偏光板で遊ぼう④

ミツバチの目は偏光フィルター?


「偏光板であそぼう」の本には興味深いことがたくさんのっている。

太陽光線はさまざまな方向や角度、直進だけではない光線であることはこの「偏光板であそぼう」で説明されている。

そうすれば、「水で反射した光はどんな光だろう?」。
偏光フィルターを通した光のように振動の向きがそろったもの(いいかえれば偏光しているのか)かそうでないのか。
また、ビルのガラスや屋根の瓦で反射した光は「偏光している」のだろうか。
そんな問がこの本にのっている。

答えは書かないでおこう。偏光フィルターはネットでも販売しているし、大阪市科学館のショップや東急ハンズでも売っているので、実際に自分の目で確かめるのが一番いいと思う。

偏光板の吸収方向を知る方法

池の水面を偏光フィルターを通してみてみよう。偏光フィルターの縦と横を動かしてみると、見え方が違うのがわかる。上のほうが明るく、下は少し暗く見える。

 

水面を反射するキラキラ感が違っているのがわかると思う。

こうすると偏光フィルターの効果がわかりやすいだろう。

偏光フィルターの向きが影響していることがわかる。写真の偏光フィルターにマジックで矢印を書き入れてあるが、これがフィルターの向きを表している。

「偏光板であそぼう」には次のような説明がある。

★水面やガラスなど、水平な面を偏光板を通して斜めから見てみます。次に偏光板を回転してみましょう。すると、表面の明るさが変化し、反射光が消える時があります。そのとき、水平方向に振動する光が偏光板で吸収されています。つまり、その時の偏光板の水平方向が吸収方向だとわかります。・・・(略)・・・・

こうして写真見ると、水面に平行な向きがわかる。写真で ←→ で表してある向きが偏光板の吸収方向になっていることになる。

ミツバチはどんな青空を見ているのだろう?

ミツバチの目についての研究が、この「偏光板であそぼう」に紹介されている。

「ミツバチの目は青空の偏光を感じることができる」ことを発見したのは、オーストリア生まれのカール・フォン・フリッシュ(1886〜1982)で、1949年のことだった。1978年にノーベル医学・生理学賞を受賞している人だ。
詳しい研究の様子はこの本に任せるとして、ミツバチの目を体験してみよう。

偏光板を図のように切って、セロテープを貼り付けるだけなので簡単にできる。 しかし、ここで大事なのが「吸収方向」。これを間違えて偏光板を切り抜き、貼り付けつると全く正反対の結果になる。

写真の上のほうが正しい向き。 青空の明るい方向が明るく見える。
ミツバチは、太陽がある明るい青空がわかるのだ。
青空さえあれば、太陽がある方向の明るさが区別できるので、「遠くはなれていても方向がわかる」と言われているのはこうした目だからだ。
絶えず太陽のある方向を感じながら、ミツバチは飛んでいるといえる。

解剖学的にもミツバチの目は偏光を感じるような構造になっているそうだ。
またミツバチだけではなく、大部分の昆虫や節足動物はこのような「偏光を感じる目」を持っているという。
そうしたら「人間の目よりミツバチの目のほうが進化しているのか?」という疑問がわいてくる。もし人間も偏光を感じる目を持っていたら、どんなふうに世界は見えるのだろう。
「偏光板であそぼう」の作者、板倉聖宣さんと田中良明さんはこう書いている。

★目が偏光を感じるということは、「目に入る光のうち半分しかとりいれていない」ということでもある。私たちの目は目に入る光全部を感じるので、ものの形や色をはっきりと見分けるには、この方が能率がいいのである。そのかわり私たちの目は偏光を区別できないというわけである。

春の青空をバックにした桜の花の美しさをミツバチは感じることはできない。

私のブログで紹介している風見鶏さんは、偏光フィルターを活用しているそうだ。それで風見鶏さんの写真の青空は映えているのかもしれない。
青空の美しさを感じる人間の目に感謝しよう。

 

 

 

ローマ数字

「ローマ数字」についてちゃんとした知識はあるだろうか? この本を図書館で見つけた時に、自問自答した。

子ども向けの絵本のようなので、借りて読んでみた。

なるほど、と思うこともあったのでここに書いておこうと思う。

ローマ数字といえば、本のベージや章を表す時に使われていたり、腕時計や掛け時計にも見ることがある。
でもそのローマ数字で何桁まで表すことができるのか?と問われるとさて答えることができるだろうか。そんな時にこの本は役に立つ。

