第65回全国人権・同和教育研究大会

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ひと月前になるが、11月23日・24日と徳島県で「第65回全国人権・同和教育研究大会」が開かれ、行ってきた。県内外からの参加者は12000人を越えたという。人権に関わる全国研究会は、この「全国人権・同和教育研究大会」にまさるものはない。徳島県の力の入れようはすごいもので、例えば写真の徳島駅。構内には全体会場「アスティとくしま」へのシャトルバスの乗車券発売所が現地実行委員会によって臨時で設置され多くの人が利用した。

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全体会は「アスティとくしま」の大ホールの定員5000人をいっぱいにし、あふれるほどだった。
来賓挨拶は、文部科学省の児童生徒課長、徳島県知事、県議会議長、市村町会代表(徳島市長)の四人。他に来賓として運動団体、教職員組合、日本PTA、県内の教育長会、校園長会などの様々な団体の代表が出席されていた。文字通り県内の組織を上げて人権・同和教育を進めていく姿を示しているかのようである。左の写真は知事の挨拶の様子。
分科会会場には案内の看板や「第65回全国人権・同和教育研究大会」と染め抜いた旗がひらめき、県外からの参加者が迷わないように配慮されていた。

下の記事は「徳島新聞」のネット版からのもの。特別分科会の様子がわかる。
徳島新聞

箱廻しと三番叟まわし
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全体会は9時30分に開会する。しかしこれまでの大会の多くがオープニングとして開催地の取り組みを特別に紹介する。和太鼓であったり、子どもたちの演奏であったりと。今回は徳島の伝統芸能である箱廻しがあるに違いないと思い9時前に会場に入った。予想通りだった。オープニングイベントとして「三番叟まわしの紹介」と「四国大学の学生による演奏」があった。
上の写真は午後の特別部会「展示と交流」で「阿波木偶まわし保存会」による「三番叟まわし」の実演。
全体会で辻本絵蘭さん(徳島県人教・芝原生活文化研究所)による現地報告「三番叟まわしを受け継いで」を聞いた時、是非本物の三番叟まわしをもっと近くで見なくては、と思い「展示と交流」の会場にタクシーで駆けつけた。期待通りの、期待以上の素晴らしい演技だった。
木偶そのものの美しさとともに、木偶を操る演者さんの姿・形が美しい。妻は「あの声がいい」と感想を言っていた。

IMG_6341三番叟は歌舞伎や文楽、能で演じられているのは知っているし、歌舞伎でも何回か見たことがある。でも何かよくわからないが古式の芸かな、というのが本音だった。
今回の徳島の「三番叟まわし」のことから、もともとは能よりも古い芸がルーツにあるらしいことを知った。
IMG_6347当日の資料によると、
◎「箱廻し」町の中の芝居小屋農村舞台で演じられた「絵本太閤記」や「傾城阿波鳴門」などの人気外題を路傍で演じた道の芸。二つの木箱に数体の木偶を入れ、天秤棒で担ぎ移動して稼いだ。
◎「三番叟まわし」徳島県の正月を彩った祝福芸の代表。荒神を拝んだ後、千歳、翁、三番叟で「式三番叟」を語り、無病息災や五穀豊穣を祈る。そして「えびす」をまわして(人形を遣い)商売繁盛や豊魚を予祝した。
◎「えびすまわし」えびす木偶を左手に持ち、家の門に立ち、祝言を述べて門付けをする。芸人は男性にかぎらず女性も多く見られた。江戸期の「高松村風俗門状答」にも、正月の門付け芸として記載されている。
◎「門付け」諸家の門口に立って祝言を述べたり芸を行い、心づけをもらう芸。季節ごとに神が村落の家々を訪れ祝福を与え、村人から歓待されて去っていくという来訪神(まれびと)信仰にもとづく。正月の門付け芸は、萬歳、春駒、太神楽、えびす舞、猿回しなど多彩である。

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門付け芸はこの現代にはもう失くなったと思っている人がほとんどだと思うが、実はそうではない。写真は堺市初芝駅での獅子舞の門付け。これは伊勢大神楽というもの。毎年12月に入ると伊勢からやってくる。

IMG_20131203_0002この本は全体会場で買った。徳島の伝承文化としての「箱廻し」「三番叟まわし」について、聞き取りを含めて詳しく書かれている。
日本の芸能文化の多くは、当時の被差別民衆によって作られたことはよく知られている。たとえば歌舞伎が出雲の阿国という被差別民に由来するなどと言われているように。
徳島などにあった木偶箱廻しは徳島人形浄瑠璃芝居(国の重要無形文化財)のルーツの一つと言われている。その文化の伝承に被差別民衆も担ってきた。
その文化も産業構造の変化、高度成長政策、同和対策事業などによって姿を消していったのである。「差別を恐れるが故に姿を消さざるをえなかった」と「阿波のでこまわし」の筆者辻本一英さんは述べられている。
この誇れる文化を復活させたのが、全体会の現地報告をされた阿波木偶箱まわし保存会の人たちなのである。
復活された「三番叟まわし』や「えびすまわし」は、保存会の人の手によって、今も年が明けると数百件の徳島の村々に福を届けるために回っているという。私は全体会、特別部会で直接に「三番叟まわし」や「えびすまわし」を見たが、民衆の作り上げてきた芸能とはこういうものなのだ、生活に根ざした文化なのだとあらためて思った。

全体会1アスティとくしまが満員になった会場で現地報告をされた辻本絵蘭さんは、報告の最後を次のような内容の言葉でしめくくられた。
「こんなにたくさんの知らない人の前で話をするなんて、話をする前はとても緊張していました。でも話しながら、ここに来ている人たちは私と同じように、差別をなくするために取り組んでいる人たち、学校の先生達や行政の人、地域の人達と思うと気持ちが楽になりました。とても楽しく話すことができました・・・・」
会場いっぱいの拍手がわいた。数千人の人たちの心がふっと軽くなり、なんとも言えない温かい感情がわいてきた瞬間であった。多くの参加者が微笑んでいた。
これが「全国人権・同和教育研究大会」のよさである、と思った。
来年2014年度の大会は高松市を中心にしてひらかれる。

 

 

 

 

 

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