているし、大阪市科学館のショップや東急ハンズでも売っているので、実際に自分の目で確かめるのが一番いいと思う。

偏光板の吸収方向を知る方法

池の水面を偏光フィルターを通してみてみよう。偏光フィルターの縦と横を動かしてみると、見え方が違うのがわかる。上のほうが明るく、下は少し暗く見える。

 

水面を反射するキラキラ感が違っているのがわかると思う。

こうすると偏光フィルターの効果がわかりやすいだろう。

偏光フィルターの向きが影響していることがわかる。写真の偏光フィルターにマジックで矢印を書き入れてあるが、これがフィルターの向きを表している。

「偏光板であそぼう」には次のような説明がある。

★水面やガラスなど、水平な面を偏光板を通して斜めから見てみます。次に偏光板を回転してみましょう。すると、表面の明るさが変化し、反射光が消える時があります。そのとき、水平方向に振動する光が偏光板で吸収されています。つまり、その時の偏光板の水平方向が吸収方向だとわかります。・・・(略)・・・・

こうして写真見ると、水面に平行な向きがわかる。写真で ←→ で表してある向きが偏光板の吸収方向になっていることになる。

ミツバチはどんな青空を見ているのだろう?

ミツバチの目についての研究が、この「偏光板であそぼう」に紹介されている。

「ミツバチの目は青空の偏光を感じることができる」ことを発見したのは、オーストリア生まれのカール・フォン・フリッシュ(1886〜1982)で、1949年のことだった。1978年にノーベル医学・生理学賞を受賞している人だ。
詳しい研究の様子はこの本に任せるとして、ミツバチの目を体験してみよう。

偏光板を図のように切って、セロテープを貼り付けるだけなので簡単にできる。 しかし、ここで大事なのが「吸収方向」。これを間違えて偏光板を切り抜き、貼り付けつると全く正反対の結果になる。

写真の上のほうが正しい向き。 青空の明るい方向が明るく見える。
ミツバチは、太陽がある明るい青空がわかるのだ。
青空さえあれば、太陽がある方向の明るさが区別できるので、「遠くはなれていても方向がわかる」と言われているのはこうした目だからだ。
絶えず太陽のある方向を感じながら、ミツバチは飛んでいるといえる。

解剖学的にもミツバチの目は偏光を感じるような構造になっているそうだ。
またミツバチだけではなく、大部分の昆虫や節足動物はこのような「偏光を感じる目」を持っているという。
そうしたら「人間の目よりミツバチの目のほうが進化しているのか?」という疑問がわいてくる。もし人間も偏光を感じる目を持っていたら、どんなふうに世界は見えるのだろう。
「偏光板であそぼう」の作者、板倉聖宣さんと田中良明さんはこう書いている。

★目が偏光を感じるということは、「目に入る光のうち半分しかとりいれていない」ということでもある。私たちの目は目に入る光全部を感じるので、ものの形や色をはっきりと見分けるには、この方が能率がいいのである。そのかわり私たちの目は偏光を区別できないというわけである。

春の青空をバックにした桜の花の美しさをミツバチは感じることはできない。

私のブログで紹介している風見鶏さんは、偏光フィルターを活用しているそうだ。それで風見鶏さんの写真の青空は映えているのかもしれない。
青空の美しさを感じる人間の目に感謝しよう。

 

 

 

ローマ数字

「ローマ数字」についてちゃんとした知識はあるだろうか? この本を図書館で見つけた時に、自問自答した。

子ども向けの絵本のようなので、借りて読んでみた。

なるほど、と思うこともあったのでここに書いておこうと思う。

ローマ数字といえば、本のベージや章を表す時に使われていたり、腕時計や掛け時計にも見ることがある。
でもそのローマ数字で何桁まで表すことができるのか?と問われるとさて答えることができるだろうか。そんな時にこの本は役に立つ。

私達が普段使っている数字、
1,2,3,4,5,6、7、8、9、0
はアラビア数字。

ローマ数字には0
という概念がなく、0を表す文字はない。ここがアラビア数字の素晴らしいところで、この0を発見したのはインド人であることはよく知られている。

ところでこの本を読むまではローマ数字で、

100,500,1000を表すことができるとは知らなかった。

すべての数字を1と5と10と50と500と1000などで表すと言うのだからその考え方は知っておくに値すると思った。

この本の面白いのは、位取りのことをしっかりとかいてあることだ。

たとえば3だけなら3だが、
36と書けば、この3は30のこと。
365と書けば、この3は300のこと。
この表記法の素晴らしさはローマ数字と比べればよく分かる。

Ⅰ は いつでも1
Ⅴ は いつでも5
Ⅹ は いつでも10

16をローマ数字て表すと
10+5+1 と考えて XVⅠ となる。

もう一つこの本の面白いの日本の硬貨を使って考えているところだ。

10円玉、5円玉、1円玉を並べて、合計16円。

10円玉にローマ数字のⅩ、5円玉にローマ数字のⅤ、Ⅰ円玉にローマ数字のⅠ を貼り付けると上の写真のように15円をローマ数字で書くと ⅩⅤⅠ となることがよくわかる。