私達が普段使っている数字、
1,2,3,4,5,6、7、8、9、0
はアラビア数字。

ローマ数字には0
という概念がなく、0を表す文字はない。ここがアラビア数字の素晴らしいところで、この0を発見したのはインド人であることはよく知られている。

ところでこの本を読むまではローマ数字で、

100,500,1000を表すことができるとは知らなかった。

すべての数字を1と5と10と50と500と1000などで表すと言うのだからその考え方は知っておくに値すると思った。

この本の面白いのは、位取りのことをしっかりとかいてあることだ。

たとえば3だけなら3だが、
36と書けば、この3は30のこと。
365と書けば、この3は300のこと。
この表記法の素晴らしさはローマ数字と比べればよく分かる。

Ⅰ は いつでも1
Ⅴ は いつでも5
Ⅹ は いつでも10

16をローマ数字て表すと
10+5+1 と考えて XVⅠ となる。

もう一つこの本の面白いの日本の硬貨を使って考えているところだ。

10円玉、5円玉、1円玉を並べて、合計16円。

10円玉にローマ数字のⅩ、5円玉にローマ数字のⅤ、Ⅰ円玉にローマ数字のⅠ を貼り付けると上の写真のように15円をローマ数字で書くと ⅩⅤⅠ となることがよくわかる。

14はローマ数字のⅩと5円から1円引くと考えて、上の写真のように ⅩⅠⅤ となる。

18円は、10円+5円+1円+1円+1円と考えて、ⅩⅤⅠⅠⅠ と書ける。

56円は50円玉1枚+5円玉1枚+1円玉1枚だから、

50を表すローマ数字Lを使って上の写真のように考えると、LⅤⅠ と書き表せる。

上の写真は54。50+(5−1)=54 と考える。 LⅠV と表せる。

これは50+10+5+1で66。 
ローマ数字では50のL、10の、5の、そして1のⅠで、LⅩⅤⅠとなる。

64円は、50円+10円+(5円−1円)として考えて、LⅩⅠⅤ となる。

100円+50円+10円+5円+1円で166円。
ローマ数字で100をあらわすCをつかうと、CLⅩⅤⅠ となる。
90を表すときは、100−10と考えて ⅩC が90になる。
その具体例が下。

100−10=90、5−1=4、これを合わせて94となり、ⅩCⅠⅤ と書ける。

こんなふうにしてすべての数字をローマ数字を使って書くことができるというわけだ。日本の硬貨、100円玉、50円玉、10円玉、5円玉、1円玉に置き換えて、
置く場所によって数字を足したり、引いたりして求める数字になるようにする。
少し頭の体操になりそう。

1000を表すローマ数字は、M。
5000より大きい数の表し方は、左上のように文字の上に横棒があると1000倍を意味する。また右のように底のない箱は10万倍をあらわす。
上に横棒のあるローマ数字や底のない箱に囲まれたローマ数字を見たことはないが、そういう書き表し方があることがわかった。

この本の裏には、1〜1000までのローマ数字の一覧が載せられていた。

ローマ数字の一覧表を見たことはなかった。
こんな大きな数字をローマ数字で表したものがあるだろうか。
ローマ数字を探す目で、街を歩いてみる楽しみが出てきた。

 

 

 

点字と江戸川乱歩とビブリア古書堂③

「ビブリア古書堂の事件手帖第4巻」は、江戸川乱歩作「二銭銅貨」の点字記号の間違いを材料にした小説で、そのことがきっかけに私は「二銭銅貨」の点字について調べてきた。
これまで「岩波文庫」「新潮文庫」「講談社文庫」をみてきたが、今回はそれ以外の文庫本について書いてみたい。

これは文春文庫の
「桜庭一樹編 江戸川乱歩傑作選 獣」。
奥付には、
2016年2月10日 第1刷
と書かれている。

編者の桜庭一樹さんは「編集解説」のなかで、参考文献として
「江戸川乱歩全集第28巻 探偵小説40年(上)」(光文社文庫)
「江戸川乱歩全集第29巻 探偵小説40年(下)」(光文社文庫)
「新版 横溝正史全集第18巻 探偵小説昔話」(講談社)所収 「『パノラマ島奇談』と「陰獣」が出来る話」
をあげられているが、「二銭銅貨」の出典についてはわからない。
また「解題」として新保博久さんの文章がおさめられているが、「二銭銅貨」の点字については触れられていない。

