左の本は Kodansha English Library (講談社英語文庫)のガリバー旅行記「Gulliver’s Travels」。
この本は原文そのままではなく、Retold されている。
本文142ベージ、そのうしろに10ベージ程度の日本語に訳する場合の注がついている。
日本が登場する場面もあり、短いが「踏み絵」のことがわかる記述があった。
この本のPart3に「The Land of Wise Men 」という章がある。そこのChapter6にそのことが書かれている。
could trade there.
I did not want to do this.
”Your Majesty,” Ì said. “I don’t want to trade. I am just a lost man who wants to go home. Please excuse me from this.”
trample 他動詞 ふみつぶす
crucifix 名詞 キリスト磔刑(たっけい)像の付いた十字架
(オーレックス英和辞典)
キリストがはりつけになっている像が付いた十字架、イエスかマリアの絵をふみつぶすと書かれている、これが「踏み絵」のことだろう。
ガリバーの頼みに皇帝はこたえる。
“But don’t tell the other Dutchmaen,” he warned.
“They wont’t be happy.”
「他のオランダ人には言うな」と警告しているのはこれまでの訳にあったとおり。この本ではここまでで、前回のときに紹介したような密告の場面は省略されている。
密告したのは船長なのかボーイなのかわからない。
今度はペンギンブックスの「ガリバー旅行記」をみてみよう。
作者のスウィフトは1667年に生まれ、1744年77歳で亡くなっている。この時代の人としてはかなり長生きしたと言える。
「司馬遼太郎の街道2」という本によると、
『・・・当時としてはずいぶん長生きでした。平均寿命の2倍ぐらいは生きています。・・・長生きには秘訣がありました。まず食べ物が良かった。さらに当時としては珍しくよく入浴し、清潔だった。もうひとつ、よくジョギングをしていました。雨の日は司祭館の3階までの階段を上がり下がりしていたそうです。(P38)』と書かた。
(親切にも)・・・する(to do )
impose 動詞 課す、押し付ける、強いる
trample 動詞 踏みつぶす
Crucifix 名詞 キリスト磔刑(たっけい)像の付いた十字架
皇帝(将軍)がガリバーを疑うところ。しかラグナダ国との関係からガリバーの要望に応じる。
dexterity 名詞 手際の良さ、機敏さ、巧妙さ
assure 動詞 自信を持って言う。
forgetfulness 名詞 忘れやすいこと、気にしないこと
このforgetfulness が「ついうっかりと」「ぼんやりしていて見逃す」「役人がうっかり忘れたふりをして」という訳文になったのだろう。
しかしオランダ人に首を切られる、というのは納得できない話だが、それくらい「踏み絵」というものが浸透しているということなのだろうか。
evade 動詞 はぐらかす、そらす
malicious 形容詞 悪意のある、意地の悪い
rogue 名詞 悪党、ならず者
skipper 名詞 (漁船、小型商船などの)船長
オーレックス英和辞書には上のように、skipper は船長とあった。
しかしペンギンブックスのこの本には注がついていて、skipper → ship’s boy
と書かれている。船長ではなく船に乗っているboy、という注だ。
これで日本語訳に違いが出る理由がわかった。
一般的な辞書では、skipper は船長だ。しかしペンギンブックスの注によると「ship’ boy 」ということで船長ではない。
スウィフトの書いたガリバー旅行記の原文,原作の表記についてはこれ以上私の力では調べられない。ペンギンブックスの本が原作と同じだとしたら、スウィフト時代のskipper の使い方が ship’s boy の意味だったら、「船長ではなくボーイ、船付き給仕」と理解したほうがいいのだろう。