阿弖流為(アテルイ)

松竹座で公演中の歌舞伎NEXT「阿弖流為」を見に行く。歌舞伎NEXTとは?

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IMG_20151009_0002作  中島かずき
演出 いのうえひでのり
俳優 市川染五郎、中村勘九郎、中村七之助などの芸達者な面々。

劇の内容は、パンフレットによると以下のとおり。
「古き時代、日の国ー。大和朝廷は帝による国家統一のため、帝人(みかどびと)軍を北の地に送り、そこに住むまつろわぬ民、蝦夷(えみし)に戦いを仕掛けていた。その頃、都では蝦夷の”立烏帽子党”と名乗る盗賊一味が人々を襲っていた。それを止める一人の踊り女。
彼女こそ立烏帽子(中村七之助)。女だてらの立烏帽子党の頭目だった。
街を襲う盗賊が自分たちの名を騙る偽物であることを暴くために変装していたのだ。そこに都の若き役人、坂上田村麻呂(中村勘九郎)もかけつける。さらに”北の狼”と名乗る男(市川染五郎)も現れ、偽烏帽子党を捕らえる。
この事件をきっかけに、北の狼と田村麻呂は互いに相手に一目置くようになる。
だが、北の狼と立烏帽子は、蝦夷が信じる荒覇吐(あらはばき)神の怒りを買い、故郷を追放された男女だった。
北の狼の本当の名前は、阿弖流為(アテルイ)。故郷を守り帝人軍と闘うため、立烏帽子と二人、蝦夷の里に戻ることにする。
荒覇吐神の怒りをおさめた阿弖流為は、蝦夷の兵を率い、帝人軍と闘う。
彼の帰還を快く思わぬ蝦夷の男、蛮甲(ばんこうー片岡亀蔵)の裏切りにあいながらも、丹沢の砦を取り戻した彼は、いつしか蝦夷の新しい長として一族を率いていく。一方田村麻呂も、帝の巫女である姉、御霊御前(みたまごぜんー市村萬次郎)や右大臣藤原稀継(ふじわらのまれつぐー坂東彌十郎)らの推挙により、征夷大将軍として、蝦夷との戦いに赴くことになってしまう。
阿弖流為と田村麻呂、互いに認め合う二人の英傑が、抗えぬ運命によって、雌雄を決する時がこようとしていた」。

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歴史は勝者のもの。支配者の都合の悪い部分は切り取られ、「正義」の名のもとに少数者は切り捨てられ、忘れ去られるように仕組まれる。

「阿弖流為」という名は歴史上にはほんの少ししか残されていないようだ。
しかし残されていたことによって、結果的には1300年たった現在によみがえることになる。

この歌舞伎NEXT「阿弖流為」はあくまでも想像の産物。現代が創造した演劇。登場する人物や団体名は実在するものではありません、とテロップがながれるドラマと同じである。
しかし歌舞伎は支配者の思惑や時代の主流から一歩外れ、斜めに時代と人間を見ることによって民衆の支持を得てきたもの。そのコンセプトがしっかりとこの歌舞伎NEXT「阿弖流為」に生きている。

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市川染五郎ファン、中村勘九郎・七之助ファンにとってはもうたまらない出し物になったと思う。三人三様の魅力がたっぷりだし、その他の登場人物のだれもが「おれが主役だ!」と舞台から飛び出してくるように観客に迫ってくる。
舞台効果も音も光も効果満点。衣装は堂本教子さん(舞台衣装では有名な人であることを後で知った)、そして現代の音響機器と歌舞伎の拍子木や太鼓などの伝統音楽が見事にコラボレーションし、「阿弖流為」の中に観客を引き込んでいく。

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左の写真は歌舞伎流に番付といえばよいのか、プログラム。
そして私の左手首あるのが、この「阿弖流為」に全員参加のためのアイテムのリストバンド。
こんな説明書きが一緒にあった。