点字の部分を写すと、下の表のようになった。星印は濁音符と書かれていたところを、小さくて書けなかったので星印で濁音符を代行している。

「チャ」「チュ」「チョ」「シャ」「シュ」「ショ」の拗音は正しくかけている。

文春文庫の暗号文は左のように改行されてはいなくて、つながって書かれている。私が書き写す時に左の形式にした。書いてみると、正しい拗音をあらわすように、点字の正しい配置で訂正されていることがわかった。

これは「講談社文庫」とおなじである。漢字の間違いもない。

 

ただ惜しいのは、
「チャ」が「チ」「ヤ」
「チョ」が「チ」「ヨ」
「ショ」が「シ」「ヨ」
と記されていることだ。
点字二つ分で一つの拗音が表されているのだから、
「チ」「ヨ」と並べるのではなく、「チョ」と書けばいいと思う。講談社文庫がそうであったのだから。
文春文庫は昭和36年の訂正が反映されているといえる。

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これは「角川文庫」の
「江戸川乱歩 D坂の殺人事件」
奥付を見ると、
平成28年3月25日 初版発行
平成29年4月30日 第10版発行
となっていて、2016年、2017年と一番新しい。
一番最後のページに
「本書は、小社より刊行された角川文庫『一寸法師』(1973年6月刊行)、『黄金仮面』(同年7月刊)、『地獄の道化師』(1974年6月刊)の収録作を底本としました。・・・(略)・・・・今日の人権擁護の見地に照らして、不当・不適切と思われる語句や表現がありますが、作品発表当時の時代的背景を考え合わせ、また著者が故人であるという事情に鑑み、底本のままとしました。(編集部)」
と書かれている。訂正された本は昭和36年、1961年に出版されているから、底本とした本はすべて訂正後の出版と考えていいだろう。

 

これはこれまでの点字文と全く違っている。最初の部分だけを、本文の表記に合わして拡大して書いてみると下のようになる。

よく見ると、点字の部分が縦3点✕2列の部分が左右入れ替わっている。
左から「南無阿」「弥陀仏」と縦に並ぶはずのものが、「弥陀仏」「南無阿」となっている。
「二銭銅貨」の本文には、
「今、南無阿弥陀仏を、左から始めて、三字ずつ二行に並べれば、この点字と同じ配列になる。南無阿弥陀仏の一字ずつが、点字の各々の一点に符合するわけだ。・・」
とあるが、この図では左から「南無阿弥陀仏」とはなっていない。これでは原文と逆の表示になっている。
実はこの図の点字は、点字を打つ時の凹面の表示になっているのだ。
もしそのつもりで図を作成するなら、文字の配列は右から左へと書いていかなくてはならない。結局のところこの図は原文の示す点字図にはなっていない。

原文にある暗号文は、文春文庫と同じであり、正しい。
角川文庫では、文春文庫と同じように、ずらずらとつめて書いてあるが、その内容は正確だった。
しかし、点字文が凹面の表示になっているとして考えて、点字を判読して見ると、
拗音の「チョ」「チャ」「シャ」となるところが、
「チ」「ヨ」、「チ」「ヤ」、「シ」「ヤ」と拗音表記になってはいない。
暗号文では「拗音符」を表す「4の点」、「南無阿弥陀仏」では「弥」が書かれているのに、点字文では全く無視されているかのようである。
さらに最後の「ショ」が、仮に「シ」「ヨ」だったとしても、そう書かれていない。
読むとしたら「シ」「ル」としか読めない。ここには点字表記の間違いもあるようだ。
一番新しい本なのに、間違いが一番多いように私には思える。

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最後にインターネット上にある「青空文庫」の「二銭銅貨」を見てみよう。

http://www.aozora.gr.jp/cards/001779/files/56647_58167.html

まず暗号文を見てみよう。

小さくてわかりにくいが、私が調べたところでは、暗号文は間違いない。講談社、角川文庫、文春文庫の内容と同じ(文春文庫、角川文庫は上のような書き方で縦書きになっている)。

暗号文を点字で解読したものが上の表。 前の部分を拡大してみる。

拗音が正しく表記されている。
「チョ」「ショ」「チャ」「ショ」の全てが正確に点字で書かれている。

最後に底本等のことが書かれている。

底本:「江戸川乱歩全集 第1巻 屋根裏の散歩者」光文社文庫、光文社
   2004(平成16)年7月20日初版第1冊発行
底本の親本:「江戸川乱歩全集 第一巻」平凡社
   1923(大正12)年4月
*底本は、物を数える際や地名などに用いる「ケ」(区点番号5−86)を、大振りにつくっています。
*暗号を解いた結果の表は、入力者が底本をもとに作成しました。
入力:砂場清隆
校正:湖山ルル
2016年1月1日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫で作られました。入力、校正、制作にあたってのは、ボランティアの皆さんです。

