100年目の書体づくり

IMG_20140124_0001この本は新聞の書評で興味がわいた本。
「100年目の書体づくり 『秀英体 平成の大改刻』の記録」著者・発行大日本印刷株式会社

図書館にあったので、早速借りて読んでみた。
活字、フォント、については、全くと言っていいほど知識はなかった。
せいぜいパソコンで文書を打ち出すときに、どんな字体にしょうかなとか、年賀状での字体はどのフォントにしょうかな、と考えるぐらいだった。
この本を読んでみて、あらためて本と活字の関係について知ることができ、長い歴史と職人技があることがわかった。

日本には築地体と秀英体という二つの金属活字の流れがあり、この本は秀英体を作っている大日本印刷の記録である。
秀英体の文字は岩波書店が出す「広辞苑」の書体、といえばイメージできると思う。
「秀英体研究」という秀英体の書体デザインの変遷を記録した本で、編者の片塩二郎さん(株式会社朗文堂代表)の指摘、「秀英体は延々と開発を続けてきたために、コピー複写を繰り返してきたように、『弱々しい文字』になり、『か細い形姿』となってしまった。・・・・1990年代には出版社からの要望に応えて電子書籍にも応用された結果、『秀英体は本来のすがたではなくなっている』」にこたえる形で、大日本印刷による「平成の大改刻」がはじまったそうだ。
その作業は2005年から7年の歳月をかけている。

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金属活字から作られた文字が長い年月の使用で本来の姿でなくなっている、弱々しい文字になっている、とはどういうことなのだろう。そこには長い議論と試行錯誤があったという。

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ここで活躍するのがデザイナーを含めたスタッフ。
この二つの文字「な」の違いがわかるだろうか。私にはほとんどわからなかった。コピーをとって重ねてみて、やっとわかった。
その細部にこだわること、少しの差異に気づく感性におどろいた。文字のデザインの重要性もこの本を読んで知った。
同じ明朝体でも、漢字・ひらがなともこんなに違うのだ。情報社会を生き抜く読みやすい文字にする、そのための工夫や努力がのせられていた。

IMG_20140124_0002左の写真は、この本の裏表紙からとったもの。
辶(しんにょう)の文字の具体的な改良の指示がこまかくのっている。
小さな文字のひとつひとつ、辶の曲がる部分への指示など想像もつかなかった。こういった細かな目配りと出来上がった時の文章の中での見え具合を想像するという作業が続けられたのだと思うとひたすら感心するのみだった.
こうした作業の結果、
俊英明朝(L,M,B)
俊英初号明朝
俊英角ゴシック金と銀(L,B)
俊英丸ゴシック(L,B)
が完成した。新しい読みやすい活字を創ることで、技術の継承と人材の育成ができたという。技術は人が創る、人を育てるということだと思う。

読む文字と書く文字

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私はこの「100年目の書体づくり」を読んでいて、文字を創る作業、それをすすめてきた人たちの努力とそれゆえの成果に頭が下がる。そして気がついたことがある。この本は、現代の情報化時代に書籍だけでなくパソコンやスマートフォンなどの画面上でも、いかに「読みやすい文字」を提供するかの試行錯誤をまとめたものだ。しかし、「書きやすい文字」という表現は、私の読んだかぎりにおいては見なかった。

では漢字を書くときの基本はどこにあるのだろう。
学校の文字指導の基本になっているのがこの「常用漢字表」。

教科書で使われている書体は、小学校では「教科書体」と言われる書体。
教科書体は、優雅で美しい細身の毛筆楷書体をもとにする字体で、文字を学び始める子どもたちにわかりやすいような字体であり、現在では鉛筆やペン字など硬筆スタイルを意識した字体になってきている。
中学校になると「明朝体」、そして高校・大学になるとゴシック体も目にするようになる。
社会においてはほとんど明朝体だと思ってもいい。

今回読んだ「100年目の書体づくり」にある秀英体には、教科書体はない。

さて、目にすることの多い明朝体を使って、鉛筆やボールペンなどで普段書く「楷書体」での注意がこの「常用漢字表」の最初にのっている。

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「つける、はなす」「はねる、とめる」「その他」の三つの分類で、一番左には明朝体の活字を使って文字を示してある。その右側に二つから三つ、楷書体で同じ字を書いているが、正解はどれだろう?

ここでThinking time.

正解は次回に。

 

 

 

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