1秒って誰が決めるの?

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日時計のペーパークラフトを作っていると、正確な日時計を作るためにいろんな工夫をしている人がいることを知った。それと同時に、時間の定義はどうなっているのだろう?という疑問がわいてきて、読んだ本がこの本。

「ちくまプリマー新書」で、著者の安田正美さんは1971年生まれの若手の研究者。

人間が作った最初の時計は日時計。1時間から2時間単位で生活が出きる時代から人間は1分、1秒という時間が支配する時代へと進化してきた。その全体像がよくわかった本だったし、新しいことを知ることが出きる本だった。 

時を計る基準

この本で知ったことの一つ目は、時間を測る基準が変わってきたこと。
1956年までは、「地球の自転」が基準だった。
1956年から67年までの間は、「地球の公転」が基準になった。
そして1967年に1秒の定義が地球の公転からセシウム原子時計に変更される。

セシウムは、放射性でないもので一番重い原子で、自然の状態では同位体のないセシウム133しか存在しない。当時の技術水準としては原子時計に最適な原子だったそうだ。セシウムの固有周波数は91.9GHzで、その波のピークをカウンタが計測し、91億9000万回になったら次の1秒に進むという仕組みの時計だ。(誤差は1億年に1秒といわれている)

測る基準を定義する

私たちの身の回りでは、水晶時計、クオーツ時計が高精度の時計と思われているのにどうしてこれが基準時計にならなかったのか。
それは水晶・クオーツは確かに自然物だが、掘り出した水晶の質やカット軸によってその熱膨張率が違ってくるため、普遍的な基準として採用されなかったということだ。たとえば、宇宙ロケットにクオーツ時計を積み込んでいて、あとで欠陥が見つかっても修正のしようがない。これでは地球との通信や観測に支障が出てくるというわけ。
そこであらゆる基準が、人工物ではない光の速さやアボガドロ定数、プランク定数などのような物理定数をもちいたものにかわってきている。それが二つ目に知ったことだ。

たとえば、長さの単位のメートル。
もともとは、地球の子午線の赤道から北極までの長さの1000万分の1と定められていたが(地球の大きさを基準にするという考え方)、現在のメートルの定義は、1983年の第17回国際度量衡総会で決議された「1秒の 299 792 458分の1の時間に光が真空中を伝わる行程の長さ」。光の速さを定義値299 792 458 m/sとして固定してしまえば、逆に1 mの長さが決定されるわけだ。

先に、「あらゆる基準」と書いたが、実は「重さ」だけが「キログラム原器」によって決められている。国際キログラム原器が世界でただ一つだけあり、フランスに保管されている。40個作られたコピーのうちの一つが「日本国キログラム原器」であり、産業技術総合研究所が厳重に保管管理している。
このキログラム原器も、シリコン原子をもとにした新しい基準が研究されているそうだ。

光格子時計(ひかりこうしどけい)

現在このセシウム原子時計の次世代型が研究されている。 それが著者の安田正美さんたちが研究している「イッテルビウム光格子時計」。 このイッテルビウム光格子時計の到達可能な精度は0.000000000000000001(10のマイナス18乗)で、宇宙年齢と考えられている137億年動かし続けても1秒の誤差にならないといわれている超々精密時計。

原子時計2

イッテルビウム (英: ytterbium) は原子番号70の元素。元素記号は Yb。希土類元素の一つ(ランタノイドにも属す)。

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原子時計の原理は、原子の固有の振動数を測ること。 ガリレオが教会の吊るされたロウソクの揺れから「振り子の等時性」を発見したと言われているが、この周期現象を利用して時計が発達してきた。

できるだけ高い周波数で安定したもの、ということで現在は原子の振動が利用されている。

原子一個の振動数を測定するための技術が進んできたのでこのような原子時計ができるようになった。固有の振動数と同じ周波数の光を与えてやると、原子が発光することを利用するそうだ。ノーベル賞で話題になった発光ダイオードのようなものだろうか。

 

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原子時計開発の当初は多数の原子を使ってその固有振動数を測定する方法だった。 しかし、同一の原子を多く集めても、他の原子が混在しているとその原子がぶつかることによって振動数が変化するなどの誤差が出てくる。
そこで登場したのが、著者が研究しているイッテルビウムを使った光格子時計。 レーザー光線でつくられた光の定在波のような格子状態のなかに、原子1個を閉じ込めてしまうという。 絶対零度に近い状態なので、原子はこの光格子の中で動かない。動かないから固有の振動数が測れる、という理屈だが、私にはなかなか理解できないのが現実。レーザー光線で冷やす?そんなことが可能だとは。

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 この本には、
「光格子が原子を支えていられる時間は1秒ほどなので、光信号の計測はその1秒を目掛けて、冷却レーザー&光格子レーザー担当の著者、原子打ち上げ用のレーザー担当者(原子に共鳴用のレーザーを当てることによって観測しやすい状態にする)、光周波数コム担当者などなどが電光石火の早業で観測する」と説明がある。

1秒以内の観測時間に、宇宙誕生からの時間に1秒の誤差もない時を測るイッテルビウムの固有振動数を測定するなんて、本当に興味深い。

この研究は日本がトップを走っているそうだ。
蛇足だが、著者の安田正美さんの肩書が長い。

産業技術総合研究所計測器順研究部門時間周波数科波長標準研究室主任研究員。

光格子時計の他にも初めて知ることが多くあった。
地球の自転の観測事業(国際地球回転・基準系事業)を行っている国際組織IERSがあること。
世界の国際単位(時間を含む)を司っているのはフランスにある国際度量局BIPMであること。
そして高精度の時計ができることによってどんな世界が開けるか、これは読んでのお楽しみに。

本文167ページの読みやすい本の中に、最新の知識が詰まっている本だった。

 

 

 

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