七月大歌舞 in 松竹座 2

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午後の部の演目は、
1.伊賀越道中双六 沼津(いがごえどうちゅうすごろく ぬまづ)
  坂田藤十郎、中村扇雀、中村翫雀など

2.身替座禅(みがわりざぜん)
  片岡仁左衛門、中村橋之助、中村翫雀など

3.真景累ゲ淵 豊志賀の死(しんけいかさねがふち とよしがのし)
  中村時蔵、中村梅枝、尾上菊之助など

4.女伊達(おんなだて)
  片岡孝太郎、中村萬太郎、中村国生など

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「沼津』は、日本三大仇討ちの一つ、荒木又右衛門らによる「伊賀上野鍵屋の辻の仇討ち」を題材にしたもの。
ちなみに、日本三大仇討ちの後二つは、「曽我兄弟の仇討」と「忠臣蔵」のこと。
少年の頃、頭に紙で作った手裏剣3本を手ぬぐいでとめ、おもちゃの刀で「荒木又右衛門の36人斬りだ」という遊びがはやった。
36人斬り、というのは紙芝居かラジオの講談で聞いたのかよく覚えていないが、ちゃんばら全盛の時代だった。
この36人斬りというのは伝説で、本当はそんなにも斬ってはいないらしい。

さてこの「沼津」は本筋からはなれたサイドストーリー。「菅原伝授手習鑑」と同じように、主人筋の義理人情に絡みこまれた親子兄弟姉妹の悲劇をテーマにしている。

坂田藤十郎さん演ずる男盛りの呉服屋十兵衛と中村翫雀さんが演ずる年老いた雲助の平作とのやりとりがおもしろい。実際の年齢とは逆の役どころが、見ていて思わず笑いが出る。舞台から客席へと降りてきて、「80歳になった顔が見てみたい」などとアドリブか用意されていたギャグかわからないが、軽口が舞台の雰囲気を明るくし、それがこの演目の後半の悲劇につながっていくだけに、深みのある構成になっている。
番付の「喜劇から悲劇へ」と題したコラムを亀岡典子さんが書かれている。
「喜劇と悲劇は、人生において紙一重である。
さっきまでささやかな幸せにあふれていた人生が、あるときふいに思いもかけない不幸に見舞われる。もちろん、その逆もあり、悲しみのどん底にいても必ずその隣に希望はある。人生は複雑なものだが、だからこそ人は生きていける。
「沼津」は、人生のそういう瞬間を切り取った珠玉の人間ドラマといえよう」

二つ目の「身替座禅」は狂言の「花子」を題材にしたもので、明治43年の初演だそうた。常磐津と長唄の掛け合いによる舞踏劇は、歌舞伎を知らない外国人も喜ぶという演目という。どこの国でも、どの時代でも男のアホさ加減は一緒ということだろう。
これは片岡仁左衛門さんにぴったりのはまり役と思う。上品で憎めない役どころが似合っている。山の神の玉の井を中村翫雀さん。これも味があって見るからにたのしい。過去に「身替座禅」を見たことがあるが、それぞれに役者さんの持ち味があり、演じている人も楽しんでやっているのだろうな、と思う。

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外は暑い。こんな暑い日にぴったりなのが「怪談」。
三つ目は、「真景累ゲ淵 豊志賀の死」。
三遊亭円朝の怪談噺「真景累ヶ淵」の一部を脚色したもの。
富本節の師匠・豊志賀を中村時蔵さん、弟子の新吉を尾上菊之助さんが演じている。
菊之介さんの優男で色男ぶりがこの怪談の雰囲気を一層盛り上げる。

番付に菊之介さんの弁として、「最初は師匠を慕っていたのが、師匠の愛がだんだん重たくなって逃げ出してしまう。人間の愛とは何なのかと考えさせられる作品ですね。お客様に少しひんやりしていただけるように勤めたいと思います。」が紹介されている。
多少どころか、十分に寒気がする舞台だった。照明や舞台配置が工夫されていて、三遊亭円朝の怪談噺の世界に引き込まれてしまった。

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さて最後は、 女伊達。 女伊達(おんなだて)という言葉を初めて知った。 番付にはこう説明されている。 「江戸時代、侠客とよばれる人々の中には、義理と人情に篤く、また、正義を貫く者も多く、そのためには、庶民の憧憬の対象ともなりました。歌舞伎でも活躍する花川戸助六(はなかわどのすけろく)や幡随院長兵衛はその代表例ですが、その多くは男性でした。そうした中、少数ながら、女性の「女伊達」と呼ばれる人々が存在しました。大坂の豪商の娘で、後に奴の小万と呼ばれた人物もそのひとり、本作は、この人物をモデルにしたとも言われています」 また、「長唄の舞踊です。変化舞踊は歌舞伎舞踊のジャンルの一つで、一人の演者が異なった役柄を早変わりで踊り分けるもの。長らく上演が途絶えていたものを、昭和33年(1958年)に復活したもの」だそうだ。
女伊達の木崎のお秀を片岡孝太郎さん、男伊達の淀川の千蔵を中村萬太郎さん、中之島鳴平を中村国生さんが演じている。
怪談噺のあとだけに、三人の華やかな踊りに会場の雰囲気もなごやかになる。
最後に立ち回りがあり、指の先まで神経の行き届いた踊りに拍手が巻き起こった。

さて、今回の七月大歌舞伎は、人間国宝の坂田藤十郎さんの渋い演技、病気回復の片岡仁左衛門さんの硬軟を使い分けた熱演、尾上菊之助さんの怪談噺に大坂の暑さを忘れる舞台だった。題材を狂言や文楽にもとめたもの、怪談噺に素材をとったもの、三大仇討ちという古典、昭和の新作、そしてオアシスのような華やかな舞踊と内容の濃い、バラエティ豊かなものだった。
歌舞伎、文楽、狂言、落語などなど、大切にしたい文化がここ大坂にはある。

行方不明になっていた倉敷の児童が見つかったという報道があった。無事だったということで、本当に良かった。ご本人もご家族も人の世の明と暗を見た思いだったろう。無事で本当に良かった。

 

 

 

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