映画「ドリーム HIDDEN FIGURES 」

左は映画のパンフレット。

日本での題名は「ドリーム」だが、原題は「HIDDEN FIGURES」

数字を意味するFIGURESと、
人を表すFIGURES。同じスペルが違う意味を表すというところに映画のタイトルの隠された意味がある。
そして「隠された数字」と「隠されていた人物」というのがこの映画の大きなテーマになっているのだ。

この映画はアカデミー賞3部門ノミネート(作品賞、主演女優賞、脚色賞)、全米興行チャート11週連続トップテン入り、「ラ・ラ・ランド」を超える大人気の映画だそうだ。

ただ日本でよく知られている俳優はケビン・コスナーぐらいなので、アメリカに比べると日本での扱いは大変地味だ。
しかし映画の内容は本当におもしろい。

主人公は数学の天才だった黒人の女性、キャサリン・G・ジョンソンは、10歳で高校へ入学、18歳で数学とフランス語の学位をとり、22歳のときに、人種差別を撤廃したウエスト・ヴァージニア大学の大学院に進んだ初めてのアフリカ系アメリカ人である。あとの二人、ドロシー・ヴォーン、メアリー・ジャクソンも数学や物理学にすばらしい才能を持つ黒人女性である。

パンフレットにある映画の内容を紹介してみる。

「1960年代初頭、アメリカが超大国の威信をかけて推進していた有人宇宙飛行計画を背景にした本作は、その”マーキュリー計画”において、黒人の女性数学者たちが多大な貢献を成し遂げた史実を描き出す。彼女たちは、当時まだ色濃く残っていた人種差別に直面し、職場でさまざまな苦難に見舞われるが、卓越した知性、たゆまない努力、不屈のガッツで次々とハードルを突破。そんな彼女たちの驚くべき道のりを、軽妙なユーモアにくるんで親しみやすく伝え、なおかつ心揺さぶるカタルシスもたらすサクセスストーリー(略)」

NASAの宇宙計画に従事していた黒人女性の数学者たち、何人いたのだろう。 映画の主人公達は3人、それぐらいの人数だったのだろうか?
上の写真は、カタログにある黒人女性がオフィスを移動している場面。30人近くがこのオフィスで働いている。原作本によると、70人以上の黒人女性が計算スタッフとして働いていたという。
コンピューターcomputerは、もともとの意味は計算する人、という意味だった。コペルニクスやガリレオの時代から、計算を専門にする人たちはいた。
この映画では、電子計算機というcomputerが登場する前の時代、人間がcomputerだった時の話だ。

この映画の主人公の3人。
ドロシー・ヴォーンは、黒人女性で組織されている西計算グループのリーダー。
キャサリン・ジョンソンは西計算グループから宇宙船の軌道計算のスタッフに移動。初めての黒人女性としてこのオフィスで働く。
メアリー・ジャクソンは黒人女性で初めてのエンジニアをめざしている。
この3人が黒人女性の社会的地位を高めていく努力と情熱が描かれている。

アメリカ初の人間をのせた宇宙ロケットに起きたトラブル。電子計算機computerの値が信頼できない事態に、呼び出されたのがキャサリン。
実話に基づくエピソードは、鳥肌が立つほど感動的だ。

映画のあらすじは、ネットで調べればわかることなのでここには書かない。
ただ3人が歴史を変え、時代の先端になって、黒人女性の未来を切り開いていった事実を描いた映画で、多くの人に見てもらいたいと思った。
アメリカで、観客動員数がラ・ラ・ランドを超えたというのは、家族連れで映画を見た人が多かったこと、学校からの映画鑑賞も多かったこと、貧しい労働者達がこの映画をこぞって見たことに理由があるらしい。
社会的弱者と云われる人たちに元気と勇気を与える映画なのだろう。

私はキャサリン・G・ジョンソンのことは、この映画を見る前から知っていた。
それはケーブルテレビで「タイムレス」という番組を見て知っていたからだ。第八話で、アポロ宇宙船が月着陸の時にコンピューターの故障がおき、それを修理する時に手助けをするのがキャサリン・G・ジョンソンだった。(実際、キャサリン・ジョンソンはアポロ宇宙船の月着陸のときにもNASAにいて仕事をしている。)
私はこのテレビ番組を見て、NASAで働くコンピューターを操作していた黒人の女性がいたこと、私は知らなかったけれどアメリカの黒人の人たちにとっては有名な女性がいることを初めて知った。(タイムレスはDVDになっていてレンタルできる)。

日本にも同じような女性がいる。

2015年12月7日、日本の金星探査衛星「あかつき」の金星周回軌道投入に成功した。
「あかつき」は2010年に金星周回軌道投入に失敗し、それから5年後に再投入されたわけだが、一度失敗した衛星が再挑戦で成功した例はこれまでにない、といわれていたほどハードルの高かったもの。
この軌道計算をしたのがJAXAの廣瀬史子主任研究員。2年半の間、何万ケースもの軌道計算をくり返し、今回の最適解を見出したという。この12月7日以前だと「あかつき」は金星に落下し、この日をのがすと金星にこれ以上接近できなくなるという、ベストタイミングだったという。写真はJAXAのホームページからで、記者会見で説明している廣瀬さん。

上の写真は原作となった本。
内容はずっしりとしたものだが、大変読みやすい文章だった。原文がそうだったのかもしれないし、訳も違和感なく読むことができた。この本の「おわりに」で、作者のマーゴット・リー・シェタリーはこのように書いている。

「NASAに数学者として勤務した黒人女性の話をすると、多くの人が次のような疑問を抱くようだ。どうして自分はこれまでこの物語を聞いたことがなかったのだろう? 本書のための調査を開始してから5年余りの間に、私は数え切れないほどこの質問を受けてきた。これだけ多くの女性たちが関わり、20世紀の決定的な瞬間に直結する歴史が、これほど長い間脚光を浴びずにきたことに、ほとんどの人が驚きを表した。この物語には、あらゆる人種、民族、性別、年齢、背景の人々の心に響く何かがあるように思う。これは希望の物語だ。我が国の歴史に残るきわめて残酷な現実ー合法化された人種隔離と人種差別ーの中にあっても、実力主義の勝利を証明し、才能と努力次第で誰もが高みをめざすことを許されるべきだと訴えている。」

ニューヨーク・タイムズ・ベストセラーリスト第1位の本。
私は映画を見てこの本を読んだが、その順でよかったと思う。私が知らなかったアメリカの人種隔離と人種差別の歴史、そこでしたたかに闘い抜いてきた黒人女性達。
おすすめの映画と本。映画を見れなかった人は、レンタルでも見る価値があると思う。久々、映画を見て高揚感を持って映画館を出た映画だといえる。

 

 

 

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