14はローマ数字のⅩと5円から1円引くと考えて、上の写真のように ⅩⅠⅤ となる。

18円は、10円+5円+1円+1円+1円と考えて、ⅩⅤⅠⅠⅠ と書ける。

56円は50円玉1枚+5円玉1枚+1円玉1枚だから、

50を表すローマ数字Lを使って上の写真のように考えると、LⅤⅠ と書き表せる。

上の写真は54。50+(5−1)=54 と考える。 LⅠV と表せる。

これは50+10+5+1で66。 
ローマ数字では50のL、10の、5の、そして1のⅠで、LⅩⅤⅠとなる。

64円は、50円+10円+(5円−1円)として考えて、LⅩⅠⅤ となる。

100円+50円+10円+5円+1円で166円。
ローマ数字で100をあらわすCをつかうと、CLⅩⅤⅠ となる。
90を表すときは、100−10と考えて ⅩC が90になる。
その具体例が下。

100−10=90、5−1=4、これを合わせて94となり、ⅩCⅠⅤ と書ける。

こんなふうにしてすべての数字をローマ数字を使って書くことができるというわけだ。日本の硬貨、100円玉、50円玉、10円玉、5円玉、1円玉に置き換えて、
置く場所によって数字を足したり、引いたりして求める数字になるようにする。
少し頭の体操になりそう。

1000を表すローマ数字は、M。
5000より大きい数の表し方は、左上のように文字の上に横棒があると1000倍を意味する。また右のように底のない箱は10万倍をあらわす。
上に横棒のあるローマ数字や底のない箱に囲まれたローマ数字を見たことはないが、そういう書き表し方があることがわかった。

この本の裏には、1〜1000までのローマ数字の一覧が載せられていた。

ローマ数字の一覧表を見たことはなかった。
こんな大きな数字をローマ数字で表したものがあるだろうか。
ローマ数字を探す目で、街を歩いてみる楽しみが出てきた。

 

 

 

点字と江戸川乱歩とビブリア古書堂③

「ビブリア古書堂の事件手帖第4巻」は、江戸川乱歩作「二銭銅貨」の点字記号の間違いを材料にした小説で、そのことがきっかけに私は「二銭銅貨」の点字について調べてきた。
これまで「岩波文庫」「新潮文庫」「講談社文庫」をみてきたが、今回はそれ以外の文庫本について書いてみたい。

これは文春文庫の
「桜庭一樹編 江戸川乱歩傑作選 獣」。
奥付には、
2016年2月10日 第1刷
と書かれている。

編者の桜庭一樹さんは「編集解説」のなかで、参考文献として
「江戸川乱歩全集第28巻 探偵小説40年(上)」(光文社文庫)
「江戸川乱歩全集第29巻 探偵小説40年(下)」(光文社文庫)
「新版 横溝正史全集第18巻 探偵小説昔話」(講談社)所収 「『パノラマ島奇談』と「陰獣」が出来る話」
をあげられているが、「二銭銅貨」の出典についてはわからない。
また「解題」として新保博久さんの文章がおさめられているが、「二銭銅貨」の点字については触れられていない。

点字の部分を写すと、下の表のようになった。星印は濁音符と書かれていたところを、小さくて書けなかったので星印で濁音符を代行している。

「チャ」「チュ」「チョ」「シャ」「シュ」「ショ」の拗音は正しくかけている。

文春文庫の暗号文は左のように改行されてはいなくて、つながって書かれている。私が書き写す時に左の形式にした。書いてみると、正しい拗音をあらわすように、点字の正しい配置で訂正されていることがわかった。

これは「講談社文庫」とおなじである。漢字の間違いもない。

 

ただ惜しいのは、
「チャ」が「チ」「ヤ」
「チョ」が「チ」「ヨ」
「ショ」が「シ」「ヨ」
と記されていることだ。
点字二つ分で一つの拗音が表されているのだから、
「チ」「ヨ」と並べるのではなく、「チョ」と書けばいいと思う。講談社文庫がそうであったのだから。
文春文庫は昭和36年の訂正が反映されているといえる。

