魔改造の夜 その3

技術者養成学校3

第3回目。
講師は「東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授 伊藤亜紗さん」

テーマは「ワンちゃん25m走から学ぶー なぜ魔獣キングスパニエルが生まれたのか?」

「東京工業大学リベラルアーツ研究教育院」で「芸術A」を教えられている伊藤亜紗さんは、ホームページに次のように描いている。
「芸術も科学技術も「ものづくり」という意味では同じ。けれども両者はときに全く正反対の価値を体現します。芸術に触れることで知識としての教養が身につくのみならず、無意識にとらわれていた発想から自由になり、他者と柔軟に関わることができるようになるはずです。」

技術者養成講座3でも
「工学・・・計画性があり、安全で再現度が高い。
    芸術・・・意外性や偶然性があり非日常的」と資料を提示される。
ホームページに書かれている「無意識にとらわれていた発想から自由になりー」の部分と合わせてこの養成講座3での作業テーマは「内なるモンスターを目覚めさせるために、自分を魔改造しよう」と提案された。

この魔改造は、おもちゃのワンちゃんを魔改造して25m走らせる、という競技。
優勝したのが左の「魔獣キングスパニエル」。
なんと頭が4つついている。
作成した技術者によると、「試作にあたえられたワンちゃんが4体。4体とも走らせてあげたかった」という返事がかえってきた。

伊藤亜紗さんによると、この返事こそ悪魔が降臨したからだという。ワンちゃんに悪魔が降臨したのではない、改造スタッフに悪魔が降臨したから魔獣キングスパニエルが誕生したのだ、というのが伊藤亜紗さんの受け止め。

だから学生たちに「内なるモンスターを目覚めさせるために自分を魔改造しよう」というテーマが与えられたわけだ。

さてその方法は・・・・

イギリスのトーマス・トウェイツさんを紹介される。
彼は自分とヤギを合体させ、ゴートマンを実践した人。
伊藤亜紗さんは学生たちにカードを選ばせる。そのカードには、
「ハチ」「ネズミ」「ゆうれい」「タコ」「サボテン」「こうもり」「ホチキス」「カタツムリ」と書かれている。選んだカードと自分を合体させ、魔改造された自分を想像すると、という課題となった。

司会の劇団ひとりは「ハチ」と自分を合体させた姿を説明する。
生徒の一人は「ゆうれい」と自分を合体させた姿を説明している。
ほかにもいくつかが紹介された。
共通していることは、「合体する相手のことを考えた。調べた」ということ。

学生たちは、「思っていなかったことがスラスラとうかんできた」
「自分がもうひとりいて、もうひとりの自分だったらこうなるのではと考えた」
「はじめはバカバカしいと思っていたが、そのバカバカしさを受け入れて楽しみながら思いがけない面白さが発見できた」
などと感想を述べていた。

伊藤亜紗さんは、「自分を拡張するというのではないですね。自分の限界を考えて、そこから違う角度から見ること。そうするとこれまでとは違う発想が得られるのです」とまとめられる。

伊藤亜紗さん、どっかで見たことのある名前だなあと思ってこの番組を見ていた。 あとでネットで調べてみると、以前読んだ本「目の見えない人は 世界をどう見ているのか」の著者だった。
点字ボランティアに興味があるときに読んだ本だ。
視覚障害の人の生活やものの捉え方を知りたかった時にめぐりあった本。
目の見える人と目の見えない人の対話はどのようにして進むのだろうと関心を持ちながら読んだが、こんな人がいるんだなあ、という感心が先にわいた。
なるほど、この人なら「魔改造した自分」を発想するのは自然だと改めて思った。