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ボランティアで作成された「二銭銅貨」は、江戸川乱歩の訂正された作品を正しく伝えているのではないだろうか。
 ただ、くりかえしになるが、点字の拗音は点字2文字分を使って書かれているので、「チ」「ヨ」とマスで区切るのではなく、間の枠を取って、2文字分のスペースにして「チョ」と書けばさらに点字らしくなると私は思う。

思いの外、本を調べるのに長い時間がかかってしまったが、江戸川乱歩作「二銭銅貨」には、訂正されたはずの点字が今も変わらずに出版されている文庫本が多いことがわかった。文庫本以外にハードがバーなどの江戸川乱歩作「二銭銅貨」の本があると思うが、今回は文庫本について調べてみた。
一旦ここで終了としたい。

 

 

 

偏光板で遊ぼう①

偏光板を使った工作が面白かったので、紹介してみたい。

そもそものきっかけは、昨年のキッズブラザでの、子ども向けの体験講座である。その様子は以前にブログで取り上げた(「10月23日は化学の日」)。
そこで偏光板を使った万華鏡づくりが私の一番の興味をひきつけたものだ。
その時、スタッフの人が、「偏光板は東急ハンズで売ってますよ。そんなに高いものではありません」と言っていたことを覚えていた。

そこで東急ハンズに行ってみると、たしかに「偏光板」が売られていた。
図書館で「偏光板を使った工作の本」をさがすと、いくつか見つかった。
今回は左上の本に乗っていた「ブラックウォールボックス」を作ってみた。(参考にした本は、「主婦の友社 自由研究にもぴったり! 東工大サイエンステクノの理科脳を育てる工作教室」)

写真で見るだけでも面白そうではないか。

材料は
偏光板、工作用紙、セロテープ、はさみ、など。

偏光板は私たちの身のまわりで多く使われている。
その代表的なのが、パソコンの液晶ディスプレイ。
またカメラに使う偏光レンズや、眼鏡にも使われている。

この三枚の写真は、ブログ作成中のディスプレイに偏光板をセロテープで貼り付けてみたもの。
偏光板を回転すると、最初透明だった偏光板が灰色になり、真っ黒になった。すなわち偏光板を回転することによって、液晶ディスプレイからの光を通したり、完全にカットする様子がこれでわかると思う。

設計図に従って工作用紙を切り抜き、偏光板を貼る。

長い辺だけをセロテーブで止め、短い二つの辺の部分は開けておく。

真ん中に黒い壁のようなものが見える。鉛筆を近づけてみよう。

おお、鉛筆が通り抜けたではないか。

これは箱の向きを変えて、上から鉛筆を突き刺すようにした所。

真横から見ると、左上の写真のように、箱の中に黒い壁があるわけではない。しかし見る位置を変えるに従って、真ん中に黒い壁のようなものが見えてくる。これが偏光板の面白さだ。

この大型が名古屋の「電気文化会館・でんきの科学館」にある。

どうしてありもしないところに黒い壁があるようにみえるのだろう。
もう少し、偏光板の工作をしながら考えてみよう。

 

 

 

点字と江戸川乱歩とビブリア古書堂②

前回は、「ビブリア古書堂の事件手帖」の第4巻で、江戸川乱歩作「二銭銅貨」にある点字の誤表記について書かれていることを知ったこと、それをもとにわたしの手に入った文庫本について調べようと思ったこと、そして岩波文庫について調べたことを書いた。
前回の岩波文庫以外の文庫を紹介しよう。

ビブリア古書堂の事件手帖の第4巻では、江戸川乱歩の間違った点字表記をヒントにして、事件を解決していくわけだが、私はどんな点字の間違い方をしたのかに興味を持った。

点字表記を見てみると、拗音の理解の仕方に問題があったと私は思う。
ビブリア古書堂の事件手帖によると、戦後の江戸川乱歩の全集においてその間違いを訂正したそうだ。ところが岩波文庫は2008年の出版なのにその間違いが訂正されていない。
編集付記として、初出の本文を底本としていると書かれている。初出の本文の間違いが訂正されないまま使われていることになる。

