壽初春大歌舞伎

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1月2日からはじまった松竹座での「壽初春大歌舞伎」も千穐楽まぎわになって見に行くことができた。

今年の初春大歌舞伎は夜の部を観劇をした。

歌舞伎役者としての市川中車さん(香川照之さん・澤瀉屋)を初めて舞台で見るのが楽しみだった。

演目は次の三つ。
1.桂川連理柵(かつらがわれんりのしがらみ)帯屋

2.研辰の討たれ(とぎたつのうたれ)

3.芝浜革財布(しばはまのかわざいふ)

一つ目の「桂川連理柵 帯屋」は、初めて見る舞台。
江戸中期に京都の桂川に年配の男性と14、5歳の娘の死体が流れ着くという、現代でもショッキングな事件があり、それを題材として浄瑠璃や歌舞伎になったというもの。今日の舞台は安政6年(1777年)に歌舞伎として上演されたものがもとになっているそうだ。
私は事件の内容よりも「連理の柵」という言葉に反応してしまった。
NHK放映中の朝の番組「あさが来た」で、五代厚友が新次郎に、あさと新次郎の仲を「うーん、相思相愛、いや比翼の鳥だ」と言ったことを思い出したからだ。

「比翼の鳥・連理の枝」といえば高校の漢文で習った「長恨歌」に出てくる有名な言葉。青春まっただ中の高校生にとっては、なんとも魅力のある言葉だった。
言葉というものは不思議なもので、連鎖反応のように時と時代と場所をこえてつながってくる。
その連理の枝が柵(しがらみ)の中でどうなっていくのか、というのがこの舞台。

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さて歌舞伎の「桂川連理柵 帯屋」は、帯屋長右衛門に人間国宝の坂田藤十郎さん、夫のために心を砕く女房お絹に中村扇雀さん、乗っ取りを考えている義理の弟儀兵衛に愛之助さん、そして丁稚と娘の二役に壱太郎さんという魅力ある配役。渋みのある藤十郎さんの抑えた演技、愛之助さんの軽妙で憎めない悪役ぶり、そして日本人形のような壱太郎さんの「お半」。
長右衛門の論理は現在の私では理解し難い。でもそれが江戸時代の生き方と思うと人間の心理の複雑さとそれを舞台劇に昇華しようとする作者の深みを感じる。

二つ目の「研辰の討たれ」は、以前に中村勘三郎さんの「野田版研辰の討たれ」を見たことがある。舞台を立体的に使って、これが歌舞伎?と思う反面、これも歌舞伎、と納得する舞台だった。今回は正統派「研辰の討たれ」のようだが、愛之助さんと中車さんの性格の対象的な演技と、壱太郎さんの若侍もおもしろかった。
舞台と客席が一体となって、この演目に惹きこまれていくのは、野田版と一緒だった。それにしても愛之助さんが座った客席はもとから空席だったのか、それとも舞台用に空けて置かれたものか? アドリブだったのかなあ。

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この歌舞伎の元になった事件は、文政10年(1827)に讃岐の国で起きた仇討事件。これが芝居として上演されるようになったらしい。ただこの事件そのものは武士どうしの事件ではなく、町人が武士を殺し、その仇討をしたということで、それがこの芝居が人気となった理由らしい。しかし今日の舞台は大正14年(1925)に歌舞伎作者の木村錦花が舞台化したもの。研辰が町人上がりの武士として描かれている。
根っからの武士の平井兄弟と元町人の研辰こと守山辰次の性格の違い、武士道の捉え方の違いが軽妙に、かつ結果的には深刻に描かれていると思った。
野田版の時もそうだったが、口の中がざらつくような後味がのこる幕切れ。
「えーっ、結局闇討ちか?!」というような感想や反応をネット上で見つけたが、そんな単純なものではないと私は思う。
番付の亀岡教子さんの紹介にある、近松門左衛門のいう「虚実皮膜」の芸術、真実と虚構の微妙な境界がそこにはある、ずっしりと心にこたえる演目だったと思う。

さて最後は落語でもよく知られいる「芝浜」をもとしたもの。

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市川中車さんの良さがよく出ていた舞台だったと私は思った。
落語の「芝浜」は、古今亭志ん朝さんのCDを車でよく聞いていた。
私のなかでは、人情話といえば「芝浜」と「紺屋高尾」が浮かんでくる。

よく知られた話なのであらすじは書かない。
女房おたつの扇雀さんがとてもよい。政五郎の中車さんとぴったりと息があっている。心を入れ替える中車さん演じる政五郎、そして舞台が変わって3年後のおたつと政五郎、ああこの3年間二人共一心不乱に働いたんだなあ、と伝わってくる。こんな時の中車さんは生き生きしている。
そして私が気になったのは、最後におたつのすすめるお酒を飲むのかどうか。
落語では「夢だったらいけねえ」と飲まないのだが、
歌舞伎ではお正月の出し物らしく美味しそうに飲む。
そして落語にはない、火事で焼け出された人たちへの正月餅への寄進としてその財布のお金を使うことでおわる。
人情話らしい、すべてが丸く収まるというわけだ。
途中で獅子舞が出できて、新春らしい雰囲気が舞台いっぱいに流れる。私も久々本格的な獅子舞をみることができて楽しかった。

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愛之助さんと中車さんがでてくるので、どうしても「土下座」ギャグが多くなる。まあそれもしかたがないかと思うが、そろそろそれも過去のものにしてほしいと言う気持ちも正直でてくる。

午後の部は、心中物、仇討物、と深刻な演目のあとに、「芝浜革財布」で笑顔になって終わるという段取りだった。
お正月らしく、苦労のあとにはハッピーエンド。今年一年が良い年でありますように、という気持ちがわいてくる。

道頓堀は相変わらずの人出。
外国からの観光客も多い。
私が外国に行ってスペインのフラメンコやポルトガルのファドを見に行くように、この人達はどうなのだろう。
買い物ツアーも大阪の経済にとって大事だが、大阪の文化を知らせるというツアーもきっとあると思う。が、なかなかそういった団体には私は出会わない。

 

 

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