映画「スノーデン」と「The NET 網に囚われた男」

 

ここは大阪ステーションシネマ。
ステーションシネマというと、私などはつい「天王寺ステーションシネマ」を思い起こすが、ここは梅田。大阪駅、ルクアのあるビルの11階にある映画館。
日曜日とあって朝から多くの人がいた。
見に行った映画は
「スノーデン』。
買ったカタログもポスターと同じ装丁だった。写真ではわかりにくいが

SOLDIER
HACKER
S`PY
HERO
PATRIOT(愛国者)
TRAITOR(裏切り者)

の文字が書かれている。
この映画は1月6日のNHKの朝の番組「あさイチ」で紹介があったもの。そこではこんなふうな紹介があった。

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2017年、最初の「特選!エンタ」は、社会派映画を2作品ご紹介いたしました。
ひとつは、巨匠オリバー・ストーン監督の最新作、「スノーデン」。2013年、アメリカ国家安全保障局(NSA)による、秘密裏に構築した国際的な監視プログラムでの個人情報収集の手口を告発した、いわゆる“スノーデン事件”の全貌に迫った作品です。綿密な取材、そしてストーン監督自身によるスノーデン本人との数度のセッションを経て、もともと祖国のために貢献したいと、アメリカ合衆国軍に志願入隊したほど愛国心のある若者だったスノーデンが、なぜ母国の国家機密を漏らし、国際的に告発するにいたったのかという心情の変化を丁寧に描いた人間ドラマでもあります。果たして、スノーデンは売国の犯罪者なのか、正義を貫いた英雄なのか!?         (NHKのホームページより)

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これは本当に身体がヒヤリとする映画だった。ジョージ・オーウェルの書いた「1984」の世界が現実化しているのではないか、あるいは筒井康隆作「48億の妄想」のような、監視カメラが町中に設置され、カメラがあることを知りながら生活する時代が、現実になった、と考えさせる映画だった。

上の写真はネットの予告編からとったもの。
日本が同盟国でなくなったら、日本の電力など全てのインフラはアメリカに乗っ取られるというシーン。電気の光で日本列島の形が浮かび上がっていたものが、南からどんどん光が消えていく様子が画面いっぱいに広がった。
同盟国といえどもこうなのだ。Wikipediaにもそのことが文章としてのっていた。本当なのだろうか? 映画にするための脚本なのだろうか。

上の写真もホームページからのもの。NSA(米国国家安全保障局)やCIA(中央情報局)が監視している相手側の携帯電話などから、場所を特定し、攻撃しているところ。中東戦争でも同じようなことが行われているのだろうか。
北朝鮮の金正男氏暗殺の報道を見ていると、監視カメラがいたるところに設置されており、その性能や分析能力のすごさにびっくりしてしまう。現実の世界の暗部を見る思いがする。

主人公のスノーデンさんは現実に今もロシアにいる。アメリカに帰れば終身刑だろうといわれている。またロシアのプーチン大統領は情報畑出身なので、国を裏切るスパイは許さないと言われている。今は2020年までロシアに滞在することを許されているが、アメリカ大統領がトランプ大統領になったため、今後のことはわからない。またこの映画をスキャンダル事件だけの映画にに終わらさない役割を果たした、恋人のリンゼイ・ミルズさんは、ロシアに行きスノーデンさんと一緒に生活している、と映画の最後にあった。この二人はどうなるのだろうか。
 映画で表現されたことが全てではなくとも、携帯電話、スマホ、ネットにつながったパソコンの個人情報は盗聴されている、という可能性は非常に高い。
人に見られたり、読まれたり、調べられている、ということを意識してスマホやネットを使う、ということを常識にしなければならない時代になったのは確かだ。

この映画は朝の放映だったが、会場は満席だった。若い男女も多く、ほとんどがいわゆる勤労者という年代の人達だった。それだけ関心が高い映画だったのだろう。

次に見た映画が「The NET 網に囚われた男」という韓国の映画。

これも上の「スノーデン」と同じくNHKの「あさイチ」で紹介があったもの。

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そしてもうひとつは、「The NET 網に囚われた男」です。監督は、カンヌやヴェネチア、そしてベルリン映画祭で数々の賞を獲得してきた韓国の巨匠、キム・ギドク。ボートの故障により韓国の警察に拘束されてしまいスパイ容疑をかけられてしまう、北朝鮮のひとりの漁師を主人公に、朝鮮半島の南北分断が人々にもたらす苦悩や悲哀、そして国家権力に疑われてしまうと国や権力から疑われた際の個人の無力さと尊厳のあり方など、多くを考えさせられる作品です。(NHKのホームページより)

