The Torikaebaya Tale とりかえばや物語10

The sister and brother looked at each other.
Aki said to his sister,
“From tonight, we will change places.
You will become me, and I will become you.”
Haru was very surprised to hear this.
They talked and decided it was the best idea.

 

原作では、Akiはいったん家に帰り、父親にHaruを発見したことと、今は女の姿になっていることを伝える。父親は夢のお告げ(男と女がいれかわったのは天狗の仕業であり、それももう解決するという夢)と同じだと喜び、こう答える。

よし、この人を尚侍にと聞こえて、そこにこそは、代りし給はめ
 よいよい、その女を尚侍にしようと申し上げてくれ。あなたが右大将(Haruのこと)の代わりをなさい。

日を決め、二人はこっそりと宇治の邸を抜け出した。すぐに京にもどるのではなく、しばらくは吉野の山で準備する計画である。

So they had to prepare for the cnage.
They taught each other about their lives.
During the day, Haru told Aki about the people at the emperor’s palace and taught him how to play the flute.
During the night, Aki gave lessons to Haru on how to play the Japanese harp and how to write like him.

このあたりを川端康成さんはこのように訳している。

「私の代わりに大将として、世に交らひになろうと思はれるならば、容貌や姿は、あまり違いはございますまい。大体の表向きのことが違って、よく分からぬとお思いになるならば、利口ぶるようですが、私の承り、また行っていました公事や、某々の人の申しましたこと、またお答えになるべきことなど申し上げますわ。」
などと、すこしも利口ぶらずによく教えて知らせる。琴笛の音、手蹟などはまもなく上手になる。大将と同じように吹きならし、弾きならす様は、また手蹟なども、まして書き似せようと学ばれると、まったく違うところもない。声の様子は、もとは尚侍の方で、男が女の真似をし、大将の方では、女が強い声に使いならしたのだから、よく似ているので、その気配は何処が違はう。驚くべきあはれな兄妹の縁だとおもわれる。」

Haru made a special request for Aki.
She said, “Please take care of Fuyu for me.
Please love her as your wife.”
Aki agreed.

 

入れ替わる準備をする二人は、これまでのお互いの生活をすべて語り合い、教えあった。

げに、すべてつゆ飽なゆ事なくいみじうすぐれてめでたきを、権中納言の事思ふに、心より外の事にぞ侍りけるかし。今はうけばり、わが物といみじう思ひとどめて扱ひ給ひしを、昔ながら物宣ひ寄らむこと

実際、四の君(Fuyuのこと)にはまったく欠点なくたいそうすぐれて立派な女ですが、権中納言(Natsuのこと)は気負って、わが物とたいそう熱愛しお世話していますが、あなたが元通りにお声をかけてくださいませんか

この辺の状況を田辺聖子さんの「とりかえばや物語」より引用する。

「『じつはねえ、春風、ぼくも女東宮のことが心配なんだ。ぼくは尚侍としておそば近くお仕えしているうち、東宮を愛するようになってしまった。きみは男社会で生きてきた人間だ。おどろかないで、冷静にこれからの相談に乗ってくれ。春風、仲間として』
『いいわ。・・・いいから話しなさい。苦労はふたりで分けたら半分になるわ』
・・・略・・・

『右大臣の姫(Huyuのこと)はどうする? あたしは冬日を、あなたが夫として愛してあげてほしいと思うわ。右大臣はあたしの愛が薄いといつもおうらみだったけど、夏雲とのことは、冬日がわるいのじゃなくて、夏雲のよこしまな浮気から出発したこと。夏雲はいま、気負って冬日の世話をしてわがものにしているけど、やっぱりあなたがほんとの夫として愛してあげるべきだと思うわ』
『そうしよう』
秋月は日ごとに、男の気持ちになっていく。」

平安時代は男は笛、女は琴が演奏できることが求められた。二人はどちらの楽器もマスターし、書き文字もそっくり書けるようになる。声はもともと男が女の声を、女が男の声を出すようにしていたのだから元に戻れば、誰もその違いがわからない。
HaruはAkiにFuyuの世話を頼み、AkiはHaruに女東宮の世話をたのむ。こうしてHaruとAkiの「とりかえばや大作戦」は秘密裏に進んでいく。