新・水滸伝

新水滸伝

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27日が千穐楽になる「新・水滸伝」を見に行く。
新歌舞伎座での初公演。スーパー歌舞伎と銘打っていないけれど、私はスーパー歌舞伎の気分でとっても楽しめた。
スーパー歌舞伎は、
2001年の「新・三国志Ⅱ 孔明編」
2004年の「新・三国志Ⅲ 完結編」
2008年の「ヤマトタケル」
と見てきて、今年の1月の松竹座は市川猿之助襲名披露公演として、スーパー歌舞伎があるのではという噂が流れ、楽しみにしていたがそうではなかった。
しかし、新歌舞伎座で「新・水滸伝」の公演を十分に楽しめた。

 

IMG_20130826_0005 今回の演目は「21世紀歌舞伎組 三代目猿之助48撰の内 新・水滸伝」が正式?。21世紀歌舞伎組は三代目猿之助(現・猿翁)が一門の若手を育成するために作った歌舞伎集団。その座長が今日の主役の林冲(りんちゅう)を演じる市川右近さん。
舞台開始前に、彭き(き・漢字は王+己)(読みは「ほうき」)役を演じる市川弘太郎さんの舞台挨拶。挨拶というよりも鑑賞にあたってのお願いみたいなもの。写真ダメとか、ここで拍手をなど軽妙な口調で舞台へのいざない。演者と観客の心が少しつながってきたところで開幕。

 

IMG_20130826_0006 お話は中国の水滸伝をもとにして創作されたスケールの大きい群像劇。2008年に初演。
梁山泊に集まる悪党の頭・晁蓋(ちょうがい)と、かつては兵学校の教官まで勤めながら今は天下一の悪党といわれる林冲を中心にして、乱れていた北宋をぶっつぶして立て直そうとするお話。

写真は晁蓋を演じた笠原章さん。新国劇出身の俳優さんが歌舞伎の舞台に登場するところがおもしろい。

これも市川猿之助さんの演出によるものか?

替天行道(たいてんぎょうどう)

IMG_20130826_0001 市川右近さんが左手に持っている布には「替天行道」と書かれている。劇中では「ぎょうどう」と読んでいた。
意味は「てんにかわりて、みちをおこなう」
「新・三国志」では「信ずれば夢はかなう」
「ヤマトタケル」では「天翔ける心」
がキャッチフレーズだったと思うが、
「新・三国志」は「替天行道」。

いやー、それにしても右近さんの滑舌がいい。よくもあんなに長いセリフをはっきりと言えるものだ。他の役者さんはほとんど現代の口調でセリフを言っていたが、右近さんはしっかりと歌舞伎調。声の抑揚も歌舞伎の言い回し。これが妙に林冲にあっていた。
市川右近さんは大阪出身。小学校まで大阪にいて単身東京に行き猿之助さんの部屋弟子となって精進を重ねて今となる。

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市川笑也さんの青華(せいか)、笑三郎さんの姫虎(ひめとら)、して春猿さんのお夜叉(おやしゃ)は21世紀歌舞伎組自慢の女方。青華の生真面目さ、姫虎の頼りになる姉御、お夜叉の隣のおねえちゃんぶりはよく個性がでていた。
青華と王英(おうえいー市川猿弥)の初々しいデート場面で観客の私が思わずニッコリした時に、「よう!ご両人」と大向うから声が掛かる。ピッタリのタイミング。ここで歌舞伎の醍醐味を感じた人も多かったと思う。

IMG_20130826_0007 私の印象深かった俳優は新々(しんしん)を演じた日下部大智さん。写真最上段の左から二人目の少年(新々は戸塚世那さんと交代。この写真は戸塚さんのようだ)。よく通る声、メリハリのある動き。止まるときは本当に動かない。えっ、大丈夫?じっと見ていると足がすこし震え出す。でも動かない。歌舞伎の静と動をきっちりわかっているようだ。

舞台全面に鏡を使って、客席と舞台を一体にした演出、客席が舞台と化す闘いの場面。そして右近さんの宙乗りが二回などなど、エンターテイメント精神があふれた舞台だった。

もう一つおもしろかったのが、普段の歌舞伎や演劇だったら「ここで第一幕は終了だ」というタイミングがすべて裏切られたこと。えーっ、このまま最後まで突っ走るのかな、と思うぐらいの迫力だった。

カーテンコールめいた終わり方も楽しめた。笑也さんの笑いながら腰をくねらしたエンディング、猿弥さんのOKサイン、役者さんも楽しんでいた。私は思わずスタンディングオベーションをしました。27日の千穐楽は大カーテンコールがあるらしい。きっと全員のスタンディングオベーションがあるに違いない。

すべてが終わったとき、前に座っていた女性が「あー面白かった。すっかりはまってしまいそう」と言っていた。
江戸時代の歌舞伎はきっとこんな感じだったのだろう。明日の変化が感じられない時代でも、舞台で言っていたように「ここから何かが変わるのかもしれない」。

すこし心が軽くなって、明日を夢見ることができる。これが歌舞伎の力だと思う。