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これは「角川文庫」の
「江戸川乱歩 D坂の殺人事件」
奥付を見ると、
平成28年3月25日 初版発行
平成29年4月30日 第10版発行
となっていて、2016年、2017年と一番新しい。
一番最後のページに
「本書は、小社より刊行された角川文庫『一寸法師』(1973年6月刊行)、『黄金仮面』(同年7月刊)、『地獄の道化師』(1974年6月刊)の収録作を底本としました。・・・(略)・・・・今日の人権擁護の見地に照らして、不当・不適切と思われる語句や表現がありますが、作品発表当時の時代的背景を考え合わせ、また著者が故人であるという事情に鑑み、底本のままとしました。(編集部)」
と書かれている。訂正された本は昭和36年、1961年に出版されているから、底本とした本はすべて訂正後の出版と考えていいだろう。

 

これはこれまでの点字文と全く違っている。最初の部分だけを、本文の表記に合わして拡大して書いてみると下のようになる。

よく見ると、点字の部分が縦3点✕2列の部分が左右入れ替わっている。
左から「南無阿」「弥陀仏」と縦に並ぶはずのものが、「弥陀仏」「南無阿」となっている。
「二銭銅貨」の本文には、
「今、南無阿弥陀仏を、左から始めて、三字ずつ二行に並べれば、この点字と同じ配列になる。南無阿弥陀仏の一字ずつが、点字の各々の一点に符合するわけだ。・・」
とあるが、この図では左から「南無阿弥陀仏」とはなっていない。これでは原文と逆の表示になっている。
実はこの図の点字は、点字を打つ時の凹面の表示になっているのだ。
もしそのつもりで図を作成するなら、文字の配列は右から左へと書いていかなくてはならない。結局のところこの図は原文の示す点字図にはなっていない。

原文にある暗号文は、文春文庫と同じであり、正しい。
角川文庫では、文春文庫と同じように、ずらずらとつめて書いてあるが、その内容は正確だった。
しかし、点字文が凹面の表示になっているとして考えて、点字を判読して見ると、
拗音の「チョ」「チャ」「シャ」となるところが、
「チ」「ヨ」、「チ」「ヤ」、「シ」「ヤ」と拗音表記になってはいない。
暗号文では「拗音符」を表す「4の点」、「南無阿弥陀仏」では「弥」が書かれているのに、点字文では全く無視されているかのようである。
さらに最後の「ショ」が、仮に「シ」「ヨ」だったとしても、そう書かれていない。
読むとしたら「シ」「ル」としか読めない。ここには点字表記の間違いもあるようだ。
一番新しい本なのに、間違いが一番多いように私には思える。

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最後にインターネット上にある「青空文庫」の「二銭銅貨」を見てみよう。

http://www.aozora.gr.jp/cards/001779/files/56647_58167.html

まず暗号文を見てみよう。

小さくてわかりにくいが、私が調べたところでは、暗号文は間違いない。講談社、角川文庫、文春文庫の内容と同じ(文春文庫、角川文庫は上のような書き方で縦書きになっている)。

暗号文を点字で解読したものが上の表。 前の部分を拡大してみる。

拗音が正しく表記されている。
「チョ」「ショ」「チャ」「ショ」の全てが正確に点字で書かれている。

最後に底本等のことが書かれている。

底本:「江戸川乱歩全集 第1巻 屋根裏の散歩者」光文社文庫、光文社
   2004(平成16)年7月20日初版第1冊発行
底本の親本:「江戸川乱歩全集 第一巻」平凡社
   1923(大正12)年4月
*底本は、物を数える際や地名などに用いる「ケ」(区点番号5−86)を、大振りにつくっています。
*暗号を解いた結果の表は、入力者が底本をもとに作成しました。
入力:砂場清隆
校正:湖山ルル
2016年1月1日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫で作られました。入力、校正、制作にあたってのは、ボランティアの皆さんです。

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ボランティアで作成された「二銭銅貨」は、江戸川乱歩の訂正された作品を正しく伝えているのではないだろうか。
 ただ、くりかえしになるが、点字の拗音は点字2文字分を使って書かれているので、「チ」「ヨ」とマスで区切るのではなく、間の枠を取って、2文字分のスペースにして「チョ」と書けばさらに点字らしくなると私は思う。

思いの外、本を調べるのに長い時間がかかってしまったが、江戸川乱歩作「二銭銅貨」には、訂正されたはずの点字が今も変わらずに出版されている文庫本が多いことがわかった。文庫本以外にハードがバーなどの江戸川乱歩作「二銭銅貨」の本があると思うが、今回は文庫本について調べてみた。
一旦ここで終了としたい。