「お客様へのお願い
本日はご来場いただきましてありがとうございます。
蝦夷と帝人軍の様々な人間模様を描く本作ですが、蝦夷の星空はたいそう見事なものだそうです。
お配りした白いリストバンドはそんな”蝦夷の星空”の素です。

壱 二幕目がはじまるまでに腕にお巻きください。
弐 お芝居のエンディングで自然に光ります。

参 光りましたら手を揚げて一緒に蝦夷の星空をつくりましょう。
  *少しだけ腕を揺らすと尚良いです。
IMG_20151009_0005会場いっぱいの星空を写真に撮れなかったのが残念だった。
蝦夷の星空と劇場内の星、それは地上の星となって歴史を作り、消えていった人々のことをおもう星たちだった。

インターネットを見ると、この「阿弖流為」の感想がいくつもあった。 みんな感激して観劇したことが想像される。 わたしは歌舞伎NEXTのことも作者の中島かずきさん、演出のいのうえひでのりさんのことは、いくつか見た劇団☆新感線の舞台劇ぐらいでしか知らない。
でも「おもしろかった」。
第2部の2時間が、月次な言い方だが、あっという間に終わってしまったという感じだった。
内容がありメッセージもたっぷり仕込まれている原作も演出もすばらしい。そしてその素晴らしい作品に生命を吹き込んだのが市川染五郎さん、中村勘九郎さん、中村七之助さんたちの舞台俳優の面々だったと思う。

カーテンコールが3回! 1階も2階も私が見えるところはほぼ100%のスタンディングオーベーション。松竹座がこんなに盛り上がった舞台は見たことがない。
帰りの階段、エスカレーターはほとんどの人がニコニコ笑顔だった。
あー、良い物を見た。楽しかった、足どりが軽い、明日はいい日になるかもしれない、何かそんなワクワク感が劇場内に流れていた。

「アテルイ」という言葉を聞いた時に、何か以前に耳にしたことがあるような気がしていた。帰って調べてみると、あった、これだ。

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http://www.nao.ac.jp/gallery/weekly/2014/20140422-aterui.html

阿弖流為1理論天文学の望遠鏡、スーパーコンピュータ「アテルイ」

Cray XC30「アテルイ」は国立天文台が運用する第4世代の数値シミュレーション専用スーパーコンピュータです。水沢VLBI観測所に設置され、2013年4月から共同利用運用をしています。24,192コアという非常に多くのコアを使用することで、システム全体で502Tflopsという高い理論演算性能を実現しています。アテルイはその中に宇宙を作り出し、実験的に天体現象を解明する、いわば理論天文学の「望遠鏡」なのです。

アテルイが見る宇宙

アテルイが計算しているのは、宇宙におけるあらゆる現象です。宇宙全体の構造の形成のような非常に大きなスケールから、地球のような惑星がどのようにしてできるかという小さなスケールのものまで、幅広い範囲の天体現象を扱っています。さらに138億年という宇宙が始まって現在に至るまでの長い時間から、ほんの1秒にも満たない星の爆発の瞬間まで、さまざまな時間スケールの現象をシミュレーションによって明らかにしようとしています。

アテルイの由来

アテルイ(阿弖流為)は、奈良時代から平安時代はじめに水沢付近に暮らしていた蝦夷の首長です。朝廷の大規模な軍事遠征に対して勇敢に戦った英雄として知られています。このスーパーコンピュータも、水沢の地で果敢に宇宙の謎に挑んで欲しいという願いをこめて、アテルイという愛称がつけられました。筐体には、篆書の「阿弖流為」を電子回路のようにデザインしたロゴが記されています。

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高さ2m、長さ12m、奥行き1m50cm。、重さ約9トンという、天文学専用では世界最速のコンピュータだ。岩手県奥州市(おうしゅうし)に設置されている。

それにしても、国立天文台のスーパーコンピュータに「アテルイ」というニックネームがつくなんて。
戦神としてこの地を呪うのではなく、宇宙の仕組みを追求する最先端で闘う神となったのかもしれない。
「アテルイ」という名前は生き続けている。

 

 

 

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