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ここは「テアトル梅田」。

以前「この世界の片隅に」を見た映画館。映画マニアがよく来るところだと思う。

ここも映画開始時間のだいぶ前から待合スペースがいっぱいになっていた。
この映画の内容をカタログで紹介すると、
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「北朝鮮の寒村で、妻子とともに貧しくも平穏な日々を送る漁師ナム・チョル。その朝も、唯一の財産である小さなモーターボートで漁に出るが、漁網がエンジンに絡まりボートが故障。チョルは意に反して韓国側に流されてしまう。韓国の警察に拘束された彼は、身に覚えのないスパイ容疑で、執拗で残忍な尋問を受けることに。
一方チョルの監視役についた青年警護官オ・ジスは、家族の元に帰りたいというチョルの切実な思いを知り、次第にその潔白を信じるようになる。そんな時、やはりスパイ容疑で捕らえられた男が、チョルにソウルにいる娘への伝言を託して、自らから舌を噛み切り息絶える。
やがてチョルを泳がせようという方針から、物質文明を極め人々が自由に闊歩する、ソウルの繁華街に放置される。街を彷徨う彼は、家族を養い弟を大学に入れるために身を売る若い女性と出会い、経済的繁栄の陰に隠されたダークサイドに気づく。なんとか探し出したかの男の娘に伝言を告げ、ジスが待つ場所に戻るチョル。ところが、街中のチョルの姿を移した映像が北に流れ、南北関係の悪化を懸念した韓国当局は、チョルを北朝鮮に送還する。帝国主義の誘惑を退け、晴れて祖国に帰ってきたチョルだが、彼を待ち受けていたのは、一層過酷な運命だった。」

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映画のあらすじによって、これからの展開は予想できると思う。
虚しくて悲しい映画である。韓国でスパイ容疑として尋問され、帰ってきて英雄扱いされるも、北朝鮮でもスパイ容疑として、韓国と全く同じような方法で取り調べられる。権力による横暴と弾圧、かつての日本でも同じようなことがあったのだろう、と思いながら、韓国や北朝鮮ではこの映画以上のことが行われているのかもしれない、という気持ちがわいてくる。分断されている国の悲劇がここにある。

買ったカタログによると、脱北者にソウルなどの繁栄した都会を見せることは有効だと書かれていた。大韓航空機爆破事件の実行者として逮捕された金賢姫も、ソウルの繁栄ぶりを見て北朝鮮への忠誠心がゆらいだと書かれている。

国家が分断された北朝鮮と韓国。もし日本が太平洋戦争で西日本と東日本に分かれて連合国に支配されていたらどうなっていただろう。東ドイツと西ドイツのように、東西が統一してもその経済格差はドイツ国民の意識に影を落としていると聞く。
この映画で、北朝鮮の漁民チョルと韓国の若い警護官オ・ジスとの心のつながりが未来への希望を表している。しかし二人の「南北統一後に会いましょう」という約束は果たされなかった。

インターネットが一般家庭で自由に使われるようになり始めた時、インターネットの解説書で読んだことを思い出す。
日本でネット=網から連想するのは、「網の結び目」。つながる網の中心にある部分、そこから四方八方に伸びていく姿。
しかしヨーロッパやアメリカでは網の糸の部分。蜘蛛の巣という言葉から連想するのは網そのものが広がってい姿だと思う。それがネットだと考えるそうだ。

映画『スノーデン』は世界中に広がる網に取り囲まれ、包み込まれている人間の姿を表している。
映画『The NET 網に囚われた男』は網で獲られた魚のように動けば動くほど絡まる網と、それを作っている北朝鮮と韓国それぞれの大きな結び目を連想させた映画だった。網の目も結び目がとけない限りゆるむことはない。

国と国をつなぐ海が人間によって分断の線を引かれ、世界や宇宙にまで広がり伸びるサイバー空間は地球・人間をすっぽり覆っている。
繁栄の陰にある貧困、オ・ジスが言っていた「光があれば影があるんです」。
映画が終わり劇場が明るくなっても、話し声が全く聞こえない。静けさが広がっている映画館だった。
待合スペースには次の放映を待つ人達が、列を作ってまっていた。
映画『スノーデン』は間もなく終わる。「The NET 網に囚われた男」は2月25日に封切りされた。今を考える映画だと思う。

 

 

 

 

 

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