では他の出版社の文庫本はどうなっているのだろうか。出版の古い順に見てみよう。

左は講談社の江戸川乱歩推理文庫全65巻の第1巻の「二銭銅貨」。
昭和62年9月25日第1刷発行
と奥付にある。(昭和62年は西暦1987年。)
この文庫本には第1巻解題と題して中島河太郎さんの文章が載せられている。その文章の最後のページに小さな字で次のような文がのっている。

『江戸川乱歩推理文庫』は、江戸川乱歩の個人全集としての総合性、体系性、完璧性を期すため、生前の業績を細大漏らさず網羅した。今日の目を以て見れば、収録されたこれらの作品の中には、その表現・用語のうちに、考えさせられるものが無いではないが、戦前執筆当時の時代を反映した、著者独自の幻夢の世界であるとの観点から、また更に、時代を超えて残さるべき古典的名作であると信ずるが故に、初出時の原文のまま掲載した。(編集部)」

しかし、中島河太郎さんの「第1巻解題」のなかで、
「・・・二銭銅貨は直径3センチ余、厚さ4ミリほどの、どっしりした重い貨幣だった。発表当時はまだわずかながら流通していた。また発表時の点字の書き方に誤りがあったので、昭和36年版の全集で訂正された」と書かれている。
では、この講談社文庫ではどのような点字の書き方になっているのだろう。

上が講談社の「江戸川乱歩推理文庫第1巻 二銭銅貨」に出てくる点字を私が写したもの。星印は濁音符(次の音が濁音になることをしめしている)で、本文では「濁音符」と印刷されているが、文字が小さいので写す時に星印で代行している。
「拗音」の「チョ」「ショ」「チャ」「ショ」にはわかりやすいようにサインペンで囲んでみた。

上の表は私が作った正確な拗音の点字図。

江戸川乱歩は初版本では、左の図のように「ショ → シ+拗音符+ヨ」
「チョ → チ+拗音符+ヨ」と
考えていたようだ。
しかし講談社の『江戸川乱歩推理文庫第1巻 二銭銅貨」では正しく直されている。

しかも特筆すべき事は「チョ」「ショ」「チャ」と小さな「ョ」「ャ」が活字で印刷されていることである。点字2文字で「チョ」「ショ」「チャ」という一つの音を表していることがよくわかる書き方になっている。

それにあわせて暗号文も。たとえば「チ+拗音符+ヨ」の「南無阿陀、弥、阿弥陀」から、「弥、無阿弥陀」に変更されている。ほかの部分も変更されている。これで暗号文と点字の整合性がとられている。
左がその暗号文。私が写し取ったもの。
点字部分には正しく表記されているのに、左の暗号文に活字の誤植があった。
左の本文に丸印をつけてあるところである。

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左は新潮文庫の「江戸川乱歩傑作選」
奥付は
昭和35年12月24日 発行
平成21年4月20日 93刷改版
平成24年6月10日 98刷
となっている。
巻末に「表記について」という文が載せられており、最後に
「なお本作品集中には、今日の観点から見ると差別的表現ととられかねない箇所が散見しますが、著者自身に差別的な意図はなく、作品自体のもつ文学性ならびに芸術性、また著者がすでに故人であるという事情に鑑み、原文どおりとしました。(編集部)」
とある。
解説を荒 正人さんが書かれている。「二銭銅貨」が大正12年4月『新青年』に発表されたもの、という記述があるが、点字の間違いについては書かれていない。

星印は「濁音符」の代わりに私が記入したもの。
これをみると、岩波文庫にあった「拗音符」という記号がない。
「チョ」となる部分が、「チ」+「ヨ」になっている。
「ショ」は「シ」+「ヨ」、「チャ」は「チ」+「ヨ」で、拗音にはなっていない。
この暗号文、点字文には「拗音」がまったくないのだ。

本文の暗号文を見てみよう。
拗音符をあらわす「4の点」、南無阿弥陀仏を点字に当てはめた「弥」の文字が全く見当たらない。

上の講談社文庫の暗号文と点字に変換した部分をみくらべると、そのことがよくわかると思う。

この新潮文庫「江戸川乱歩傑作選」の初版は昭和35年だから、点字部分の修正前の発行になる。しかし、暗号文そのものが岩波文庫(「二銭銅貨」初版をそのまま使っていると説明がある)と違っているのはどうしてだろうか。どうも異本があるように思える。
しかし、平成21年に改版しているので、訂正の機会はあったと思うがそうなっていない。江戸川乱歩の本らしく、謎は今もある。
他にも文庫本があるのでしらべてみることにしよう。