ある精肉店のはなし

覚悟の映画

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日曜日に、十三にある第七藝術劇場に行った。映画「ある精肉店のはなし」を見るためだ。
この映画は公開以前から知っていた。でも行こうと思うきっかけが二つあった。
一つは、シューヘーLIVE。このLIVEに、なんと、纐纈あや(はなぶさあや)監督とプロデューサーの本橋成一さんが来ていたのだ。
休憩の後の第二部開始の時に突然の紹介と挨拶。
集平さんもこの二人が来たのはサプライズだったようだ。クン・チャンが本橋成一さんのところで写真の仕事をしていたというから、古くからの知り合いだったのだ。
監督の纐纈あやさんが若い女性だったのにもびっくり。
そのあと、行ってみようかな、と思う二つ目の出来事があった。
買い物帰りに駅から家まで歩いていた時、時々買い物するリカーショップの入り口にこの「ある精肉店のはなし」の映画のポスターがはってあった。
びっくりしてポスターを見ていると、「どうかしましたか?」という声。
この店の人だった。話してみると、この日はお店が休みなのでこの映画を見に行っていたとか。
「平日だったけれど、なかなかの入りでしたよ」ということ。
これは行かなくてはならない、ということで日曜日の朝の映写を見に行った。

IMG_20131217_0004映画パンフレットにはこのように書かれている。
「大阪貝塚市での屠畜見学会。
牛のいのちと全身全霊で向き合うある精肉店との出会いから、この映画は始まった。
家族4人の息の合った手わざで牛が捌かれていく。
牛と人の体温が混ざり合う屠場は、熱気に満ちていた。
店に持ち帰られた枝肉は、
丁寧に切り分けられ、店頭に並ぶ。
皮は丹念になめされ、
立派なだんじり太鼓へと姿を変えていく
家では、家族4世代が食卓に集い、いつもにぎやかだ。
家業を継ぎ7代目となる兄弟の心にあるのは、
被差別部落ゆえの
いわれなき差別を受けてきた父の姿。
差別のない社会にしたいと、
地域の仲間とともに
部落解放運動に参加するなかで、
いつしか自分たちの意識も変化し、
地域や家族も変わっていった。
2012年3月
代々使用してきた屠畜場が
102年の歴史に幕を下ろした。
最後の屠畜を終え、
北出精肉店も新たな日々を重ねていく。
いのちを食べて人は生きる。
「生」の本質を見続けてきた家族の記録。

IMG_20131217_0002私は30年近く前に松原の屠場の映画を見、その後向野の屠場の見学に行ったことがある。そこで見たこととほぼ同じような作業がこの映画に写されていた。映画の最初からあの屠場での緊張がよみがえってきた。パンフレットにあるとおり、全身全霊でいのちと向き合っている。
映画の内容は、パンフレットで十分に想像できると思う。
私は映画を見終わった時、思わず「ええ映画やったなあ」と隣の妻につぶやいた。
かつてよく見た人権啓発映画ではない。これは誠実に生きる人間のドキュメンタリー映画だと思った。
日曜日の午前というのに、行った時にはもう30人ぐらいの人が並んでいた。
年配の人もいるが、華やかな服装の若い女性たちやカップルの姿も多い。私の予想を裏切る劇場内の風景だった。
映画が終わり明るくなって劇場を見回すと、男性のほうが涙をふいている若いカップルがいた。
これは今までにあまり経験したことのない雰囲気だった。どうしてだろう。

IMG_20131217_0005この写真は、北出精肉店最後の仕事にむけて牛と歩む北出昭さんと、それを見守るお母さんの北出二三子さん。
ナレーションは入らない。ナレーションがなくても、その覚悟が伝わってくる。
この映画はいろんな意味で、覚悟の映画である。

若い時に教えられた言葉、「環境改善は進んでも、差別意識はすぐにはなくならない。水に浮かぶ水草のように、まわりの差別観念を空気を吸うがごとく吸って、差別意識は広がっていく」。
状況は少しはよくなったかもしれない、しかしそんなに変わっていないと思う。そんな中で、名前も顔も生活まるごと映画に出していく。その覚悟を考えると身が引き締まる。
IMG_20131217_0006この映画には緊張感はあるが、暗さはない。押し付けがましさはない。むしろ淡々としかし丹念に精肉店の仕事と生活を追い続けている。その真面目さが伝わってくる。
監督の纐纈あやさんは1974年生まれの女性、撮影の大久保千津奈さんは1973年生まれの女性、制作デスクの中植きさらさんは1982年生まれの女性(だと思う)。女性だからという言い方は良くないかもしれないが、これまでの映画の視点とは違った映像はそのためかもしれない。1970年代、日本が人権について政策や啓発・教育に積極的に取り組み始めた時である。そこで育ってきた若い人たちの感性が反映しているのかもしれない。
たまたま立ち読みした週刊現代の映画批評のコラムで、井筒和幸映画監督がこの映画「ある精肉店のはなし」を「今年度最高のドキュメンタリー映画」とほめていた。
映画は12月27日まで上映されている。
時間は午前は10時50分から、午後は15時30分から(12月21日からは15時45分から)。
場所は阪急十三駅から歩いて5分くらい。第七藝術劇場。

映画館から駅に向かって歩きながら「いい映画を見たなあ」とまた言ってしまった。

*写真は映画のチラシ、パンフレット、本「うちは精肉店」(写真と文 本橋成一、発行 農文協)からとっています。

**シューヘー・ガレージのスタッフさんからメールをいただきました。
この記事へのおほめの言葉と、シューヘー・ガレージのWhat’ new? に大阪でのLIVE写真をのせたこと、そしてLIVEの様子を記事にした「雲外蒼天」をリンクしたということです。
少しでも集平さんの活動や映画「ある精肉店のはなし」が広がっていくのならありがたいことです。

 

 

 

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