ちいさい言語学者の冒険

これは一気に読んでしまった本。勉強になった本。
新聞の書評で紹介されていて、図書館に予約申し込みをしたら二ヶ月は待った本。
子育で中のお母さん、お父さんが読むのにぴったりと思った。
就学前のお孫さんを持ったおじいさん、おばあさんにもおすすめ。

「これ食べたら死む?」
どうして多くの子どもが同じような、大人だったらしない「間違い」をするのだろう? ことばを身につける最中の子どもが見せる数々の珍プレーは、私たちのアタマの中にあることばの秘密を知る絶好の手がかり。言語獲得の冒険に立ち向かう子どもたちは、ちいさい言語学者なのだ。かつてのあなたや私もそうだったように・・・

これはこの本の裏表紙にある内容の紹介文。

これだけで、「あるある、ウチの子もそうだった」と思い起こす人は多いと思う。小さな子どもたちのクスリと笑ってしまう表現に、心を癒やすことがあったことを思い出す人もいるだろう。そんな内容を少し学問的に考察した本で、とても読みやすい。
私は一日で一気に読んでしまった。

 

日本語のリズムは拍で作られる。俳句の五・七・五や短歌の五・七・五・七・七はその例である。となんとなく納得していたが、ことはそう簡単ではないようだ。

壁ドンを 妻にやったら 平手打ち(サラリーマン川柳コンクールより)

か・べ・ど・ん・を  つ・ま・に・や・っ・た・ら  ひ・ら・て・う・ち

見事に五・七・五と並んでいるが、さて「ん」と「っ」も一つに数える理由は?と聞かれるとちよっとたじろいでしまう。
この日本語の常識は少数派なのだそうだ。たとえば
「どん」の「ん」。d-o-n という音の連続を、日本語ではdo-nと二つにわけているが、英語ではd-o-nと三つの音が独立している。それが多数派だそうだ。
Christ-massは二音節だけど、日本語の「くりすます」と五拍として数える。
この音節、拍をどのようにして子どもたちは獲得していくのだろう。
絵にあるように、チョコレートをどう区切るのがいいのか。「ちょ・こ・れー・と」と数える子どもは四拍として考えているが、いつか「ち・よ・こ・れ・ー・と」と六拍に数えるようになってくる。
こんな話が沢山紹介されている。

私もこれを読みながら、小学校のときに、じゃんけんで「ちよこれいと」「ぱいなつぷる」「ぐりこ」と階段でゲームをしたことを思い出す。

 

英語を話す子どもたちの例がのっているのも、普遍性があっていい。

子:「Nobody don’t like me.」(誰も僕のことを好きじゃないの、と言いたいが、この
Nobody…..don’t……という二重否定は標準英語では間違いとされている)

母:「そうじゃなくて、Nobody likes me.というの」

子:「Nobody don’t like me.」(言い直すがさっきと変わっていない)

このやりとりを数回繰り返す。

母:「違うの、ほらよく聞いて。Nobody likes meって言うの」(母親も粘る)

子:「うん! Nobody don’t likes me. でしょ」(三単現のsを入れたことは評価したいけれど、うーん、そこじゃない)

教えようとしても覚えません、という例。
ではどうすればいいのか、それはこの本を読んでみること。

言語の旅を続ける子どもたちが、いつの間にか言葉遊びを覚えてきてびっくりすることがある。

「あんたがたどこさ、肥後さ、肥後どこさ・・・船場山にはタヌキがおってさ、それを猟師が鉄砲で撃ってさ・・・」
と続くところを
「・・・船場山には猟師がおってさ、それをタヌキが鉄砲で撃ってさ・・」とか
「・・・船場山にはタヌキがおってさ、それが猟師を鉄砲でうってさ・・」と歌ってニヤニヤしながら親の反応をうかがう保育園児。
「なーじゃそれ、タヌキが鉄砲に弾を入れて構えてバーンとうつんかい、エエ?」と盛大に突っ込むまで何度もくりかえすので、親としては面倒くさい

というところには思わず笑ってしまう。助詞の「が」と「を」の役割を習得し始めたとわかるそうだ。
そして音で遊ぶようにもなってくる。子どもたちの「ことばの旅路をあたたかく見守ろう」と作者はよびかける。

この本の最後のページを紹介しておこう。

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 また、日本語を身につけた大人になった後も、ことばの芸術を楽しむための素養としてはもちろんのこと、ふだんの生活で、政治家の答弁や業者の広告にたまに登場するような「意図的に曖昧にされた表現」にだまされないために武器としても「メタ言語意識」を研ぎすませていたいものです。
 だから、ことばの旅の最中の子どもたちに

「ふとんがふっとんだ〜」
レベルの駄洒落をいくら聞かされよう〜が、

「パンつくったことたる?」
「あるよ」
「わ〜っ、パンツ食ったことあるって!」

「『いっぱい』の『い』を『お』にかえて言ってみて!」

こんな脱力モノの遊びにどれだけ付き合わされようが、
子どもたちのたくましい旅路をあたたかく見守りたいものです。
え!?、大人になってもやっている人が職場にいるのでなんとかしてほしいって?

まだ旅がつづいているんだね!

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「メタ言語意識」とは何か?疑問に思った人は是非この本を。
巻末にはおすすめ書籍、引用文献、参考文献が沢山紹介されている。
機会を見つけて読んでみたいなと思いながらページを閉じた。

 

 

 

 

 

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