松本侑子さん「金子みすゞ」を語る

「赤毛のアン」の翻訳で知られている松本侑子さんの講演会が京都の八幡市文化センターであった。
カナダやスペイン・フランス、そして昨年のドイツ旅行にお世話になった松本侑子さんのブログでこの講演会のお知らせがあったので、妻と二人参加した。

「詩人・金子みすゞ〜大正デモクラシーと昭和軍国主義」

この本は講演の中で松本さんが紹介された本(JULA出版局、監修・矢崎節夫)。

本にには「私と小鳥と鈴と」「おさかな」など金子みすゞさん直筆のノートからコピーしたものが多くのせられている。

金子みすゞ、さんは明治36年(1903年)に生まれ、昭和5年(1930年)に亡くなっている。「金子さんの生い立ちは、大正デモクラシーと重なっている」と松本さんは言う。それは私が全く知らなかったこと。金子みすゞさんの詩は少しは知っていたが、大正デモクラシーがそこに関係があるとは思いもつかなかった。また大正デモクラシーのことも勉強した記憶がほとんどない。
そういう意味では、昭和・平成の世の中の流れでいきてきた私が、金子みすゞさんの生き方を通して、大正デモクラシーや民主主義の世の中について考えるいい機会になった。

松本侑子さんが金子みすゞのついての小説を書いているということは、松本さんのブログやホームページに書かれていたので知っていたが、どうして?とそのきっかけがこの講演でわかった。
金子みすゞさんの実の弟が残したたくさんの日記が高知県の図書館で発見され、その解読と研究をされていたのだ。そこからこれまであまり知られていなかった金子みすゞさんの生き方や新しい真実がわかり、それを小説として作品に仕上げるという仕事をされていたのだ。

松本侑子さんの新しい本の紹介から引用すると、

「弟・雅輔(がすけ)から見た、金子みすゞという女性、彼女の人生、美しい童話、そして若い死・・・・。
『みすゞと雅輔』・・・二人は姉と弟でありながら、金子家と上山家で別れて育つ。そんな二人の出逢い、10代の初々しい友情、詩人みすゞの誕生と結婚、雅輔の上京、そしてみすゞの自殺、雅輔の傷心と再起・・・。大正ロマンと昭和モダンの時代、二人の青春の輝きと影、童謡の盛衰を描く文芸小説。
2014年に発見された弟・雅輔の日記とノートに基づいた、新しい金子みすゞ像の誕生!」

弟の雅輔さんのことは全く知らなかった。松本侑子さんの解説によると、1歳のときに金子家から上山家に養子に出て、みすゞが実の姉だとは知らされないままに育ったと言う。そして東京に出て脚本家、作詞家、演出家として活躍した。戦前から喜劇王の古川ロッパと仕事をし、「お使いは自転車に乗って」などの流行家の作詞。戦後は劇団若草を創設し、竹脇無我、音無美紀子などの俳優を指導したという。

同じ時代を生きながら、みすゞさんの傷心の死、雅輔さんの成功と、姉弟の生き方を通して大正・昭和の世相を知ることができる小説のようだ。

童謡は詩としてうまれた

童謡というとすぐにメロディーが思い浮かぶ、というのが今の時代だ。 北原白秋の「からたちの花」や「この道」と聞くと、すぐに耳の中にあのメロディーが流れる。 でも最初はそうではなかったと松本侑子さんは話される。
文字を読み、自分の口で声に出して読むことによって詩の世界に入っていく。松本侑子さんはそうして幾つかの詩を朗読された。

それに曲が付けられ、楽譜が書かれ、メロディーがラジオから流れるようになると、童謡=歌(声を出して歌う歌のこと)になったと説明された。

ラジオやレコードやミュージックテープのなかった時代、本に掲載された詩が人々の心を掴んだ時代だ。雑誌「赤い鳥」「金の船」「童謡」が三大雑誌として有名になり、20代〜30代の若い文学者、音楽家が童謡運動を展開した。雑誌の投稿欄には若い読者が自分の詩を投稿した時代。それが金子みすゞさんたちの時代だったのだ。

日清日露戦争のあと、子どもの世紀として期待された大正デモクラシー。政府が学校教育のために作った小学校唱歌。それを批判して文学的、童心主義をめざした童謡。関東大震災で大打撃を受けた日本(大正12年)。時代は軍国主義に傾きはじめ、言論の自由の統制化(罰則として死刑も)、雑誌の発禁処分、そして自主規制。
音楽としての童謡は広まるが、文学としての童謡が衰退化、童謡雑誌がつぶれていった。

松本侑子さんは「童謡や音楽が規制されるようになってくると、あぶないですね」と言われる。ちょっと今の世相が心配になってくる。

わらべうたと童謡と小学校唱歌の違いや、時代に翻弄されたり、時流にのって生き残りを考えた詩人などの話があり、声帯炎で声を痛めておられるのに聞き取りやすくて幅広い内容のある興味深い講演会だった。

講演会で紹介された金子みすゞさんの生家などの写真は松本侑子さんの撮った写真。「赤毛のアン」の翻訳のために現地カナダやアメリカで資料集めされた松本侑子さんならではの、緻密な調査や聞き取りのうえに新しい本「みすゞと雅輔」があるようだ。さっそくこの本を予約しよう。

この日は2月4日。厄除けに行こうと妻がいうので、近くにある石清水八幡宮に行くことになった。

 

 

 

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