愛蘭土紀行 その20

ケルズの書

トリニティホテルは市内の真ん中にあり、トリニティ・カレッジのごくそばだった。
部屋の窓から外を見ると、なんと消防署があり、はしご車で訓練をしていた。
真夜中に火事があったら、サイレンがうるさく鳴り響くのではと心配になった。
(夜にサイレンの鳴ることはなかった)

朝食のとき、添乗員さんがターキッシュデライト(Turkish Delight )を持ってきた。
ターキッシュデライトというのは、「ナルニア国物語」で、白い魔女がエドマンドを誘惑するのに使われたお菓子。エドマンドはこのお菓子欲しさに兄弟を裏切る。そんなに美味しいものかと本を読みながら思ったが、実物に出会えるのが旅の面白さ。添乗員さんに感謝しながら食べてみる。フルーツゼリーのようで、お餅のような食感。エドマンドは中毒になったように食べたが、私はそんな気持ちにはならなかった。やはり時代背景が違うからかなあ。

朝食の後歩いてトリニティ・カレッジに行く。

私達が行ったところはここの図書館。The Book of Kells がある。

左はここで買った「ケルズの書」のパンフレット。

「ケルズの書」は8世紀に制作された聖書の手書きによる写本。
縦33センチ、横24センチの豪華な典礼用の福音書。内容は「マタイによる福音書」「マルコによる福音書」「ルカによる福音書」「ヨハネによる福音書」の4福音書だそうだ。
中世では文字による写本だけではなく、優雅な装飾画を用いて芸術品としても鑑賞できるものがつくられ、この「ケルズの書」は「ケルト三大写本」といわれ「世界で最も美しい本」ともいわれているそうだ。現在はアイルランド共和国の国宝となっている。

左の本は映画「ブレンダンとケルズの秘密(これは日本語の題名で原題はThe Secret of Kells )」を絵本にしたもの。これもここトリニティ・カレッジの売店で買った。
現地ガイドのナオコさんの説明で、このアニメがアイルランドで大変評判がよかったという紹介があったからだ。
日本に帰ってからTSUTAYAで調べてみると、日本でもDVDが公開されていることがわかったので、取り寄せてもらった。
内容は、バイキングの襲来に備えて塀に囲まれたケルズ修道院に、有名な僧・エイダンが「ケルズの書」を携えて逃げ込んでくる。エイダンは修道院の少年ブレンダンに、必要なインクの材料となる木の実を森に行ってとってきてほしいと頼む。森に行ったブレンダンは森の妖精アシュリンにであう。木の実を持って帰ってきたブレンダンにエイダンは、本の抜けているページを書いてほしいとたのむというもの。そのときバイキングが襲来して来くる・・・(続きはTSUTAYAにあるDVDをどうぞ)。
私はキリスト教徒ではないので、福音書や聖書のことはほとんどわからない。
ここで買った解説書の「The Book of Kells 」も英語なので完璧には理解できない。

そんな時にアマゾンで左の「ケルズの書を読み解く」という日本語の翻訳本が出されていることを知った。
早速購入して読んでみて、ようやく全体の概要がわかった(という気になった)

一部分を引用する。
「多くの人が『ケルズの書』はアイオナで書かれたものではないかと考えている。これには2つの理由がある。まず、カランパ(写本づくりに命を捧げた6世紀の人)が聖書の筆写を好み、また人々にも写本の作り方を指導したこと。そして二番目は、アイオナとケルズの間に密接なつながりがあることだ。
カランパの死から200年ほど後、アイオナ島はバイキングの侵略を受けた。ノルウェーの海を渡って来たスカンジナビアの人たちは、この島の修道院の財宝を奪い、建物を破壊した。修道士たちの長であり修道院の責任者だった大修道院長は、アイルランドのケルズに逃れ、その土地を「カランパ派」として知られる修道士生活の重要な中心としたのである。
『ケルズの書』は、聖カランパの没後200年記念の西暦797年に典礼用装飾福音書として計画されたのではないかと言われてきた。カランパは、西暦597年7月19日に亡くなるまで34年間、神とアイオナの教会につかえたのだ」

アニメ「ブレンダンとケルズの秘密」は、このことをふまえてつくられていることがわかった。

「ケルズの書」は文字だけでなく装飾された挿絵や絵が多数ある。文字が読めない人にも、挿絵でその内容が想像できるようにできていると言われている。

左の本の挿絵を見てみると、大きなXとPとIがあるのが読み取れる。
Xはギリシャ文字のCh をあらわす。Pはr 、そしてXP`I ( ChiRho )は、Christi (キリスト)となるそうだ。
キリスト教の信者にとっては、よくわかることなのだろう。デザインを工夫し、色や形に神経を配ってこの本ができあがっていることは想像できる。
ここ、トリニティ・カレッジでは、ガラスケースの中だが、本物の「ケルズの書」が間近に見ることができるようになっていた。

アイルランドの国宝「ケルズの書」を見終わった私達は、次の「眼を見張る部屋」に入っていった。