弱き者の生き方

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昨年末から年明けにかけて読んだ本。
大塚初重さんは、読売新聞朝刊に日本の古代遺跡の発掘についてのコラムが連載され、その内容が大変面白かったので知った人。
もう少し詳しく知りたいなあと思って、ネットで本の検索をしてこの五木寛之さんとの対談集を発見した。

大塚初重さんの背景は、この本にある著者の紹介を引用すると、
「1925年(大正15年)東京都に生まれる。45年に輸送船が二度撃沈され、九死に一生を得る。復員後は働きながら明治大学の夜間部に学び、同大学院文学研究科史学専攻博士課程終了。日本考古学会の第一人者として、登呂遺跡や綿貫観音山古墳をはじめ、多くの発掘を手掛ける。日本考古学協会会長のほか、文化庁文化財保護審議会専門委員、山梨県立考古博物館館長等を歴任。現在、明治大学名誉教授、登呂遺跡再整備検討委員会委員長。2005年瑞宝中綬章叙勲。著書に『日本古墳大辞典』(共編著)『東国の古墳と大和政権』『君よ知るやわが考古学人生』『考古学から見た日本人』など多数。

同じように五木寛之さんの背景は、
「1932年(昭和7年)福岡県に生まれ、生後まもなく朝鮮にわたり、戦後47年引揚げ。66年「さらば、モスクワ愚連隊」で第6回小説現代新人賞、67年「青ざめた馬を見よ」で第56回直木賞、76年「青春の門」筑豊篇ほかで第10回吉川英治文学賞を受賞。代表作に「朱鷺の墓」「戒厳令の夜」「風に吹かれて」「大河の一滴」「生きるヒント」シリーズなど多数。英文版「TARIKI」が2001年度「BOOK OF THE YEAR」(スピリチュアル部門)に選ばれた。02年に第50回菊池寛賞、04年に第38回仏教伝道文化賞を受賞。現在直木賞、泉鏡花文学賞その他多くの選考委員をつとめる。最近作には「21世紀仏教への旅」シリーズ、『林住期』など。

お二人の戦争体験がすごい。
大塚さんは二度自分ののっていた輸送船が、アメリカの潜水艦に撃沈されている。
五木さんの朝鮮からの引揚げ体験は、私は文字に書けない。

お二人の戦争体験は、私はこの本を声に出して読むこともできないし、字に写すこともできないほどのショックを受けた。しかしこの対談集をに読んでよかった、是非とも多くの人に読んでほしい本だと思った。

その内容はここに書いて紹介するよりも、自分の手にとって読むことのほうが大切だ思うので目次などを紹介しておく。

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まえがきにかえて
 ここまで語ることは許されるのか? 五木寛之

第1章 弱き者、汝の名は人間なり
 人は弱し、されど強し
 虎屋の羊羹、銀座のネオンで殴られる
 ジェノサイド(集団殺戮)そのものの東京大空襲
 生き地獄ー戦友を蹴落として生き延びる
 悪を抱えて生きること
 語りえなかった引き揚げの真実

第2章善人なおもて往生をとぐ、いわんや悪人おや
 極限状態で交差する善と悪
 二度目の撃沈と敗戦
 涙の漫才修行ー人生には無駄はない
 日本の植民地支配の爪あと
 語られない引き揚げ者の悲劇ー残留孤児と不法妊娠
 右へ左へ揺さぶられ続けるのが人生

第3章 心の貧しさと、ほんとうの豊かさ
 肉親の死を身近に感じる大切さ
 お金という魔物
 学内闘争でつるし上げられる
 わが青春の登呂遺跡発掘
 人は泣きながらに生まれ、時に優しさに出あう
 経済的貧困と貧しさの違い
 金では買えない「誇り」を抱いて

第4章 人身受け難し、いますでに受く
 人生の峠道でたたずむ
 人間性と謙虚さー前田青邨先生の教え
 斜陽館での一夜ー師匠と弟子の「人生劇場」
 赤線とドジョウすくい
 想像力の欠如と「心の教育」
 人間として生まれた奇跡と幸運
 なぜ人を殺してはいけないのか

第5章 人間は、ひとくきの葦である
 「負け組」などいない
 辛いことも直視する勇気を持ちたい
 時には黙ってただ寄り添うことも大事
 潔癖すぎる現代社会
 だれにでもある不安やコンプレックス
 弱き者たちへー人は皆、それぞれの生を生きる

あとがきにかえて
 人は苦境に陥ったときこそ真価が問われる 大塚初重

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この本の章のはじめのページには、お二人のお話が少し紹介されている。
たとえば第1章では、

脚にしがみついてくる戦友を、私は両脚で燃え盛る船底に蹴り落としたんです。船底からは、海軍の下士官が持っているピーピーという笛の音が聞こえてくる。助けてくれという笛の音が。ー大塚

ソ連兵に「女を出せ」と言われると、嫌がろうがなんであろうが、トラックからだれか女性を押し出すようにして出すしかない。その女性を人身御供にして、われわれは三十八度線を越えたのです。ー五木

第2章では、

自分たち引揚者は、韓国や他の国に対する植民地支配への代償を、他の日本人たちに代わって少しは償ってきたんだよ、母を置いてきたよ、弟を置いてきたよ、という気持ちが心の底にちよっとあるんです。ー五木

朝鮮人の家族に助けられ、ぐったりしている私の背中を、「アイゴー!(哀号)アイゴー」と哀しそうに、その家のおばあちゃんが何度も何度も優しくなでてくれました。ー大塚

戦後70年とひとくくりでは言えないそれぞれの生き方がある。人生がある。
墓場まで自分の胸に閉まっておきたい体験がある。
でも、自分が今ここに生きていることが、過去の体験をよみがえらせ、自分をここまで生かせてくれた力の源を考える。そんな本だと思った。
私は「戦争を知らない世代」と言われて生きてきた。
でも大塚さんと五木さんお二人の対談を読むことによって、少しはその体験や経験に近づくことができる。

珍しく晴れたお正月の三が日。
今、この時代に生きている私が、何ができるのか。そんなことを考える一つのきっかけになった本だとあらためて思う。

「弱き者の生き方
    日本人再生の希望を語る」 著者 大塚初重/五木寛之
                    発行所 毎日新聞社
                    2007年6月25日発行

 

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