文楽初春公演(1月)

IMG_7074お正月は歌舞伎か文楽を見に行くことが年の始めの行事。
今年1月の松竹座は坂東玉三郎さんの舞踊公演。玉三郎さんにはわるいけれど、文楽のほうを選んだ。
午後四時からはじまる第二部のチケットを購入した。
演目は、
◎面売り(めんうり)
◎近頃河原の達引(ちかごろかわらのたてびき)から、
・四条河原の葮
・堀川猿廻しの葮
◎壇浦兜軍記(だんのうらかぶとぐんき)から、
・阿古屋琴責の段

ロビーにはお正月らしく「にらみ鯛」と「鏡餅」。
IMG_7059IMG_7065

劇場内もお正月ムードがあふれている。
IMG_7055
IMG_20140108_0008「面売り」は昭和19年に初演されたもの。大道芸人の「おしゃべり案山子」(口八丁でなんでも売るという)が、美貌の面売り娘と協力して面を売るという、見ていて楽しい舞台。お正月の華やかさがなんとなく感じられた。
二つ目の「近頃河原の達引」は心中物。左の写真が猿回し与次郎。なんと芸術的な人形。お猿さんもほんとに良く出来ている。今回の演目全てにわたって美しいの一語につきる。
最後の演目の「阿古屋」の美しいこと。案内のポスターを見ればわかるように本当に衣装の素晴らしさとそれに負けない細かな飾りがいっぱい。
さて、「近頃河原の達引」は心中物だが、なんとなく「ひよっとしたら、どこか遠くで生きているのでは・・」と思わせる演出。伝兵衛とおしゅんを送り出す兄の与次郎が、猿回しの芸で門出を見送るのだが、その猿回しの芸がすごい。二匹の猿を右手と左手の両手で、つまり指人形の形で演技をする。手袋ぐらいの大きさの二匹のお猿さんが、まるで生きているかのようにお互いにかけあいながら動いている。そう、人間の手が動かしているとは思えない。だんだんとそれを操っている黒子さんの姿が見えなくなっていく。この黒子さんは誰なのだろう。パンフレットを見てもそこまでは書いていない。この素晴らしい猿の芸に送られて、伝兵衛とおしゅんは「いつまでも、命全うしてたも」という母の声を背に聖護院森をめざしていく。

IMG_20140108_0010「壇浦兜軍記」の阿古屋姫が素晴らしい。ポスターを見ればわかるようになんとも色っぽい。源頼朝をおそった景清のゆくえを阿古屋から聞き出そうと詮議がおこなわれている。「責めらるるが勤めの代わり、お前方も精出してお責めなさるるが身のお勤め、勤めといふ字に二つはない。アア憂き世ではあるぞいな」と阿古屋。現代風に言い換えれば、「拷問されるのが私の役割なら、どーぞ、お好きなように。あんたたちも性根を入れて、やっ、て、み、な」と言うところか。
その詮議の方法がなんと、琴、三味線、胡弓。嘘偽りがあれば心に動揺があり、演奏に乱れが起きるということかららしい。これもなんとも粋な詮議ではありませんか。
ここで、琴、三味線、胡弓の演奏がはじまる。もう、目を離せません。いやそうじゃなかった、舞台の阿古屋の演奏と実際に演奏している鶴澤寛太郎(つるざわかんたろう)さんの演奏を両方見るために目はいったりきたり。
阿古屋の右手と左手を動かしているのは二人! 実際に演奏している鶴澤寛太郎さんは三つの楽器を出し入れして完璧な演奏。阿古屋と寛太郎さんはほぼシンクロ状態。阿古屋を操るお二人も琴・三味線・胡弓の演奏ができるに違いない。どれだけの修練が必要だったのだろう。これは拍手するしか無いじゃないか・・・。
阿古屋が最後に演奏したのは胡弓。あれ?胡弓って中国の楽器じゃなかったかな? と琴と三味線をやっている妻に聞いてみると、「中国の二胡に似ているけど、日本の胡弓は三味線を少し小さくしたもの」と教えてくれた。

IMG_20140108_0001初春公演を観に行く前に、読売新聞に若手の太夫の記事がのっていた。豊竹咲寿太夫(とよたけさきじゅたゆう)、24歳の若者。なんと大阪市立高津小学校の卒業生。小学校での総合学習で文楽に出会ったことがきっかけとか。「壇浦兜軍記」で三箇所ぐらいの出番しか無いのだが、約1時間真剣な姿で座っている。それがまた初々しい。
咲寿太夫のフアンらしく、咲寿太夫の台詞の時に指と指を合わせて拍手をしている人がいた。
大阪の学校では文楽との出会いを持つようにしているのだ。私も高等学校の時に学校の芸術鑑賞で文楽鑑賞にいった。初めは操作している人の姿が気になったが、舞台に引き込まれて最後には全く気にならなくなっていた。文楽との出会いは若いほうがいい。ずっと以前から小中学校での文楽鑑賞は計画的行われているのに、そのことが全くと言っていいほど知られていないのが残念だ。
市長の補助金カット発言で文楽のイメージが悪くなった時、読売テレビの朝の放送で有名なアナウンサー二人が「文楽見たとこあります?」「いやー、行ったことありませんわ」と言っていた。大阪で仕事をしているテレビのアナウンサーが、文楽を見たことがないとは。社内研修とか、取材とか、まず地元大阪のことを知るのが仕事じゃないかと思ったわけ。その点、小学校も、中学校も、公立高校もずっと昔から文楽を視野入れていたことは自慢していいと思う。
文楽界に地元大阪からの若手太夫が出てきたのは明るいニュースだ。
素晴らしい芸と若手の爽やかさに、ちょっといい気分になって国立文楽劇場をあとにした。

IMG_7080時間は8時になっていた。
会場は暖かかったが、外にでると寒い。
「道頓堀の今井でうどんでも食べて帰ろうか?」と駅とは反対側に歩く。
今井といえば「きつねうどん」
大阪らしいだしと少し甘目のおあげさん、このコラボレーションが格別。

 

IMG_7077

きつねうどんを食べ終わる頃には、額から汗が。本当に温もる。
食べ終わって会計をしようと1階へおりる。先に代金を払っているスッキリとした姿の若者。妻が「七之助さんじゃない?」「えーっ」と驚いている間に、七之助さんらしい人は「どうもありがとう」とお店の人に声をかけて出て行った。思わずお店の人に「七之助さんでしたね」

「よくこられるのですか」と妻と二人でたずねた。
お店の人も顔を赤らめていたが、「はい。楽屋に仕出しはするのですが、お店には今日が初めてだと思います」
そうだ。松竹座はこの今井の並びにある。しかも演目は坂東玉三郎さんと中村七之助さんがメインだったのだ。
舞台がはけて、ここ今井で夕食だったんだ。なんというサプライズ。
こいつは 春から 縁起がいいわい〜 でした。

 

 

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です