アンとChestnut(栗)
写真はChestnut cake 、クリのケーキ。
栗の実をもらったので、クリを使ったスイーツを、とおもって調べてみた。 ホットケーキミックスを使った簡単に作れそうなクリのケーキがあったのでそれをつくってみた。
クリは圧力鍋をつかって柔らかくし、皮をむいた。
参考にしたレシピは以下のとおり。マロンペーストの作り方ものっていて、とてもありがたかった。
http://cookpad.com/recipe/1977105
このケーキを作りながら、フット考えた。
アンは秋にクリを使ったお菓子や料理をしたのだろうか。
そこで「赤毛のアン」「アンの青春」「アンの愛情」の三冊について調べてみると、なんと植物のクリ Chestnut の単語があるのは、「赤毛のアン」の一冊だけだった。
「アンの青春」「アンの愛情」には、 chestnut curls という言葉が出てくる。
これは「栗毛色したカール(巻き毛)」のこと。
松本侑子さんの訳を見てみよう。
「もうすぐ1年度が終わるなんて、信じられないわ」アンが言った。「去年の秋には、ずっと先のような気がして、冬の間中、勉強や授業に励むんだと楽しみにしていたのに、それが、来週は、いよいよ試験だなんて。でもね、みんな、今度の試験ですべてが決まるような気がするけど、あの栗の樹では若葉が大きくふくらんでいるし、通りのむこうには青い霞がかかっているでしょう。そんなのを眺めていると、試験なんか、半分も大したことじゃないって気もするの」
その場にいたジェーンとルビーとジョージーは、そんな暢気なことは言っていられなかった。彼女らにとって、目前に迫った試験は、いつ何時も頭から離れない最重要課題で、栗の新芽や五月の霞どころではなかった。アンにとっては、少なくとも及第は間違いなしだから甘く見てかかっても大丈夫だったが、この試験に全生涯がかかっているーと、この三人は本気で思っていたー者にとっては、そんな哲学的に達観してなどいられなかった。」
そうするとアンのいるプリンス・エドワード島には栗の樹があったのだろうか。栗の実はどのように利用していたのだろうという疑問が出てきた。
ネットで調べてみると、とても詳しく研究した記事があったので、詳しいことはそのブログを見ていただくことにして、
http://www.h3.dion.ne.jp/~a-garden/plants/chestnut.html
ここに書かれていることと、私の調べたことを、まとめて書いておくことにする。
結論から言って、
★「赤毛のアン」に書かれている Chestnut tree は、日本で言う栗・クリではなく、Horse chestnut らしい。これは日本で言う「マロニエ」の樹であって、その実は食べられない。
★ 「マロニエ」は「パリのシャンゼリゼ」の街路樹で有名。フランス語で「マロン」と言っている。
マロン、マロニエは、日本名では「セイヨウトチノキ」と言い、トチノキ科トチノキ族の植物で、英語で Horse chestnut と言う。クリはイガの中に数個の実をつけているが、セイヨウトチノキ・マロン・マロニエの実は1個で、食用ではない。
日本の栗は「ブナ科クリ属」に分類される。
★マロングラッセのマロンは日本ではクリを使っているが、本来はマロンとよばれている実である。このマロンという呼び名が混乱の元凶のようだ。
マロングラッセなどのように、食用に使われているのは、シャテニエとよばれる樹の実で、ブナ科クリ属のもの。日本の栗と同じ仲間だ。
このシャテニエの実は食べることができて二つに分類される。一つはシャテーニュとよばれ、イガの中に小型の実が2、3個はいっている。
もう一つはマロンとよばれ、一つの大きな実が一つなる。
写真はシャテーニュ。日本の栗とよく似ている。
そしてイガの中に1個の実がなっているものをマロンとよんでいる。
つまり、マロンという言葉が二つの違った場面でつかわれている。 一つはマロニエの樹になる実のマロン。
二つ目は、日本の栗と同じ種類のシャテニエの樹になる実で大きな1つの実がなるもの、その実もマロンとよばれている。
つまり、マロンには食べられないものと、食べられるものがあるということがわかった。 そしてこの食べられるシャテニエの実を使ったお菓子がマロングラッセという。
表に書いてみると、
マロニエ(セイヨウトチノキ)(Horse chestnut )・・・トチノキ科トチノキ族
実・・・マロン(大きな一つの実 食べられない)
シャテニエ(ヨーロッパグリ)・・・ブナ科クリ属(日本の栗と同じ)
実・・・①シャテーニュ(イガの中に2〜3個 食べられる)
②マロン(一つの大きな実 マロングラッセに使われている)
★「赤毛のアン」で書かれている樹は、日本のクリの仲間のシャテニエか、それともセイヨウトチノキのマロニエのどちらだろう。
まず、クリの木はプリンス・エドワード島のような緯度の高いところ、寒い地方に育たない。
現在のプリンス・エドワード島にはマロニエの木はよくみられるという。そしてこのマロニエは1900年代初頭に持ち込まれたという記録があるそうだ。
★これらのことから、最初に書いたように、「赤毛のアン」で Chestnut tree とアンが言っているものは、日本のクリの仲間ではなくて、パリのシャンゼリゼ通りで有名なマロニエだったと推測される。Chestnut という名前から、カナダの人は今もマロニエとクリを混同しているそうだ。なるほど、プリンス・エドワード島に行かれる人は是非ともマロニエの木を見てきてほしい。私はこのことを知らなかったので、全く見た記憶が無い。残念。
*植物の写真はインターネットより。