The Torikaebaya Tale とりかえばや物語9

Meanwhile, Haru was very lonely.
She had given birth to a son and had finally decided to live as a woman.
But her baby’s father, Natus , was not with her.
He was with Fuyu and his other baby.
How funny her destiny was. She had only lived her life as a woman for a short time and she was already tired of it!
The only thing that kept Haru alive was her.son.

Haruは光り輝くばかりの男の子を出産した。NatsuはしばらくはHaruにつきそっていたか、四の君(Fuyuのこと)が出産間近ときくとすぐさま京都に戻ってしまう。
いつ出産があるかわからないと、NatsuはしばらくはHaruのいる宇治にはもどらなかった。

かくのみこそはあるべきなめれ。わが心ひとつにこそ、よろづの事につけて嘆き絶えせぎりしか。おほかたの世につけては、傍なくなりにし身を、あいなくもて静めて類なくだにあらず。かくのみ待遠に思ひ過ぐさむ事もこそ、あほあるべきにもあらね。
所詮男心はこのようなものだ。わたし一人だけが、万事につけ嘆きの絶えぬ思いをするのだった。大体の世間で、傍に立つ人もないくらいに栄達したわが身を、不本意にも身を隠し、類なくよくなったというのでもない。こんなふうにばかり男を待ち遠に思って日を過ごすというのも、やはり本来のあるべき生活とも思えない。

田辺聖子さんの「とりかへばや物語」ではこんなふうに説明している。

「女は、いつもこんなふうに生きていかねばならないのだろうか。
なげくことが多かったとは言いながら、男姿のときの私は、肩を並べるものもないくらいに世間にもてはやさて、栄達していた。
それを惜しげもなく捨てたのではないか。
それなのに、女に戻ればそのへんの、つまらぬ普通の女としか、あつかわれない。
あの男は私だけを愛しているんじゃない。
心を二つに分け、私への愛は二分の一だ。
女は男を待つだけの存在なのか。
こんなこと、どこかまちがっている。
ただ一人の男に、ただ一人の女、と愛されるべきだ。
Fuyu(四の君)の父の右大臣も、世間への思惑から勘当していられるけれど、もともとかわいがっていらした娘だから、いつかはまたもとのように引き取って、丁寧にお世話なされるだろう、 Natsuもいつかは婿として待遇されよう。・・・略・・・
だからといってもとの男姿でいきるわけにはいかず、やはり吉野山へはいって尼になることにしよう」

ここに登場する吉野山というのは、HaruがNatsuとHuyuの子どもを見て、Natsuにそっくりなのにひどく失望したとき、吉野山にいる隠者に相談に行くという場面が以前にあったことに関係している。

この吉野山にいる隠者という人物は、先帝の第三皇子で、唐の国に遊学し様々な学問を身に着けて日本に帰ってきた人である。
中国で結婚し、二人の娘とともに日本に帰ってきた。しかし政争に巻き込まれ謀反の疑いもかけられ、吉野の山に隠遁したのである。
その吉野山の隠者とHaruは懇意になり、いろんな助言をもらう。
また、Haruが姿を消したとき、AkiがHaruを探し求めた時に頼りにした場所であり、人物だった。

男姿に戻り、吉野山の隠者からHaruのいる場所を教えてもらったAkiは、宇治の邸を訪ねる。

Then one night, she had a guest.
It was her brother Aki dressed as a man.
“Aki, my brother, what are you doing here?”
“I’m here to take you back home.”

物語のこの付近の様子を川端康成さんの訳からみてみよう。

「・・・この吉野の山に出家して身を隠そうと思っております」と(Haruは)泣いて云う。
「そんなことをおっしゃいますなよ。父母の君のご在世の間は、私(Akiのこと)もあなたも(Haruのこと)世を思ひあきらめるべきではありませぬ。あなたのために、父上は非常に心配のあまり呆然としておられたのを、見すてて置いて出てまいったのです。本当に何のためにこんな様に忍びかくれていらっしゃることがありましょう。といって男姿におなりになっては、人の噂も具合が悪いでしょう。私は女房等に、留守だと人にはいわないで置けと言いおいて出てきましたから、誰にも見られ知られる事もない身なので、私が居る居ないの区別を知る人もいないでしょう。私の身代わりとしてそのままいらっしゃいませんか。・・・略・・・」

ここからHaruとAkiの「とりかえばや大作戦」がはじまる。