十月花形歌舞伎 1

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松竹座での「十月花形歌舞伎」を見に行く。
今回は日を変えてだが、昼の部、夜の部を見ることができた。
どちらも大阪が舞台で、片岡愛之助さんが主演の、若手が多数出演したエネルギーあふれる舞台だった。

 

IMG_4869昼の部のメインは「新・油地獄 大坂純情伝(おおざかじゅんじょうでん)」
これは平成若衆歌舞伎(平成9年にスタートした「松竹・上方歌舞伎塾」の卒業生の一座)による平成15(2003)年にシアター・ドラマシティで初演された新作歌舞伎。片岡愛之助さんが油屋の息子河内屋与兵衛を演じている。
「油地獄」からわかるように、近松門左衛門作の「女殺油地獄」がモチーフになっている。そこに「ウエストサイド物語」と「ロメオとジュリエット」がミックスされている。
番付に片岡秀太郎さんが「・・・それというのも『ウエストサイドストーリー』、山本周五郎先生の『深川安楽亭』の世界と『油地獄』をどうしてもドッキングさせたかったのです。それと河内屋与兵衛を単なる悪人に、お吉を単なる被害者にしたくない人間の業のようなものを『哀しくも美しく』表現したかったのです」と書いている。

作・演出の岡本さとるさんは、「私は青春という不安定な時期をうまく乗り切れなかった若者の、不運と悲劇に尽きると思っています」と述べている。
ウエストサイド物語のジェット団とシャーク団のように腕を振り回しながら登場する天神組と雁金組、商家の息子と貧しいヤサグレの連中、中村亀鶴さん演ずる遊女小菊の兄である天神組の与五郎と油屋の息子与兵衛の対比も劇の深みを見せ、時代と社会は違っても普遍的に若者が持っている社会への不満と自分でも制御できないエネルギー、若者ゆえの恋人への使命感と実際には何もできない無力感、現代社会にも共通する姿がこの新作歌舞伎にあふれている。

IMG_4867舞台から飛び出して客席を駆けまわる演出は現代の若者の「歌舞伎は難しい」というイメージを突きくずす。
人形浄瑠璃で与兵衛とお吉の油まみれの殺しの場面を見た時は、そのリアルさに驚いたが、今回の歌舞伎でも迫力ある舞台に目を見張った。最近見た中村壱太郎さんと片岡愛之助さんの共演は春の「GOEMON 石川五右衛門」だが、よく息があっている。中村壱太郎さんのお吉は艶っぽさが出ていて見に来た甲斐があった。
楽しかったのは中村翫雀(なかむらかんじゃく)さんの幻術士果心。舞台の転換に「曽根崎心中」を演じている見世物小屋がつかわれている。その呼び込みのように現れては言う、「見ていかんか、この世の因果、この世の不思議」。夏の夜の回り灯篭のように繰り返し、この純情伝の世界に引き込んでいく。
製作者の意図はシェイクスピアのマクベスに登場する三人の魔女のイメージだとか。
私はこの歌舞伎を見たあと、DVDで「ウェストサイド物語」を見、図書館で山本周五郎の「深川安楽亭」とシェイクスピアの「マクベス」を借りてきて読んだ。世界と時代は違っても青春のきらめきと心の闇、人を動かす恋と愛は芸術として私達の心情をゆさぶる。名作と言われる文学やミュージカルがこの新作歌舞伎を創りだし、若手の歌舞伎役者が演じた舞台だと思った。

 

 

 

 

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